K''のホモロジー群の計算
問題の理解とアプローチ
K''は、K'に新たな単体{a,b,c}が加わった単体複体です。この新たな単体の追加が、ホモロジー群にどのような影響を与えるかを見ていきましょう。
基本的な計算手順はKとK'の場合と同様です。
鎖複体の構成: K''の単体に対応する自由加群と境界作用素を定義します。
サイクルと境界の計算: 境界作用素の核と像を求めます。
ホモロジー群の計算: サイクルを境界で割った剰余群がホモロジー群です。
具体的な計算
鎖複体
0次元: C₀'' = F₂{a, b, c, d} (K, K'と同様)
1次元: C₁'' = F₂{{a, b}, {a, c}, {c, d}} (K', K''と同様)
2次元: C₂'' = F₂{{a, b, c}} (K''に新たに{a,b,c}が追加)
高次元は存在しないため、C₃'' = ... = 0
境界作用素
境界作用素 ∂₁'', ∂₂'' を定義します。
∂₁''({a, b}) = b - a
∂₁''({a, c}) = c - a
∂₁''({c, d}) = d - c
∂₂''({a, b, c}) = {b, c} - {a, c} + {a, b}
サイクルと境界
0次元: Z₀'' = C₀'' (K, K', K''と同様)
1次元: 境界が0となる1次元単体は存在しないため、Z₁'' = 0。
2次元: ∂₂''({a, b, c}) = {b, c} - {a, c} + {a, b} ≠ 0 より、Z₂'' = 0。
B₀'' = Im∂₁'' = F₂{b-a, c-a, d-c}
B₁'' = Im∂₂'' = F₂{{b, c} - {a, c} + {a, b}}
ホモロジー群
H₀'' = Z₀'' / B₀'' = F₂{a, b, c, d} / F₂{b-a, c-a, d-c} ≅ F₂
H₁'' = Z₁'' / B₁'' = 0 / 0 = 0
H₂'' = Z₂'' / B₂'' = 0 / 0 = 0
高次元のホモロジー群はすべて0
結果
したがって、K''のホモロジー群は、
H₀'' ≅ F₂: 0次元のホモロジー群はK'と同様、F₂です。K''も一つの連結成分しか持たないことを意味します。
H₁'' = 0: 1次元のホモロジー群はK, K'と同様に0です。
H₂'' = 0: 2次元のホモロジー群も0です。これは、K''に穴のような2次元的な構造がないことを意味します。
K', K''の比較と考察K'に新たな2次元単体{a,b,c}を追加しても、0次元と1次元のホモロジー群は変化しませんでした。これは、{a,b,c}が既に1次元単体で繋がっていたため、新たな穴や連結成分を生み出すことがなかったためです。
2次元のホモロジー群が0になったのは、{a,b,c}が2次元単体として追加されたため、2次元的な穴が存在しないことを示しています。
まとめ
K'に新たな2次元単体{a,b,c}を追加することで、単体複体のトポロジカルな性質は変化しましたが、今回の場合、0次元と1次元のホモロジー群には大きな変化は見られませんでした。2次元のホモロジー群が0になったことが、新たな2次元単体の追加による変化として現れています。
補足
この例は、単体複体に高次元の単体を加えることで、ホモロジー群がどのように変化するかを示すシンプルな例です。
より複雑な単体複体の場合、ホモロジー群の計算は手計算では困難になり、計算機を用いたソフトウェアが利用されます。
ご不明な点があれば、お気軽にご質問ください。
より詳しい説明が必要な場合は、以下の点についてご指定ください。
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