CROW問題から見る『VCTの歪み』と国内シーンに蔓延る『メンバー固定神話』について個人的に思う事
先日、ZETAがT1に惜敗したことによりVCT Masters TOKYOに日本チームが出場することができなくなり、多くの人が悔しさと悲しさを感じる一日となってしまいました。
そして近年ZETAが重要な敗北をした際に必ず話題に上るのがこちら。
もはや恒例行事のようですが、必ず話題になるのが『crowさん』についてです。
ただ、今回は選手のパフォーマンスについて話そうというのではありません。個人的にはスポーツで勝敗がある以上このような意見が集まるのは当然で、過激な誹謗中傷ではない限り許さるものだと思っています。
また、今季を通してみていてcrowさんがチーム内で最もパフォーマンスが低かったと思っているような初心者の方が見ていることはとても素晴らしいことだとも思います。
というわけで本題にはいりたいと思います。
今回個人的に語りたいことは主に3つ。
①視聴者にもゲーム内ランクがあることの悪い点
②日本に蔓延る『チームメンバー固定神話』
③移籍からわかる国内シーンの歪みとVCTの歪み
この3つを話していきたいと思います。
①視聴者にもゲーム内ランクがあることの悪い点
自分はesportsファンになる前からサッカーファンであり、欧州サッカーを好きで見ていた人なのですが、esports観戦をしていて最もサッカー観戦と違うのは
『見ている人の技術にランクがついている』
ことであると感じています。
これはスポーツを見ていた者からすると不思議な感覚です。ランクが低い人は試合を語るなという論調は大きくシーンを衰退させると考えています。
サッカーの解説は欧州や日本でも多くの場合、幼いころにやったくらいで長らくプレイしていない人が多いわけで、一般に見ている層の多くの人が同じ状況です。
valorantでも多くの人はプラチナやダイヤ以下であり、多くの人は1日できて数時間だと思います。このような層が厚い部分の意見を批判、挙句の果てにはTwitterで晒すというのはあまりいい文化だとは思えません。
もちろん、選手個人への誹謗中傷は許されるものではありません。
ただ、「あの動きさえしなければ」や「なんであんなプレーをしたんだ」は熱意をもって見た人ならば当然の反応でもあるのです。
多くの人は本当に自分の事ように悔しがり、残念に思っており、(チケットを買ってあるからというのもあると思うが)この思いや情熱はシーンには必要だと考えます。
個人的にはこういう論争が出てくるくらいには見ている人も増えたんだなと思う一方、両者に『寛容の精神』と『見ない触れない精神』が必要だなと感じる部分でもあります。
どっちの意見、情熱も晒されて貶められるものではないと思うのです。
②日本に蔓延る『チームメンバー固定神話』
ZETAがメンバーを3人いれかえてからそろそろ1年。レイキャビクでの快進撃以降、ZETAはアジアの中位より上くらいの評価に落ち着いてきていると感じます。
PACリーグを見ていて、特に今回T1に敗北したことでより確信したのですが、『良い選手達は半年未満でチームをしっかり作れる』と個人的には考えます。なんなら2~3ヶ月くらいかもしれないとも思いました。
T1の今季最初の方の試合を見ていて、「チームとして戦えていない」と思っていました。割と多くの人が同じ意見でもあったかもしれません。TALONなどもそうでした。
ただ後半戦に入り彼らはしっかりとチームになりZETAに勝ったわけです。もちろん前半がなければもっと良い戦績を残せたともとれるのですが、それでも1年準備と連携を積み上げたZETAを2~3ヶ月で上回ったのです。
日本リージョンとしてこの部分をもっと重視すべきだと思います。
私は昔GMBのファンで彼らを追い続けていました。EMEANo.1になった後から解散まで見てきた人はわかると思いますが、彼らは次々と新しく組みなおされたチームたちに負けはじめ、ついには世界大会にすら出れなくなっていきました。終盤にはロールを変えたり、別の選手を入れたりと細かい試行錯誤をしていたのに無駄でした。
valorantというのは相手の対策をするゲームです。ランクであっても相手の癖を見つけて裏をかくということをするように、同じメンバーでやっていると必ずいつか癖やチームの考え方が丸裸になってしまうものだと思っています。
その上で今回のZETA対T1でその片鱗がちらついていたと思います。そしてリーグ戦である限りどんどんデータは積み上がり難しくなっていくと考えられます。
このような面から見ても選手の入れ替えや、同じレベルで戦える6人目の選手は必要だと考えています。
6人目は使わないから可哀そうという意見も分かります。しかし、プロの世界、しかも国内シーンではなく世界最高のリーグの1つにおり、世界一を狙っているチームが言うセリフではないと思います。
このような点から、『メンバーの入れ替えを行わないほうが完成度が高い』というのは半年を超えた時点で妄想であると感じています。そしてもっと真剣に、控えの選手や入れ替えができるレベルの実力がありそうな選手を探し、考えておくべきだと思います。
③移籍からわかる国内シーンとVCTの歪み
②において、リーグ戦を戦ううえで6人目や移籍は鍵になると感じている話をしましたが、今の日本シーンの雰囲気とVCTのシーズン制が移籍を難しくしていると感じています。
過去、CRが様々なチームからスターを集め、短期間で解散したために大きな非難を浴びていました、そしてそれ以来日本リージョンでは大きな移籍が見られません。
しかし、今こそ『スターを集める』ことが日本には必要かもしれません。
今日本リージョンとしての目標は大きく2つ
①PACリーグで日本チームが勝つ
②PACリーグに日本のチームを増やす
この2つの目標がお互いの足を引っ張りあっていると個人的に思っています。
簡単にまとめると
①を達成するためには、
・国内で活躍した選手をフランチャイズチームに呼んでチームの強化をしないといけない。
②を達成するためには、
・国内で勝ち進み、同じかそれ以上に強化したチームのまま昇格トーナメントに向かい勝ち進まないといけない。
ということになります。
フランチャイズチームからしたら、国内で勝ち上れるチームの優秀な選手が欲しい。国内チームからしたら引き抜かれずに力を維持して戦いたい。と相反するわけです。
その上各チームに一定のファンがおり、CRの前例があるとなかなか軽々しく引き抜けない。引き抜かれる選手からしても環境もチームも変わる難しさより、うまくいってる今のチームが良いと思って拒否するかもしれない。
国内としてどちらに焦点を当てるかが定まっていない上に、引き抜きに抵抗感を感じている人が多いという歪みが生まれています。
そしてこの歪みを加速させるのが、フランチャイズチームと国内チームの分断が起きている現制度でもあると考えています。
DFMが未勝利で終わった際、一番多く噴出した意見が「SZやFL、CRやJDTのほうが強いのではないか」という声です。今までならば国内を勝ち、頂点になったチームが世界で戦ったのでこのような意見はあまり力を持ちませんでした。
しかし現行の制度だとファン目線では勝てないフランチャイズチームと強い国内チームのどちらが強いかがわからないのです(スクリムはしていると思うので当人たちの中では明白の可能性あり)。
この部分が現行VCTの歪みであると考えています。
たとえば今、DFMの選手を変える、ZETAの6人目を変えるとした場合に立ちふさがる問題は
・うまくいったチームの根幹を引き抜いていいのか
・勝ち進んだチームだと引き抜けないからと国内で負けた選手で世界を戦えるのか
・移籍費用や国内の反応を考えないといけない
・選手自身が嫌がるかもしれない
と、多くの問題が出てくるわけです。
このような状況はあまりいいとは思えないですし、最悪『PACリーグもギリギリ勝てない、昇格トーナメントもギリギリ勝てない、けれども下手にチームを壊せないからそのまま』と、すべてが上手くいかない可能性まで出てくると思います。
DFM結成の際も、来てほしい選手に断られた等ひと悶着あったという噂も聞きますし、国内の雰囲気を含めてPACリーグへの移籍・引き抜きを歓迎する雰囲気などを作っていくなど、おおまかでも国内の意思を統一できればなぁと思うわけです。
と長らく語ってきましたが、個人的に現状のシステムと国内の意思の不統一感、チーム固定化の是非など不満があり書いてみたくなった次第です。
初年度なので難しいと思いますが、対応しないといけない問題だと強く感じています。
というわけで今回はこの辺までにしたいと思います。
それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki