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怖いもの。

子供の頃から、風の音が苦手だった。

ゴーゴーガタガタと家ごと揺さぶられているような音も、まるで大きな怪物が呼吸でもしているような吹き抜ける音も、本当に怖かった。

そして今でも、怖い。
怖いものは、怖いのだ。

今日のように雨も強く降っていて、昼間から暗い日なんて特に。
緊張してぎゅーってなって、どうしようと色々試したりしつつ、でもやっぱり力が抜けなくて。
もうやだ!と、まるで子供のように、布団にくるまってみる。


だんだんと落ち着いてくるあたたかさと暗闇の中で。ふと思う。


怖いのは風ではなくて、怖かった時の記憶なのでは、と。

自然現象に恐怖を感じるのは、人間として当たり前のことだとしても。
私が感じている怖さは、なんだか少し違う気がした。


怖いという気持ちを受け止めてもらえず、自分でも怖がること自体「悪いこと、弱いから」だと決めつけてきた、置いてけぼりの自分の気持ちなのではないだろうか。


私は臆病であまりにも色々なことに騒ぐから、相手にされなかったり怒られることも多かった。その時の苦しかった気持ちを引きずったままでいるのかもしれない。


自分が感じる当たり前の感情を、いつの間にか悪にしていた。
大切な気持ちなのに。



だけどそれは、過去のことだ。

私は今を生きている。今をもっと見たい。




『怖くたって大丈夫』


イヤホンから流れてきたその歌詞に、涙が滲む。



怖くたって、大丈夫なのだ。


今を生きる勇気をくれるものは、私の周りに溢れている。




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