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Deviationに込めた想い

はじめに

写真家/アーティストの mag(@mag_cinephoto)です。簡単なプロフィールは以下です。

日常に潜む美を探し求める写真家/アーティスト。2021年12月より活動開始。ストリートスナップの手法をベースに現実と虚構が曖昧に入り交じる、想像力の湧く余白のある瞬間をテーマに写真を撮っている。またコラボレーションや二次創作、写真をベースにした抽象表現の取り組みなど、写真の型にはまらない表現に挑戦中。

この度 Gamma のPrints では 2作目となる Ordinals 作品、「Deviation」についてお知らせさせてください。この作品はオリジナル1/1作品のダッチオークション、Printsでのエディション販売、2つの形でのリリースを行います。


作品の概要


Deviation

「Deviation」は、Ordinals上に永続化された純粋な写真をグリッチし、写真の枠を逸脱することを試みたオンチェーンアート。ベースとなる写真は Inscription 34826878: "Mount Fuji from Tokyo"。p5.jsとWEBGLのコードを実装し、ベイヤー化、色の反転、databending、ブロックノイズ、distortionなど、ランダムなglitchが絶え間なく適用され続ける。オリジナル作品はUncommon SatsにInscribeされ、ランダムglitch処理のシードもUncommon Sats Numberをベースとしている。オンチェーン上でコードが写真を絶え間なくグリッチし続ける構造は、Ordinalsが持つオンチェーンのデジタルアーティファクトの堅牢さ、既存の概念を逸脱し進化し続ける思想を象徴している。

作品制作のきっかけ

もともとクリエイティブコーディングを用いたジェネラティブアートに興味があり、自分でもそれを活用し、表現に取り組んでみたいと思っていました。

その中で作品としてどのように落とし込もうかと考えているときに、グリッチアートとの出会いがありました。Gamma Partner Artistsには SolemnSir Gadfly など、心を打つグリッチアートを制作されているアーティストがいることを目の当たりにしたこともあり、クリエイティブコーディングの手法によるグリッチアートをコンセプトに据えたいと考えました。

コンセプトについて

グリッチアートをコンセプトに据えるにあたり、まずグリッチアートを調べることから始めました。Wikipediaからグリッチアートの定義を引用します。

Glitch art is the practice of using digital or analog errors for aesthetic purposes by either corrupting digital data or physically manipulating electronic devices.

訳:グリッチ・アートとは、デジタルデータの破損や電子機器の物理的な操作によって、デジタルやアナログのエラーを美的目的のために利用する行為である。
Wikipedia: Glitch art

グリッチアート初期の作品の例としては、Jamie Fenton and Raul Zaritsky による 「Digital TV Dinner (1978)」 などがあります。画像の乱れや電子音、ノイズなどがを作品の要素として含まれていることがわかります。

もともとはアナログのテレビゲームやビデオの不具合によって生まれたアートでしたが、現在ではデジタルデータの破損や電子機器の物理的な操作によって、デジタルやアナログのエラーを美的目的のために利用する行為を指すようです。

調べる中で、グリッチアートには唯一の意義は明確には無いものの、各々がシステムの不具合や破壊を通した偶然性の高い視覚的斬新さの探求、またそれらを通してテクノロジーそのものとの向き合い方を見直していくという、自由なカルチャーや思想に興味を持ちました。

そしてそれは、「写真の概念を、グリッチによって逸脱し、見直すことを試みる」という、制作のコンセプトに繋がっていきました。

制作プロセスについて

グリッチアートを用いた表現を考えたときに、ベースをOrdinalsにinscribeした純粋な写真にしたいということは自然と浮かびました。Gamma Printsで展開した「Mount Fuji from Tokyo」です。

以前制作した「Ordinal Tokyo Fragments」や「Recursive Tokyo Vintage 78」では、inscribeする前にオフチェーンで写真に対し前処理を施していたため、今回はオンチェーンで写真に対しグリッチを施すアプローチをとりたいと考えました。

そして写真の画像データをどのようにコーディングでグリッチしていくかを調べていく中で、WEBGL(Web Graphic Library)のシェーダーという存在に出会いました。

WEBGL シェーダーは、ブラウザ上でグラフィックなデータに対して処理を行うためのプログラムです。処理にCPUではなくGPUを用いており、画像のそれぞれのピクセルに対し並列処理をかけることができます。

GPUの処理イメージ。The Book of Shaders より引用

WEBGLシェーダーを使うことで、サイズの大きな画像データでも高速に処理することができるため、今回取り組みたい表現と相性がいいと考えました。またシェーダーによるグリッチ処理に取り組まれている方も多く、様々なインスピレーションを得ながら制作を進められそうだったことも魅力的でした。

仕組みの概要ですが、ベースとなる写真の読み込みはp5.jsを使用し、Recursive InscriptionでOrdinals inspiration上の写真のデータをブラウザに呼び出します。そして呼び出した画像データに対し、WEBGLのシェーダーを用いてグリッチ処理を施すという形式です。

ベイヤー化、色の反転、databending、ブロックノイズ、ホワイトノイズ、distortionなど、なるべく様々な種類のグリッチがランダムに適用されるように実装しています。その複雑なランダム処理により、視覚的な偶然性を生み出すことで、写真の概念を逸脱することを試みました。

様々なグリッチをランダムに組み合わせている

写真の画像データもグリッチをかけるコードも、オンチェーンに永続化されています。またランダムなグリッチ処理のシードには、Uncommon SatsのNumberをベースとしており、作品がユニークなRare Satsに由来していることを示しています。

オンチェーン上でコードが写真を絶え間なくグリッチし続ける構造は、Ordinalsが持つオンチェーンのデジタルアーティファクトの堅牢さ、既存の概念を逸脱し進化し続ける思想を象徴していると考えています。

Listについて

以下のとおりです。

オリジナル1/1作品のダッチオークションについて

Printsのエディション販売について

おわりに

新たなジャンルの制作にチャレンジすることはとても難しかったですが、同時に刺激的な経験でした。

これからの作品の制作・表現の開拓を継続していきたいと思っています。今後とも宜しくお願いします!

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