【レポート】『私たちはこうやって起業した!~建築プロデューサー編~』 -中編-
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それでは中編もお楽しみください!
R不動産がバズったきっかけ
髙田:
東京R不動産とかtoolboxとか、全部のサイトを合わせると月間500万ページビューという、すごいページビュー数を叩き出しているのに広告費をかけていないって聞きましたが本当ですか?この数って某大手不動産仲介さんが月間何千万円も投資をして獲得するページビュー数と同等だと聞いたことがありますが。
吉里:
今は広告費かけています。けど当時は広告費をかけなくても、口コミだけでそれくらい回っていたのは事実です。10年?15年?前かな。でも今は他の類似サイトも増えて(ページビューが)落ちたので、数年前からちゃんとPRをしたり、当たり前のことをちゃんとやろうとしています。特殊なことは正直今も何もやっていないけれど、これまでやらなすぎていたっていう感じです。
髙田:
口コミだけでそれだけページビューが取れたってやっぱりすごいけど、本当に口コミだけ?
吉里:
そう、本当に最初は口コミだけ。僕らが最初立ち上げた時ってSNSもなかった時代なので、自分たちの好きな物件を自分たちの好きな人だけに紹介することしかやっていなかったんです。オーナーさんにもお客さんにも本当に忖度なしに、貸したくない人には貸さないし、いくらお金をもらっても載せたくない物件は載せないし、そういうのを徹底していました。なので最初はビジネスというよりも本当に自分たちが面白いって思うものだけを売り出して物件の人気投票みたいなことをしていたんですけど、そしたらいつの間にか周りから、あれ面白いねって言ってもらえるようになったことをきっかけに、これビジネスにした方がよくない?ってなった感じです。
髙田:
おもしろい。
吉里:
で、その時に迷ったのが、広告業としてやるか仲介業としてやるかなんですよ。イメージ的には、いまで言うホームズとかスーモとかが広告業になるんですけど、広告業だったら契約が決まっても決まらなくても掲載料が入る。逆に仲介業だと成功報酬だから、契約してもらわないとお金が入らない。どっちがいいか結構悩んだんですけど、最終的には好きな物件だけを載せたいっていう思いが勝って仲介業を選びました。広告業だと自分が好きじゃない物件だったとしても掲載しないと仕事にならないので。で、仲介業でいこうって決めたときにさっき話した宅建業者免許を約300万で取得したっていう感じです。
髙田:
なるほどね。掲載物件にこだわりを持ち続けたから、ここまでお客さんがついてきたってことですね。
吉里:
あとは、普通の仲介業者はオーナーさんのために動くことが多いんですよ。やっぱりオーナーさんを押さえているイコール世に出ていない物件を押さえているってことになるので、オーナーさんを押さえていると自ずとお客さんが一定数つきます。でも僕らは、オーナーさんからお願いされても自分の好みじゃなかったら断っていました。多分そこが普通の仲介業者はできないことっていうか、そこが多分ほかの仲介業者と僕たちの違いなのかなって思います。
髙田:
むしろ物件にこだわりなくやり続けていたら、もっと売上は伸びていたかもしれないけど。
吉里:
売上で見たらそうですね。あともう一個、不動産業とか仲介業って、動く額が大きければ大きいほど、その分収入も多くなるじゃないですか。単純に言うと、家賃100万の物件と家賃10万の物件で見たとき、手間はほぼ一緒なのに収入は10倍変わってくる。だから一般的な不動産屋は、金額が大きな方に流れがちなんですけど、僕らはあえてと言うか、自分たちが添えない物件を紹介してもしゃあないからってことで、本当に5万とか10万とかの物件も必ず一定割合は載せるっていうのを決めてやっていました。それは未だに意識してやっていることの一つですね。
toolboxを始めたきっかけや思い
髙田:
ありがとうございます。次、toolboxを始めたきっかけや思いを聞いてもいいですか。
吉里:
場所とか暮らしを作る仕事の中で、R不動産は住む場所、つまり物件そのものを作るチームですね。toolboxは、その住む場所を自分が愛着を持てるような空間にアップデートしてもらうような役割で始めました。うちのお客さんって本当に皆さん暮らし方がうまくて。たまに中見せてもらう機会があるんですけど、皆さんすごいうまく住みこなしているんですよ。僕らもプロとしてインテリアもやらせてもらっていますけど、プロではない皆さんの方がすごいセンスが良いなって思ったのが、toolboxを始めたきっかけです。
ファッションとかも同じで。昔はデザイナーさんが作ったスタイルをみんな高いお金を出してその世界観ごと買っていたけど、今の時代は、みんな自分で選んで、自分で編集(コーディネート)をするじゃないですか。僕たちはその空間バージョンだと思っています。さっきも言ったように、うちのお客さんってセンスが良いから自分で空間というか住まいを編集できるのに、そのツールがないんじゃないかって思ったんですよね。
髙田:
私は自分の家を編集(DIY)することが苦手なので、toolboxがそんなにうまくいくなんて正直思ってなかったけど、こんなに伸びた。
吉里:
DIYもその一部だけど、当初こだわっていたのが、上代下代の両方の価格を明確にするってこと。たとえば、この型のテレビだったら50万、ニトリのソファーだったら例えば10万。一方、カッシーナで買ったら100万です、とか。そういう値段はネットで検索したら出てくるじゃないですか。でも、フローリングとか買ったときにそれを施工する人の人件費とかが別途かかってくるわけで。一般の人は分からないじゃないですか。例えば、トータル50万の予算ってお客さんが決めていたら、上代下代の両方の価格をきちんと提示できないと選択肢の中にすら入れないよなって。もちろん売る方からすると結構リスクあるんですけどね。場所によってだいぶ差が出ちゃうので。でも、価格を可能な限り明確にできるように心掛けています。
共同経営のメリット・デメリット
髙田:
おもしろいな~。つぎは、共同経営のメリットとデメリットを聞きたい。
吉里:
メリットは、やっぱり頭が複数あること。例えばtoolboxとかは林(SPEAC共同代表の林厚見氏)が主導だったんだけど、僕は僕で別のところに注力している時に気が付いたらこっちでもう一個何かが立ち上がっててっていう感じがあって。気が付いたらって言ったら大げさですけど、でも、いつの間に立ち上がってるみたいな感覚が正直あって。それって、ある意味楽だなとか、僕もわくわくするなとか思うから、頭がいくつもあるのは面白いなって。
髙田:
事業計画の中に売上高の目標とかってあるの?
吉里:
一応はありますよ。特にtoolboxは物販で在庫も抱えていることもあって割ときっちりやっています。逆にR不動産は仲介なので、一応数字を何となく置くけど無理な時は無理っしょくらいの軽い感じですね。目標を達成できなかったとしても何かペナルティがある訳ではないけど、フルコミッションなので売り上げがなかったら単純にその人の収入は0になる。まあこれは極端な話しですが。
髙田:
そうすると本人が困る。
…ちょっと話がずれちゃったけど、共同経営のデメリットは?
吉里:
コミュニケーションに時間がかかることですね。時間と言うか、一人でやっていれば当たり前に共有の時間は必要ないんだけど、誰かとやっていると共有するのは当然必要で。人によってはそれがコストに感じるかもって思います。
髙田:
意見が割れることはない?
吉里:
ある。けど、僕たちみたいな場所を作る仕事って、プロジェクト単位なんですよ。イメージ的には、3分の1は僕がやりたいように進めるプロジェクト、3分の1は林がやりたいように進めるプロジェクト、残りの3分の1は僕と林のお互いの強みを生かした役割分担をして進めるプロジェクト。こんな感じだから議論はたくさんしますけど、ぶつかるみたいな感じはない。事業の構造上、比較的共同経営でも続きやすいのかもしれないですね。
事業を長く続けていく秘訣
髙田:
事業を長く続けていくための秘訣として、自分のやりたいことばかりじゃなくてお互いに歩み寄りというか、譲り合いというか、そういうことも大事ですね。
吉里:
あと、やっぱり役割分担って言っても、明確に決め切れないことっていっぱいあって。
たとえば、得意な方に仕事とか相談が集中してしまうこともあるので、そうするとどちらかが手を挙げます。もうちょっと無理、とかって。そうするともう一人が、わかった、ごめん俺がやるわ、みたいな感じで解決することが多い。お金の評価もそうだけど、理屈だけで攻めるのはやめようって僕らは決めています。
髙田:
あと事業をしていると、予期せず避けられない事態に直面することもあるじゃないですか。例えばリーマンショックとか3.11とかコロナとか。
吉里:
コロナ禍でいうと、宿はボロボロだったけど仲介はトントンくらいだったかな。緊急事態宣言が出ていた2ヵ月間くらいはスタッフの子たちを働かせるわけにはいかなかったので営業を止めて、それによって一時的に収入がほぼ0になった期間もありました。でも実は、toolboxはECバブルでボーナス的に2年くらい伸びたんですよ。
リーマンショックの時、僕らは企画設計とか不動産の設計とかやっていたんですけど、クライアントであった大手の不動産事業者、それこそ上場しているとか関係なく、8~9割が潰れてしまったんです。潰れたというか正確には事業継続が出来なくなってしまった。その経験から、一つの事業だけだと怖いなって思うようになったんですよね。
髙田:
リーマンショックの時の反省を経て、事業ドメインを増やしたということですね。
吉里:
そう、リーマンのとき本当にやばいと思ったんで。なので複数の事業をやるっていうのは無意識にやっていた部分もあるけど、やっぱりあの時の教訓みたいなものがあるのかなって思いますね。
後編に続く・・・
【レポート】『私たちはこうやって起業した!~建築プロデューサー編~』 -後編-
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