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ビジョナリーカンパニー PART2
■教材:
「ビジョナリーカンパニー」~時代を超える生存の法則~
ジム・コリンズ著 日経BP出版センター 1995年9月29日
■コンセプト:
投資に活かせる情報として、残したい。
新しい視野を発見をして、NOTEに残したい
■本文
ビジョナリーカンパニーという、考え方。
真に卓越した企業には、どのような共通点があるのか?を調べた本。
ビジョナリーカンパニーは、
■「時を告げるのではなく、時計をつくる」
繁栄し続ける組織を作品としてつくる。
創業者にとって最も大切なのは、会社を築くこと、つまり、時を刻む時計をつくることである。”会社組織を築くこと”に力を注ぐ。
創業者の最高傑作は、会社そのものであり、その性格である。
すばらしいアイデアを持っていたり、すばらしいビジョンを持ったカリスマ的指導者であるのは「時を告げること」である。指導者はいつかはこの世を去る。先見的な商品やサービスもやがては時代遅れになる。
ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くのは「時計をつくること」である。
「時を告げること」と、「時計をつくる」の違いを理解するために、ウエスチングハウスとGEの設立当初の様子を比べる。
ジョージ・ウエスチングハウスは、深い洞察力を持ったすばらしい発明家で、ウエスチングハウス以外にも59の会社を設立している。さらに、エジソンの直流方式よりも優れている交流方式が普及すると読み、実際にそうなった。
一方、GEの初代社長、チャールズ・コフィンは何ひとつ発明していない。
だが、きわめて重要な革新を起こした。「アメリカ初の起業研究所」、ゼネラル・エレクトリック研究所の設立である。
ジョージ・ウエスチングハウスは「時を告げ」、チャールズ・コフィンは「時計をつくった」。ジョージ・ウエスチングハウスの最高傑作は”交流方式”で、チャールズ・コフィンの最高傑作は”GE(ゼネラル・エレクトリック研究所)”だった。
■基本理念を維持し、進歩を促す
トーマス・J・ワトソン・ジュニア
世界は変化している。この難題に組織が対応するには、企業として前進しながら、「その基礎となる」信念以外の組織のすべてを変える覚悟で臨まなければならない。組織にとっての聖域は、その基礎となる経営理念だけだと考えるべきである。
■「基本理念を維持し、進歩を促すための具体的な方法」①②③④⑤
①社運を賭けた大胆な目標(BHAG):
リスクが高い目標やプロジェクトに大胆に挑戦する(進歩を促す)
②カルトのような文化:
すばらしい職場だと言えるのは、基本理念を信奉している者だけであり、基本理念に合わない者は病原菌か何かのように追い払われる(基本理念を維持する)
③大量のものを試して、うまくいったものを残す:
多くの場合、計画も方向性もないままに、さまざまな行動を起こし、なんでも実験することによって、予想しない新しい進歩が生まれ、ビジョナリーカンパニーに、種の進化に似た発展の過程をたどる活力を与える(進歩を促す)
例えば、マリオット。
例えば、3M。
④生え抜きの経営陣:
社内の人材を登用し、基本理念に忠実な者だけが経営幹部の座を手に入れる(基本理念を維持する)
⑤決して満足しない:
徹底した改善に絶え間なく取り組み、未来に向かって、永遠に前進し続ける(進歩を促す)
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ビジョナリーカンパニーには、
③大量のものを試して、うまく行ったものを残す企業がある。
進化による進歩、通常、はじめはそれまでの事業の延長線上にある小さな一歩(言うならば、突然変異)にすぎず、予想外の機会をすばやくとらえた動きにすぎないが、そこから、大きな、ときには意図しなかった戦略的な転換が生まれている。
例えば、マリオット。
1937年、J・ウィラード・マリオットはルートビアーの売店をはじめてから10年がたち、9店舗のレストラン・チェーンを持つ会社を経営するまでになっていた。200人の従業員は熱意に燃え、顧客サービスの方法を細部にわたって訓練されていた。みごとなシステムをつくりあげたのは確かだった。今後3年でレストランの数を倍にする計画であり、若い会社の先行きはきわめて明るかった。創業者を中心とする経営陣は、レストラン・チェーンを拡大することだけに集中していても、大きな成功を収められただろうし、、また、思い切り忙しかっただろう。
しかし、8番目のレストランで思いがけないことが起こっていた。ワシントンのフーバー空港の近くにあるこの店舗は、ほかの店舗とはまったく違った客を引きつけていた。空港に向かう旅行客が、食べ物やスナックを買って、ポケットや紙袋や手荷物に入れて持っていくのだ。この店舗の視察にきたJ・W・マリオットが質問した。「どういうことなんだ。ここで買ったものを飛行機のなかで食べるということなのか」
「毎日のことです。そういうお客さんがかなりいます」と店長が答えた。
ロバート・オブライアンの「マリオット」によれば、J・W・マリオットはその夜、これについて考え通していたという。そして、翌日、イースタン・エア・トランスポートを訪問し、新しい事業をつくり出した。8号店が弁当をつくり、マリオットのロゴが入った明るいオレンジ色のトラックに積んで、空港のエプロンまで届けるようになったのだ。
数か月たって、アメリカン航空にも同じサービルを提供するようになり、1日22便に弁当を届けるようになった。マリオットはすぐにこの新しい事業を担当する専任の管理者を指名し、フーバー空港での事業を完全に押さえ、ほかの空港にも事業を拡大する任務を与えた。
空港サービスはこの予想もしなかった機会から生まれ、やがて、マリオットにとって事業の柱のひとつになり、100を超える空港に広がっていった。
8番店には、同社の通常の客層とは違う変わった客が入っていた。このとき、延々と会議を続け、戦略分析に時間をかけて、泥沼に陥らないともかぎらなかった。変わった客を無視することもできたはずだ。
しかしそうはせず、実験してみることにした。小さな実験によって、この変わった変異が利益を生む変異なのかどうかを試してみることにした。予想しなかった幸運にぶつかって、すばやく積極的な行動を起こして機会を活かし、企業戦略を一歩ずつ転換していった。あとになれば、賢明な戦略をとったと見えるが、実際には、機会をつかまえて実験し、たまたまうまく行ったにすぎない。
例えば、3M。
設立の際の事業目的であった研磨材原料の採掘が失敗に終わって、致命的な打撃を受けた。鉱業からサンドペーパーと砥石車(といしくるま)の製造に事業を変更した。
採掘した研磨材原料がすべて品質が低すぎたから、他に方法はなかった。
綿密な計画によってではなく、必死の生き残り策として、
3Mは鉱業をあきらめ、研磨材の製造をはじめた。
ウィリアム・マックナイトの登場
1907年から1914年まで、同社は製品の品質の問題にぶつかり、利益率が低く、在庫過剰に苦しみ、何度も資金繰りに窮した。しかし、ウィリアム・マックナイトの主張で、製品の見直しと改善をはじめ、なんとか生き残れるようになった。
1914年ウィリアム・マックナイト氏を総支配人に昇進させた。
彼は、生来の「時計づくり」(組織づくり、という意味合い)であり、すぐに縦横が1.5m、3.3mの角の倉庫を同社はじめての「研究室」にし、500ドルを投資して接着剤用の水槽を買い、実験と試験を行わせた。
人工の鉱物を数か月にわたって実験した結果、研磨布の「スリーエム・アイト」を発売した。
この新製品は大成功を収め、発売から75年経った今でも、同社の製品リストに名を連ねている。そして、この成功で同社は設立以来はじめて、配当を支払えるようになった。
マックナイトは常に前進を求める意欲が強烈であった。まだ、ひよこのような会社のために、週7日働くこともしばしばあり、新しい事業機会を常に探していた。たとえば、1920年1月には、変わった手紙に注目した。
「サンドペーパーの製造に使っている研磨材原料のすべてのサイズのサンプルを、印刷用インク、ブロンズ粉、金インクの製造業者、フィラデルフィア州のフランシス・G・オーキーまでお送りください。」
3Mは原材料を販売していないので、取引につながる手紙ではなかった。しかし、マックナイトは好奇心が強く、会社を前進させるアイデアを常に求めていたので、素朴な質問をした。「オーキー氏はどうして、このサンプルがほしいのか」
この質問の結果、3Mは、同社の歴史の中でももっとも重要な製品にぶつかることになった。オーキーは革命的な耐水性のサンドペーパーを発明していたのだ。この製品はやがて、世界中の自動車会社と塗装工場で重宝がられるようになる。
3Mはすぐにこの発明の権利を買い、「ウェットドライ」というブランドで新しいサンドペーパーを発明した。
しかし、3Mが取得したのは、これだけではなかった。ウェットドライはこのときの取引で最重要なものですらなかった。
生来の時計づくりで、いつも組織づくりを最優先させていたマックナイトは、オーキーとの契約をまとめるだけにはしなかった。社員として雇ったのである。
オーキーを雇ったことに示されるように、会社の進化と拡大をすべて自分ひとりの力で達成しようとしたわけではない。常に内部で変異を遂げていく組織をつくり、従業員それぞれの創意工夫によって前進していく仕組みをつくろうとしたのである。
3Mスローガン
独創的なアイデアを持っている人の意見に耳を傾けよう。そのアイデアがはじめは、どんなにばかげていると思えたとしても。
激励しよう、ケチをつけるな。アイデアを出すよう、皆に奨励しよう。
優秀な人材を雇い、自由に仕事をしてもらおう。
部下の回りにフェンスをめぐらせば、部下は臆病になる。必要なだけの自由を与えよう。
思いつきの実験を奨励しよう。
試してみよう。なるべく早く。
個々の創意工夫を奨励すれば、進化の過程の前提になるばらばらの変異が生まれることを、マックナイトは直感的に理解していた。
(以上)