KOK2023勝手に応援企画(2)「舟平/SAM」
てっきり真ADRENALINEが優勝者が決まったものだと思って投稿していました、ごめんなさい。ということで「大会」ではなく改めて今回から出場者にスポットライトを浴びる形にしようかと。
というわけで2人目は、若手MCの中の実力者の一人、SAMさん。
「1年間出場しない」と決めたMCバトルを経て「舟平(しゅうへい)」というもう一つの名前を持ちながら活動する彼もまた、クールなたたずまいが美しいラッパーの一人だ。
レペゼンは栃木、でも……
SAMさんこと本名・三浦舟平さんがレペゼンするのは栃木県宇都宮市。MAKAさんや2017年のUMB王者であるDOTAMAさんなどが育った栃木を代表するラッパーの一人だ。
しかし、彼の生まれはもともと埼玉県所沢市。
転勤などによってこちらに来たわけではない。それについてKOK2019の出場者インタビューの中でも明らかにしているようにラッパーとしてのスタートは栃木。
「SAMの出身は栃木」と語る様は、優しそうなルックスの裏側にある彼の積み重ねてきた「重たさ」にもつながる。
父は演歌歌手の三浦慎也さんでゴッドタンにも出演するような有名人の彼の家族は暗い。母フィリピン人で妹を連れていなくなり、祖母も不法滞在が発覚してフィリピンに強制退去させられるという家族離散。
所沢から離れたのも半ば家出同然の形だったのもあり、多感な少年時代にまた彼にも暗い過去がある。
「10代のころは普通に駅で寝ていた」と語るほどの苦労を重ねてきたのか分からないが、大人びた風貌と振る舞いと年齢が一致しなくて驚いたのが3年前の私である。ごめんなさい。
Soul of Masta Quench
その所沢での暗い過去を乗り越え、そして「今」を駆けるSAMさんのライムはどこか軽快で、やや狙っている感はあるにしてもその硬い韻は多くのヘッズを唸らせる。
廃品回収などをしながら流れ流れてたどり着いた宇都宮。そこで始めたラップと「彼らのおかげで変われた」というMasta Quenchというユニットをはじめとする面々への感謝が根底にある。
フリースタイルダンジョンで彼がキャッチフレーズとして語った「Soul of Masta Quench」には、宇都宮という土地で育てられたという彼なりの感謝が垣間見える。
だからこそ彼のラップにもまた、重みと「心」が乗っかっているのだろう。
代表曲
Re:Days
玉木宏さんを思わせるような端正なルックスと洒落ていながらも着飾らないラップに漂う気品の良さ。
アーティストとしての再出発として選んだDaysのリメイク版もまた、どこか温かみとさわやかさが漂う。1年間の修行を経て再び戻ってきたSAMさんは4年前のKOKでは準々決勝で時のUMB王者となったAuthorityさんに惜敗した。
4年経った今、再びSAMさんは煌めくステージへと再び舞い戻る。踏みしめてきたこれまでの足跡とともに。