ラノベ#8
前前々々回のあらすじ・イス落ち
【魔王様は倒されたい #8】
「なぁ、しつこい様だけど、この料理ってこの店のオリジナルで他では食べれないんだよな?」
「もう!その質問、何回目ですかっ??そうですよ〜!レバ刺し大革命はココでしか食べれないんで、とくと味わって下さいよ〜」
この質問は9回目なのに、ちゃんと答えてくれる彼女は仏の様だ。
あのゲームマスターの飛ぶ目玉野郎の名前と、目の前にあるレバー料理の名前が同じ事は偶然では無いハズ。
(ちなみにレバ刺し大革命という料理は、説明を聞いた時は想像出来なかったが、ぐるっぐるに巻いた羊のヒフと大量のキクラゲは調理過程中に捨てられている為、見た目は完全に普通のレバ刺しだ。味も完全に普通のレバ刺しだ。値段も完全に普通のレバ刺しだ。)
つまり、アイツもこの店の常連で、この料理が好き。
ゲーム内で私に名前を聞かれて咄嗟にレバ刺し大革命と言ったのでは無いか?ーー。
「ねぇ?先輩、聞いてます?それでね、おばぁちゃんがレンタカーを借りて来たんですけど○%×$☆♭#▲!※、、、、、」
身振り手振りを加えて楽しそうに話しかけてくれてる、ほまれには悪いが私の頭は(もしかしたら別テーブルの客の中にアイツがいるのでは??)などの推理でいっぱいで一切、話が入って来ない。
キョロキョロと周りを見渡すが、誰しも疑わしい。
「、、、○%×$☆♭#▲!※。で、最終的にホタテ6個持ったままプロペラ止めるハメになったんですよ」
うわっ!最悪や!聞いてたら良かった!!
めちゃくちゃそのトーク気になる!!
なんや?おばぁちゃんがレンタカー借りて来てから、何がどーなって誰がホタテ6個持ってプロペラ止めるハメになったん?
しかし、聞いてるフリしてただけに、聞き直せない。悔しい。
「くそっ!!」
とあまりにも悔しくて机を叩いた。
ビールがこぼれた。
「あーっ!ビールこぼした!!粗相ですよ!ソ・ソ・ウ!!粗相は〜??ハイ!テキーラ一気♪
すみません〜!テキーラ下さいー!」
20の大学生みたいな飲み方させられた。
テキーラがジョッキで来た。
ジョッキの口に、めちゃくちゃデカいカットレモンが付いてる。
「えぇっ!?なんなんすか!?このドデカいカットレモン!!普通の10倍くらいありますやん!!」
と、マスターに思わず聞いた。
『はい。農家の方に、特別にしてもらってるんです。』
、、、、農家に、“特別にしてもらってる”って何??
言ったら、特別にレモン大きくしてくれるの??
私は、まずジョッキに注がれたテキーラを一気に飲み干し、そのメロンのように大きなレモンを口に入れた。
が、あまりにも大きすぎて一口ではかじれない。
何度も何度も大きなレモンにかじりつき、もう酸っぱい以外のなんの感情も無くなっていた。
その時がテキーラを一気している時よりも地獄の時間だった。
レモンを齧り終えた後、しばらく酸っぱさで悶絶している私にトドメが聞こえた。
「はい?ごちそうさまが、聞こえないっ♪マスター!テキーラもう一つ!!」
何故、35を超えた2人がテニサー新歓コンパみたいな飲み方をしているのだろうか?
「ちょ、マスター!!もうテキーラいらない!!酔い潰れる!!」
『それでしたら、テキーラのスモールサイズをご注文頂ければ、ショットグラスでお出しします』
「いや、それが普通や!
テキーラのメガジャンボサイズを頼んだ時にジョッキで出す様にした方が良いよ!
でも、例えショットグラスの量でも飲んだら酔い潰れるからいらん!」
『ああ、大丈夫ですよ!ノンアルのテキーラもありますので』
「ノンアルのテキーラとは何?」
『ノンアルのテキーラとは、ノンアルコールのテキーラです』
「わかってる!存在する意味あんのソレ??」
『ほぼ無いんですが、特別に、してもらってるんです』
「さっきから言ってる特別にしてもらえるって、何?誰にどう頼んだら特別にノンアルのテキーラとかデカいレモン作ってもらえるの?」
と言ってる最中に、ちらっと店の時計が目に入った。
「あぁっ!!!!ヤベっ!!!もう21:30じゃねぇか!!!」
これは大変だ!何故なら22時を回ると強制的にゲームに引きづり込まれて、体は眠ってしまう!
外でバタンと眠る訳にはいかない!!
早く帰らないと!!
「ほまれ、ごめん!早く帰らないと!!!マスター!会計してくれ!!」
『はいよ!ちょうど3806円です!』
「ちょうどって何?て事よりも安っ!!!!!!」
会計を済ませて店を出る。
『ありがとうございました〜!!』
「先輩、ごちそうさまです!!」
「おぉ、すまんな、急がせて。オレ、タクシーで帰るけど、どうする??」
「あっ!私はバイトせっかく休みだし、もう一件
酒バーにでも行って帰ります!」
「おぉ!そうか!じゃ、また行こう!」
と言っているとちょうどタクシーが通ったのでつかまえた。
『へいよー!お客さん、どちらまで??』
「あ、南区の方面で!はなくそ村って分かります?」
『はなくそ村ね』
「はなくそ村の4丁目の2-8-1057-6-6-12-9です」
『あぁ、あそこね』
タクシーが走り出した。
まだ、ほまれがタクシーに手を振っている。
「、、あいつ、ダーツバーとかシガーバーみたいなノリで“酒バーに行く”って言ってたな。。丁寧やな。。」
ふぅ。一時は焦ったが、コレならなんとか22時には間に合いそうだ。
ここで、安心したのがイケなかった。
安堵からか、酒を飲み過ぎたのも手伝って、タクシーの中でついウトウトしてしまったのだ。
気がつくと、私は魔王の姿になっていた。
「あぁっ!やっべ!!酒のせいで寝てしまった!!
まだ22時になってないのに〜もったいない。
、、あれ??そうや!まだ家に帰ってない!!
、、、って事は、体はタクシーの中やん!!
あかんあかん!!早く起きないと!!」
「、、、、、!!!フンっ!!!!
フーンーッ!!!
ハアッ!!」
と、拳を握り力を込めたが魔王のままだ。
「、、あれ??起きるのって、どうすれば良いんやったっけ???」
酔ってハッキリしない頭で考えていると、どこかからか叫んでいる様な声がする。
(んん??)
と思い、辺りを見回す。
どうやら声の主はこの部屋の扉の向こうからだ。
不審そうに首を傾げながら部屋の扉を少し開け、廊下を覗く。
『柱の建て付け、ヨーシッ!!!』
現場観音だ。
まだ、8人ワンチームになり、8000本の指刺し確認をやっていた。
「おいおいおい!!!何してんの!?えっ!?今朝、ゆーたやん!!
まだ8人が一丸となって一箇所ずつ確認していってんの!?
朝からずっと今まで???
無駄が多すぎて全然進んで無いやん!まだ、部屋出て20メートルくらいやで!?」
と、現場観音に近づきながら、部屋の入り口と現在の確認作業をしている箇所を交互に指差す。
「これ、あと何ヶ月やるつもりよ!?」
と、言いながら、ふとある事に気づく。
「だから、 8人まとまらず、、、1人ずつ、、別れ、、て、、、、。えっ!?えっ!?ん?あれ!?!?」
事の重大さがどんどん分かり、酔っ払った自分の頭に心臓がドクドクと血液を送る音が聞こえて来て、冷静になった。
「今、これ、部屋から出れてない?????」
【続くんです】
あとがき・最近、テレビが壊れました。テレビが無いとやっぱり不便ですね。
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