【ライトノベル書いてみた・けっこう真面目なタッチで読みやすく1話1話を短く書いて行こうと思ってたけど結局、細かいボケ気づいたら入れまくっててめちゃくちゃ長い話になってしまった件】
さてさて、実は自粛期間中、人知れずラノベとゆーモノを書いておりました!
去年8月くらいから初めてオチも決まってたんですけど、まさかの設定ドン被りの作品があり絶望!
しかも、当たり前ですけど、そちらの方が何枚も上で面白い!!
こりゃーダメだ!と思い、先週のR1クラシック終わりからまた新作を書き出しました!
前回みたいに全部出来てからアップして行くシステムはもうやめて、今んとこ4話位まで出来てるのでもーアップして行こう思いました
なので皆さん、週一くらいのペースでアップして行きますのでよろしゅうです
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【けっこう真面目なタッチで読みやすく1話1話を短く書いて行こうと思ってたけど結局、細かいボケ気づいたら入れまくっててめちゃくちゃ長い話になってしまった件】
古びた魔王城の王の間。
冷えた空気に金属のぶつかり合う音が反響する。
その広い空間に立っているのは勇者と魔王のみ。
立っていると言うには語弊がある。
勇者は、ようやく立っている。
勇者の仲間たち4人は既に倒れ
「逃げて、、、」と虫の息を吐き出す声で勇者に伝える。
広間の青い石柱に彫刻された無数の竜の彫刻が、口を開け無表情に2人の勝負の行方を見守っている。
ボロボロになった黄金の鎧をまとい、先の折れた剣を構え勇者が咆哮する。
「クソぉーー!!!こんなの反則じゃねぇか!!全部の魔法と物理攻撃が、ほとんど通用しないなんて!!!!
でもよ!!俺は!倒れた仲間たちの気持ちを、、この、一振りに込めるぜ!!!
ウオォー!!!!!!」
折れた剣を振りかぶる勇者。
迎え撃つのはドス黒い炎を纏った巨大な竜の形をした魔王。
私はこう思った
『あぁ。。マジで半年前いらん事をした』
❇︎
時は2058年、マイクロチップの注射が産まれたばかりの子供にも義務付けられていた。
このマイクロチップを体内に取り込むことにより、行方不明者の発見はもちろん、所有者の体調管理、精神病のケアをはじめ通信・通話・ネット通信・アヒージョ調理など全ての事を可能にしていた。
スマホなど、遠い昔の笑い話。
「え?、わざわざ手に持ってたん?しかも、デカっ。機能少なっ」
今や、調べたい事、見たい動画は画面など見ずにマイクロチップから脳に直接情報が映像化され送られて来る。
瞬間翻訳機能、演算機能の搭載により、人々は勉学を修める必要も無くなり、学校は道徳と友達の作り方を学ぶだけの場になっていた。
通常、睡眠時間は体と脳の休憩時間となっている。
夢は、現実で起こった出来事を
「これは有益な情報。だから覚えておこう」
「コレは不要な情報。だから消そう」
の情報処理の過程上に見る映像。
この時代の人々は、脳も休憩が不用なほど万能なコンピュータが体内に入った事により、夢を見る事が無くなった。
休むのは体のみとなった。
しかし、寝ている間は退屈だ。
そこに目を付けたのがゲーム会社。
そのソフトが発売されるまでは、睡眠にて体を休ませている時間は、マイクロチップが所持者の趣向の動画や音楽を流していたのだが、人々が飽きるのに時間は要らなかった。
一時は睡眠不要論者も現れたが、体内に入ったマイクロチップは、人の運動時に筋肉から生じる熱を動力源としている為、睡眠は必須だ。
更に筋肉と言うダイナモを動かす為に、昔に比べ人々は皆、運動が必須となっていた。
そのため、みんな健康的。
良い事づくめ!!
でも、寝てる時、マジで暇ーーー。。
そんな人々の不満を解消したのが、その名も
睡眠時専用RPG
『ドリームキャスト』
である。
人々は驚愕した。
寝ている時、聞き飽きた音楽が流れる地獄の時間を辛抱して過ごす時間は終わったのだ。
これからは寝ている時、現実ではあり得ない様な剣と魔法と魔物がいる未知の世界を冒険出来るのだ。
だから、そのタイトルが太古の昔、SEG○Aのあんまし売れへんかったハードの名前とガチかぶりしてる事は気にならなかった。
旧時代のスマホでアプリをダウンロードする程度の簡単な手続きで人々は自分のマイクロチップにそのゲームをダウンロードする。
寝れば勝手にそのゲームの世界にワープだ。
なんせ、日頃出来ない様な事が何でも出来るオープンワールドの世界。
ひと昔前の人は、夢で「高いところから落ちる夢を見てリアル過ぎて起きた」「殺される夢見てめちゃくちゃ怖かった」「ただアロエ育てる夢で退屈やった」
とかいろんな経験があると聞いた。
このゲームでは、そんなリアリティある体験が出来る。
「私、夢は全部シロクロやねん」
とゆー(ホンマか?それ、夢シロクロしか見ないキャラ作ってへん??)と思う事案も起きず、フルカラーのハイパーグラフィックで、【夢の中で走ろう思ったら全然スピード出ない現象】も改善され走ってる時も問題無し。
むしろ、ちょい早い上にゲーム内の役職によっては飛べる。
VRゲームの最高峰が一番退屈な睡眠時間に味わえるのだ。
みんなが飛び付いた。
その普及率はカカオトークを遥かに上回り、なんと、全人類の4割以上がそのゲームを睡眠時に楽しんだ。
その世界は広大で、地球とほぼ同じサイズの、中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みや森、山、海、空行けない場所はないオープンワールドのバーチャル世界が広がっている。
主なゲーム内容は、魔王に支配された世界を勇者が魔王を倒し平和にする、、といった一般的なRPGになぞった内容だが、ほとんどの人は主軸よりも枝部分を楽しんでいた。
現実世界では持つ事不可能な豪邸を建てる者もいたし、町外れのカジノでギャンブル三昧・ドラッグまみれの『昼間は公務員』もいたし、アバターを自分好みに変えて性別すら変えてうんとオシャレしたり同じコミュニティでずーっと喋りっぱなしの派閥もいる。
何故なら、一度ゲームオーバーになった時のペナルティが厳しすぎるのだ。
ゲームオーバー。つまりHPがゼロになり3分以上復活魔法や、アイテムを使われない場合、イチからやり直しになってしまうのだ。
大切に育てたキャラのデータは無に帰し、大変な思いをして手にしたアイテム・家財道具も全部失われる。
なので殆どのプレイヤーは無駄な冒険はしない。
みんな、自分のアバターには愛着がある。
日々、無難に楽しめれば良いのだ。
それだけの、冒険以外の娯楽がここにはある。
課金次第では料理も食べれて、コレが繁盛。
何故なら、夢で食べても太らない。
しかし、味は鮮明。
「夢の中で料理を食べようとした瞬間に目が覚めた。。」
という昔話は良く聞いた。
夢から醒めなければ、きちんと鮮明に味はするのだ
1日に何度も同じ店をリピートする人も目立ち出す。
起きている時よりも儲かる人が続出。
寝ている間も厨房で働く人も居れば、寝ている間も行列に並ぶ人もいて、どっちが本当の世界なのか区別も付かなくなった辺りで、妙な商売も蔓延る。
やれ、“ドリームキャスト中の強いレア武器を売ります”
やれ、“ドリームキャスト中にウチの店で働いてくれませんか??”
現実世界でその人達には対価が支払われる様になり、現実世界で働くよりも効率が良いのでは??
と考えるものも少なく無かった。
しかし、寝ている間のみプレイ出来るゲーム。
そこで現れたのが『睡眠薬勢』『睡眠廃人』など
無理矢理、眠くも無いのに睡眠薬で人よりも多く寝て、手に入れたアイテムを現金化して仕事とする人が多くなった。
(たまに睡眠薬の過剰な摂取で死人も出たが、現実世界より夢世界のニュース番組で主に取り上げられていた)
このまま行けば、現金よりも夢世界のゴルド(1ゴルド0.9円)の方が価値が出るんじゃ無いか?そんな話も囁かれる時代ーー。
そんな世界で、私は真面目に勇者として魔王討伐を目指している。
私の名前はマサタカ。
現実世界の名前もマサタカ。
昼間は税務署で働いている。
ゲーム世界でも本名を使ってしまう様な生真面目性格で、税務署ではハンコを押した様な毎日。
しかし、夢の中では勇者。
しかもレベル76。
もう、まともにモンスターと戦わない人達が増えた中ではかなりレベルは上の方。
パーティーは魔法使い、ヒーラー、ナイトメアハンバーガー、そして勇者の私の4人。
みんな、この腑抜けた世界で魔王討伐をめざしてプレイしている同志。
【フィアズ・ジョッシュ】
大きな杖を持つ、三つ編み金髪の大きな帽子をかぶった小さい女の子の見た目をした魔法使い。
80とレベルが高く、高威力の黒魔法はもちろん時間・次元魔法も使える。
(多分やけど言動から察するに現実世界ではオッサン)
【ジョシュ=ジョーシュ・ジョ】
一見、ギャルの様にも見えるが実は清楚な性格のヒーラー・ジョシュ。
回復・復活・補助魔法も使える上に浄化魔法も使え対アンデット戦では主力になる頼りになる仲間。
(多分やけど言動から察するに現実世界ではオッサン)
【ブルーボーン・ルマンドー】
ナイトメアハンバーガーのブルーボーンは黒い色をしたハンバーガーを右手に持っているだけのオーバーオールを着た肌がめちゃくちゃ青黒い農夫。
だが、レベルは92で、ハンバーガー持っていない方の手で繰り出すパンチは音速を超え時空を歪ませる破壊力を持つ頼りになる仲間だ。塩を直接食べる。
(おそらく現実世界でもナイトメアハンバーガーをやっている)
ちなみに、ブルーボーンは仲間になった時、名前は
【ジョーシャンク・ジョーシュ】
だったが、他のメンバーの名前とややこし過ぎるので無理矢理、今の名前に変えさせた。
私も当時は【ジューシー助手】だったが、嫌気がさして本名に戻した。
私はこの頼りになる仲間たちと今夜も夢で落ち合い、こう言った。
「準備は整った。必要なアイテムを買い込んだら今夜こそ、いよいよ、魔王城を落とそう。」
ヒーラーのジョシュが言う。
「必要なアイテム買い込んで無い時点で準備は整って無いやん」
魔法使いのフィアズが言う。
「待〜ちに待ったナン♪気合いを入れて、行くナン♪」
この、語尾に“〜〜ナン♪”と付けるのが彼女の口癖、、では無い。
〜ナン♪発言は私たちも今が初耳だ。
パーティーを組んで4年目で、更にラスボスに挑む直前で急に変なキャラ付けをして来たので、正直ドン引きしている。
ナイトメアハンバーガーのブルーボーンが、ハンバーガーを握りしめた手を青黒い顔に近づけて言う。
「いよいよ、、、ですね。。」
お前は普通に喋るなよ。低い声で“この敵、喰ってもいい??”以外言うなよ。とは思いつつも、ブルーボーンの言った言葉にしんみりした。
そう、いよいよなのだ。
実は魔王城にはいつでも行ける訳では無く、めちゃくちゃ強いモンスター(エンシェント・エリンギ・ドラゴン)を倒した時に、さらにめちゃくちゃ稀に落ちるアイテム【魔王城のカギ】が無いと行けない。
さらに、行ける時間も限られている。
現実世界では明け方5時から12時の間の7時間のみ(魔王城は浮遊している大陸で、その大陸と太陽が重なる時間だけ結界が緩くなるらしい。。)
私たちのパーティーは現実世界では職業がバラバラで、6時起きの人も居たり四時起きの人も居たり(魔法使いのフィアズが現実世界で鉄道整備士との噂)で、まちまちなのだが、今日は全員、仕事が休みなのでスケジュールが合ったのだ。
「よし。浮遊している魔王城までワープ出来る祠から一番近い、この街で装備を整えよう」
ま、装備を整える言っても、店で市販されている武器防具よりも遥かに強い、ダンジョンの宝箱から手に入れた武器があるので武器の買い直しは不要。
万が一の為に復活アイテムと魔法を使う時に必要なMP回復アイテム(※レッドブルー)の買い足しくらい。
私たちは、その街のアイテム屋に入る。
鼻の下に立派な青い口ヒゲを蓄えた店主が言う。
『いらっしゃい。今日はどうする??』
ブルーボーンが言う。
「レッドブルーは万が一の為に27個は欲しいな」
フィアズが言う。
「じゃあ、念の為30個買っておきましょう」
私は思う。
(27て何の根拠のある数字やねん?あと、「念の為」ゆーて多めに買うにしては3個はすくなすぎるやろ。ただ、数字のキリが良いだけやろ。。あ、ちょっと待てよ!今持ってるレッドブルーと27足したら、ちょうどキリ良い数字になるから27言ったんか、、!!今持ってるレッドブルー4やないか!足して31て何の数字やねん!それよりもレッドブルーの今の所持数、少ないな!!けっこう減り激しいんやな!)
私は考えた挙句、答えた。
「店主、レッドブルー68個下さい」
青いヒゲの店主は言う。
『なんの数や? あとアイテムの所持限界を1つ超えてるよ。1つアイテムを売るか捨てないと持てないよ』
(このアイテム所持のシステムやめろよ。。
でも、どうしてもレッドブルーは68個、絶対に欲しいしなぁ。。
何か捨てれるモノあるかなぁ。。)
そう思いアイテムのウィンドウを見ても、どれもいつかは役に立つのでは??捨てるのも売るのももったい無い!!の品揃え。
そんな私のアイテムウィンドウを見たフィアズが笑いながら言う。
「いや、なんであんた、【鍋のフタ】なんてまだ持ってるの??売りなさいよ!!そんなの。何の役にも立たない、ゲーム始めた時に剣を使う役職が装備してる、最初の防具でしょ??
2番目の街で全員商人に売却してるヤツじゃない!」
なんかバカにされた様で腹の立った私は反論する。「はぁ?いや、!え?、はァ??」
フィアズ「すみません。この【鍋のフタ】買い取ってください」
店主『はいよ。【鍋のフタ】だね。20ゴルドだよ。このアイテムは一度売ると2度と手に入らないけど、良いかい?』
私「ほら!売ろうとしたら、コレ言われるから毎回揺らぐねん!!」
ブルーボーン「これ系で、持ってて何か良いイベント起きた試しが無い!!」
店主『売るのかい?【鍋のフタ】を売ってもレッドブルー68個買うには16ゴルド足りないよ』
私「けっこうカツカツでやってたんかい!普通のロープレならレベル50超えたあたりで金のシステムいらん程ずっと金余るやろ」
フィアズ「RPGの事、ロープレって言うタイプなんやね。
ファイナルファンタジーの事、FFって言わずファイファンって言ってたタイプ?」
私「いや、ロープレはロープレ言うやろ。RPGってわざわざ言う方が面倒やわ。
あと、ファイファンもロープレやから、なんか近いジャンルで例えられてもやし。
例えでマウント取りたいなら、“お前、高橋メアリージュンをメアリージュンて呼ばずに高橋って呼んでんちゃん?”くらい離れたジャンルで言わんと」
ジョシュがめちゃくちゃ久々に口を開く
「いや、高橋メアリージュンは誰にもどこも略されず永遠に高橋メアリージュンや。」
私「いや、そんな事よりお前、もう早くも“〜ナン♪”キャラ辞めたんかい」
結局、セラミックソード85個を売ってレッドブルーを大量に買った。
めちゃくちゃ体が軽くなった。
そして、私たちは街をあとにして、馬で10分くらいのところにある例の魔王城に繋がる祠へ。
この祠も、とある難易度の高いイベントをクリアして手に入る地図が無ければ到底辿り着けないだろう、岩場に隠す様に囲まれた場所、、。
祠の鳥居をくぐる。
ここに敵が出て来ないのは以前の調査で把握済み。
鳥居をくぐってあるのは、バスケットコート程度の大きさの平らな砂地の真ん中にある、しめ縄が巻かれた大きな石が一つ入った祠のみ。
その祠に手をかざすと、魔王城がそびえ立つ浮遊する大地の一番下のとがった部分から光が刺し祠へ繋がる。
すると、空中に文字の書かれたウィンドウが出た。
『魔王城にワープしますか?
▶︎はい
いいえ
』
脳内でプレイしているゲームにしては意外とアナログかも知れないが、これが返って分かりやすく好評だ。
ちなみに[はい]を選んだり、▶︎を[いいえ]に動かすには
・空間の文字を直接タップする
・『はい』なり『いいえ』なりを言葉にする
・『はい』なり『いいえ』なりを選択する様にウィンドウを見ながら考える
いづれでも可能だが、直接タップか言葉にするのが結局楽。
勇者は言う。
「はい!」
▶︎はい
の色が
▷はい
と白色に変わり、その途端に光の中に吸い込まれた。
その光のトンネルを通り一気に魔王城の正門へワープした。
魔王城の正門に着いていきなり、拍子抜けをした。
強敵が待ち構えていると思いきや無人で、正門は解放されている。
ジョシュ「あれ?門の扉、開いてる。魔王城のカギってアイテム、めちゃくちゃ苦労して手に入れたのに要らないんじゃない?」
私「いや、まだ分からん。中に入ってから使うんだろう」
何しろ、情報が無い。
唯一、魔王を倒したのは3年前に有名だった睡眠廃人のトップランカーの【† 死黒聖天†】さん率いるハイパー激イタ厨二病パーティーのみ。
その当の本人も攻略後はネット上には現れず、本当に魔王を攻略したのかさえ疑う人も多い。
その後、3年で魔王城に挑戦したのは僅か2組のみで、その2組は魔王に負け、その鍛え上げたキャラ達は消滅してしまったとの噂だ。
あんな強いパーティーが負けて消滅するなら、俺たちなんて歯が立たないーー。
そう尻込みして魔王討伐の挑戦者はめっきり居なくなってしまったのだ。
「よし!みんな!!慎重に行くぞ!!こまめに回復して、仲間の誰が倒れても復活できるように各々、復活アイテムを所持・常に在庫数をチェックしておくんだ!!」
ナイトメアハンバーガーのブルーボーンが檄を飛ばす。
ーーーーーーーー10分後ーーーーーーーーーーー
フィアズ「アレ!?コレ!!私たちがめちゃくちゃ苦労して素材集めて作った武器じゃん!!何のトラップも無いシンプルな宝箱に入ってたんだけど!?」
ジョシュ「敵も、経験値がめちゃくちゃもらえるハッピーラビットしか出てこないし、拍子抜けね。 こんなんなら尻込みせず、もっと早く来てレベル上げしたら良かったわ。」
10分前に、カッコよく檄を飛ばしたブルーボーンが少し恥ずかしそうだ。
私「デパートみたいな案内地図もあるし、階段も手すり付いてるし、バリアフリー行き届いてるな。。ん??待て!なんだコレ!?階段の端、罠かもしれん!!」
罠と聴きブルーボーンの瞳が少し輝く。
私が指差した先。
階段の端が、階段の傾斜に合わせた幅の狭い坂になっており、その坂の真ん中は少し凹んで金属製になっている。
ジョシュ「、、、あ。駅の駐輪場とかにある、自転車押して上がりやすいヤツじゃない??」
、、、自転車で来れたのか。
わざわざ祠から来た。
でも、自転車で来れたとしても正門前に停めるのが礼儀ではないのか??
私「案内板によると、魔王は3Fだ。2Fは全部駐輪場らしい。用はないから3Fに行こう」
三階に上がり、ただまっすぐ続く円柱が立ち並ぶ大きな廊下を歩きながらジョシュが言う。
「これ、掃除とか大変そう」
この、掃除とか大変そう発言は彼女は大きめのダンジョンとか地方の城に行った時絶対に言う。
1回目行った時、少し盛り上がったので、それ以降、言えるタイミングが有れば必ず言う。
言いたいが勝って、そこまで掃除が大変そうじゃ無い部屋の時も言う。
掃除する必要無い洞窟とかでも言い出した頃から皆んなが無視をしだした。
そんな一同に緊張が走るーー。
ブルーボーン「シッ!!気をつけて!!誰か居る!!」
一瞬でピリッとする。
見ると30メートル程先に、いかにもな禍々しく、重く冷たい鉄の扉が両脇に置かれた松明の灯りで浮かびあがっている。
「あそこに魔王がいるのか。。」
扉を見てすぐに分かった。
その扉の少し前には触れるだけで体力が回復するクリスタル 通称・【親切の塊】
そのクリスタルから漏れる光で、1人の人間が立っているシルエットが浮かんでいる。
私たちは恐る恐る近づく。
ブルーボーン「魔王の前に戦う、魔王の1番の家臣の可能性もある。気を引き締めて」
フィアズ「え??あれ、、商人じゃない??」
本当だ。
商人だ。
最終決戦を直前にアイテムを買いたい人に向けられた親切なのだろう。
何もピリつく事無かった。
2度目のカラ回りに遂にブルーボーンが何もしてないのにレッドブルーを飲み干した。
が、間違えてブルーレッドを飲み干した。
踏んだり蹴ったり。
魔王の扉の前に1人佇む商人にゆっくりと近づく、、。
フィアズ話しかける。
「あの、すみません。なんでこの場所で商売しようと思ったんですか?」
商人が答える
『やぁ。何か買っていくかい?
▶︎買う
売る
やめる 』
フィアズ「これ、やっぱ商売始める際は魔王の許可とか取るんですか?」
商人『やぁ。何か買って行くかい?
▶︎買う
売る
やめる 』
フィアズ「住み込みで働いてるんですか?どこかに家あって毎日そこから出勤してるんですか?」
商人『毎日出勤してるよ』
ジョシュ「怖っ。急に答えた事よりも毎日出勤してる事が怖っ!」
私「まぁまぁ。何か良いアイテムが売ってるかもしれん。店主。商品を見せてくれ」
商人『やぁ。何か買って行くか?
▶︎買う
売る
やめる 』
商人『やぁ。何か買って行くか?
▷買う
売る
やめる 』
商人『何を買う?
▶︎【鍋のフタ】
戻る 』
商人『何を買う?
【鍋のフタ】
▷戻る 』
、、、、、、鍋のフタしか売って無いやん!!
「何?毎日、この世界で1番人が来ない場所に出勤して、売ってる商品が鍋のフタだけ!?」
「儲ける気無いの?」
「活発なニート???」
「金持ちの新たな税金対策?」
「『売ると2度と手に入らないよ』て嘘やんけ!」
矢継ぎ早に文句を言う私たち。
商人はまっすぐこちらを見ている。
ブルーボーン「何か怖い。。漠然と怖い。もう、クリスタルに触れて体力回復して行こう。」
クリスタルに触れて約20秒でパーティー全員の体力は全快する
その間、商人はまっすぐこちらを見ている。
すごく怖い
回復が終わりしだい、足早に魔王の部屋の扉へ向かった。
私「あれ?おかしいな。。」
フィアズ「どうしたの?」
私「この魔王城のカギ。まだ使ってないだろ?この扉の鍵なのか?と思ってたんだけど、カギを刺す、鍵穴が無いんだよ」
フィアズ「確かに。」
ジョシュ「あっ!扉の横に機械があるよ!これを動かすんじゃ無い??」
私「いや、それはさっき俺も見た。それはガッシャンってやって前輪ロックするタイプの自転車置き場だ」
ジョシュ「30分無料。その後1時間100円の様ね」
フィアズ「30分で魔王を倒せるなら自転車で来た方が楽ね」
ブルーボーン「ほんまやな」
「ほんまやな」と言う薄いセリフに見合わない声量の大きさにびっくりし、3秒ほど沈黙が続く。。
私「あれ!?なんだ??この扉、カギなんてかかって無いぞ!?試しに押してみたら、ホラ!!」
かすかに開いた扉の隙間から、ただならぬ化け物じみた強者から放たれるオーラが漏れ出して来る。
そのオーラに当てられて、全員が凍りつく。
間違いない。扉の向こうにいるのは魔王だ。
今まで出会ったどの強敵も、比べればチンケなモノに思えるレベルの強さが扉の隙間から漏れるオーラだけで感じ取れる。
正直、勝てるか分からない。不安なムードが一同を覆う。
逃げ出したい気持ちを押し殺し、震えた声で私が言う。
「大丈夫さ。俺たちも十分強い。最強のパーティーなんだ」
「そ!そうよね!大丈夫よ!私たちには誰にも負けない絆があるんだから!!連携技でどんな敵が来ても怖く無いわ!!」
と、自分に言い聞かせる様にジョシュがうわずった声で言う。
私「よし。開けるぞ!」
扉を開けた先は80畳くらいのだだっ広いやや長方形の空間で、天井は恐らく30メートル位の高さがある。
その部屋の奥の方に確認する必要が無い程の強いオーラを纏った魔王が鎮座していた。
魔王が口を開く。
「よく来たな。この時を長く待ちわびていたぞ。」
ただの言葉が、全員の心臓を鷲掴みにしているかの様なプレッシャーを含んでいる。
私「みんな!気を抜くな!ジョシュは対魔法結界を!フィアズは俺の剣に火属性のエンチャントを!ブルーボーンはタンク役で攻撃を引きつけつつ、拳にパワーを溜めておいてくれ!」
一同「応!!」
ムクムクと、人の姿からドラゴンの姿に変身しつつ魔王が城を震わせる程の声で吠える。
「ハーッハッハ!!!かかってこい勇者どもよ!
ちなみに1ターン目は物理の全体攻撃だから対魔法結界よりも対物理結界を張った方がいい上に火属性はあまり効果が無いからエンチャントするなら光属性の方が良いぞ!!!」
私「うるせぇー!!」
必殺剣のチャージをする勇者。
対魔法結界を張るヒーラー。
勇者に火属性をエンチャントする魔術師。
体を鋼鉄化させ、敵の攻撃を受ける構えのナイトメアハンバーガー。
そして、予告通り繰り出される全体物理攻撃。
魔王の振るう剣の、空気を切り裂く音が、悲鳴の様にも聞こえ、過ぎ去った後には凄まじい衝撃が走った。
これにより、ヒーラーのジョシュと魔術師のフィアズが即死。
体を鋼鉄化していたナイトメアハンバーガーのブルーボーンの体力も三分の一にまで減り、運良く彼の後ろに隠れる形になった私の体力も半分まで、削られていた。
その絶望的な展開に冷静な判断が出来なくなったブルーボーンが、おもむろに魔王に殴りかかる。
魔王はまた咆哮に近い声で言う
「ハーッハッハ。無駄だ。私の周りにはあらゆる攻撃を弾き返すバリアが張られており、ダメージは攻撃した者に跳ね返る。ちなみにこのバリアは、ある、意外なアイテムを投げる事で解除出来る様だがなぁ!!」
魔王の言う通り、バリアによって跳ね返されたブルーボーンのパンチの衝撃が、彼自身に跳ね返り三分の一程だった彼の体力はもう虫の息と言うまでに減っていた。
私「ブルーボーン!お前まで死ぬな!今、完全回復薬をお前に使う!」
魔王「ハーッハッハ!!無駄だ勇者よ!!次のターンの私の攻撃は、最前線のキャラ一体に対して防御力無視の高威力魔法攻撃だから、完全回復させても結果、コイツは死んでしまって1ターンまるまる無駄になる。
それならヒーラーにまず復活薬を使って、次の2ターンは私は魔法のエネルギーチャージに使うからその間に全体復活の魔法と次に全体回復の魔法をヒーラーにかけさせて体勢を立て直した方がいい。
まぁ、私には無敵のバリアがあるから何度立ち上がっても無駄だが意外なアイテムで解除できる上に私自身も超絶弱体化してしまうらしいがなぁハーッハッハ」
私は何の忠告も聞かず完全回復薬をブルーボーンに使った。
そして、また魔王の宣言通りに激しい魔法が、完全回復したばかりのブルーボーンに襲いかかり、ブルーボーンは死んでしまった。。
なんて事だ。3人とも死んでしまい、生き残ってる自分もおそらく次の攻撃で死んでしまうだろう。
ここまでこのパーティーで頑張って来たのに、、。
全滅したら、このパーティーの全員のキャラは復活出来ず消滅してしまう。
それだけは絶対に嫌だ。
しかし、どうしたら、、、。
魔王が、先程の宣言通り、魔法のチャージを始めた。
魔王の宣言が本当なら、次のターンもチャージなのか!?
なら、このターンはヒーラーのジョシュに復活薬を使って、次のターンで全体復活の魔法を使ってみんなを蘇らせて、、ダメだ。
全体復活で蘇ってもHPは1の状態で蘇るから、次でどうせ全滅。
一手足りない!!
くそ!さっき、ブルーボーンなんかに回復薬を使わずヒーラーのジョシュを率先して復活させていれば、、、!!!
、、、待てよ!?
さっきから魔王は宣言通りの攻撃をしている!
変な嘘で惑わせて来てるだけだと思ったが、本当の事を言っているのでは!?
そうか!コンピュータは嘘を付けないんだ!!
、、と、なるとヤツがさっきから言っている「意外なアイテム」を投げるとバリアも無くなり本人も弱体化すると言うのも本当の可能性が高い!!
このターンで弱体化させ、次のターン、一撃で魔王を倒せれば、、、可能性はある!!
よし!誰かを復活させても全滅するだけ。
なら、私は魔王を倒す事に賭ける!!
しかし、意外なアイテムとは、何を投げれば??
、、、そうか!!
だから、あんなトコに商人が居たのか!?!?
「うおおおおーーー!!くらえー!!!魔王ー!!!」
私は、城を揺らすくらい大きな声で叫びながら【鍋のフタ】を魔王めがけて投げた
[カーーンッ]
乾いた音を立てて魔王にぶつかった鍋のフタが転がる。
、、、、、、、。
「ギィヤアァァァァァーーー!!!!!!!!」
エゲツない断末魔の悲鳴をあげ、バリアを失った魔王が全身の全ての毛穴や、目、鼻、口、耳、爪、肩、腋、股間から血を吹き出しのたうち回る。
思ってた弱体化とだいぶ違うかったのでドン引きしたが、嬉しい誤算だ。
次の攻撃で間違い無く倒せる。
次のターン。
血を吹き出しのたうち回る魔王はさっき言ったように、また魔法のチャージを行い出した。
チャージしてる場合じゃ無いやろうに。。
そう思いながら私は剣を竜の心臓めがけて振りかざす。
ブシューと言う音と共に魔王の悲鳴が部屋に轟く。
魔王「よくぞ私を倒したな勇者よ。私の負けだ」
そのセリフと共に少しだけ明るめの音楽が頭に流れ、目の前の空間に文字が浮かび上がる。
『おめでとうございます!!あなたは魔王を倒し、街には平和が、、、』
そんな文字など読まずに倒れた仲間に目をやる。
なんとか間に合ったのか、、、??みんなは消滅せずに済んだのか??
早く復活薬を、アイツらに!
倒れて3分以内に復活させてやらないと、消滅してしまう!!
しかし、体が動かない。
そうか!魔王を倒した後でエンドロールが流れているから、コレを黙って見とかなアカン時間なのか!!
「あー!!もう!ええって!!!
スキップ!!スキップ!!飛ばして!!」
その言葉により、空間に浮かぶエンドロールが先程よりも早く流れていく。
そこでふと、疑問が脳裏をよぎる。
(あれっ??でも、クリアしてしまったら、私はどうなるんや??
前回魔王を倒した【† 死黒聖天†】さんはそれ以降ネット掲示板にも何の情報も出してないし、何も分からない。
いろんなタイプのゲームがある。
始まりの街からステータスをある程度引き継いで2週目がプレイ出来るゲームもあれば、魔王倒してもそのまま、その場所から冒険を再開出来るゲームもある。
俺はエンドロールを見終わった後、アイツらを復活させてやる事が出来るのか??)
そんな事を考えていたらエンドロールが終わり
THANKS!!!!!
の文字が出てきた。
どうなる??
すると、また空間に、
『ゲームクリアおめでとうございます!!
魔王討伐のクリア特典を受け取りますか?
▶︎はい
いいえ
』
なるほど!!何か特殊なアイテムやトロフィーが貰えるだけで、ゲーム自体は続くタイプの終わり方だ!!
(受け取ったら最初に倒れたジョシュとフィアズから優先して復活薬を使って、、)
と段取りを組みながら、何も考えず、クリア特典を受け取るを選択した。
また空間に文字が浮かぶ。
『クリア特典を受け取りました。
おめでとうございます。
今からは、貴方が魔王です!!
頑張って勇者を返り討ちにして下さい!!』
「、、、、、え??」
そう言葉を発した直後に、私の体は輝き、先程私が屠った魔王の姿になっていた。
「え!?なになに!?どーゆー事??えっ!?!?
クリア特典で!?なんで魔王の姿に!?」
しばらくパニックに陥っていた私は、倒れていた3人の仲間たちの姿がすっかり消えている事にようやく気づき、思考が追いつかなくなり膝から崩れ落ちた。
「あぁ。。すまない、皆。。復活させてやれなかった。。」
落ちた涙が小さな水溜りを作り出した頃、音がした。
ギィーーーーッ、、、、。
錆びついた扉が開く音。
私はハッとして扉を見た。
当然のように部屋に入り、スタスタとこちらに向かって来るのは、見覚えのある顔。
と、言っても仲間では無い。
さっき扉の前で鍋のフタ専門店をしていた商人だ。
唖然としながら、魔王の姿になった勇者は言葉を振り絞る。
「お前、さっき居た商人か???何で?」
商人は言う
『私の事が分からないと言うことは!!
そうですか!!!!
あなたは、さっきの勇者様ですね!!
魔王【† 死黒聖天†】を見事、倒されたのですね!!』
何も状況が飲み込めない私はすがりつく様に聞く
「おい!一体どう言う事だ!?説明してくれ!!」
『【† 死黒聖天†】さんは、3年前に初めて魔王を討伐した伝説のプレイヤーです。
彼が魔王を倒した後も、貴方の様に空間に
{クリア特典を受け取りますか?}
の文字が出て来た様です。
そして受け取るを選んだ直後に、貴方と同様に魔王の姿になったのです』
「なっ!一体どうして!?」
いろんな疑問をぶつけたい私の言葉を静止して商人は続ける。
『このゲームの設計者は思いました。
魔王こそは最強であるべきだと。
魔王を討伐した成功者がネット掲示板に攻略法を書き込んで必勝法が生み出される様では魔王とはいえない。。
ならばどうするかーー。
倒される度に魔王自身が強くなるしか無い。
魔王を討伐出来るプレイヤーは実質、魔王よりも強い。
ならばこの魔王を討ち取ったプレイヤー自身が次の魔王に交代する
これを繰り返していけば、魔王は常に進化し続けるー。そう考えたのです。
たしかに初代魔王はNPCでAIにも限界がある。
それなら百戦錬磨の人間が臨機応変に戦略を練った方が手強い。
しかし、誤算がありました。
そう。【あまりにも誰も魔王倒しに来ない問題】です。
この3年で貴方以外の挑戦者は2回だけです。
それ以外の時間、【† 死黒聖天†】様はこの、だだっ広い空間でずーっとスミの方見ながら自分を倒してくれる勇者を待っていたのです。
彼はずっと、倒される事を待ち望んでいたのです』
「なっ!!なんだって!?
さっきの魔王が【† 死黒聖天†】さん!?
しかし、そうか、だとしたら合点が行く!!」
そう言いながら私は魔王がバトル中に言っていた言葉を思い出していた。
(“ハーッハッハ。無駄だ。私の周りにはあらゆる攻撃を弾き返すバリアが張られており、ダメージは攻撃した者に跳ね返る。ちなみにこのバリアは、ある、意外なアイテムを投げる事で解除出来る様だがなぁ!!”)
「自分の次のターンの行動や弱点をペラペラと喋っていたのは、そーゆう事だったのか!!
俺たちに倒してもらいたい一心で!!」
『そう。貴方は実に1年ぶりに連れた魚。この機を絶対に逃すわけには行かなかったのです。』
そう言うと、商人はボフンと言う音と白い煙と共に背の低い赤毛のボブの、良い感じの角の生えた、とりあえず可愛い女に変わった。
「なんだ!?」
『魔王様が死に、彼の魔法が溶けた様ですね。
私は、本来はこの魔王城2階を護る魔王軍頭領。
魔王を唯一弱体化させる事が可能なアイテム【鍋のフタ】はほとんどのプレイヤーが捨てて持っていないので、〈詰み〉にならない様に魔王様の命で商人の姿に変えられて【鍋のフタ】を直前の意味深な場所で売っていたのです』
「なんだって!?魔王軍の頭領が商人に化けて、、でも、たしかにあそこで売っていたから弱点にピーンと来て助かった訳だが、、いや、自分が魔王になったこの状況、助かったと言っていいのか!?」
パニックになる私に、頭領は優しく言う。
『ようこそ。世界一、暇な職場へ』
勇者に倒されるまで、気が遠くなる程の暇な生活が幕を開けるーーーー。
【魔王様は倒されたい・2話に続く】
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