ラノベ#3
【魔王様は倒されたい#3】
魔王としての勤務1日目。
うーわーーーーーーー。
ひまーーーーーーーーー!!!!
案の定やけど、何もする事ないやん!
実は、ゲームにログインしたくなくて、小木製薬の《ネムレナクナール》と《オキトクモン》両方飲んだのに、言われていた通り23時ピッタシにコテンと眠りについてしまい気付いたら魔王でした。
まー、魔王として何をして過ごしたら良いのか全く説明されて無いが、既に分かった事が幾つかある。
1:部屋からは出れない
2:頭領について
3:肩から生えてるツノめちゃくちゃ邪魔
23時ピッタシに気づいたら魔王のイスに座っていた私はとりあえずキョロキョロと辺りを見渡し、
「誰かー!誰かいませんかー??」
と大声で言いながらウロウロした。
常時、魔王っぽい演出なされていて、
「誰か居て無いですかー?」
と低いリバーブのかかった声で言う度にビリビリとステンドグラスが揺れて天井からホコリが落ちてくる。
(いや、普通のセリフも魔王の雄叫びの時みたいになるんかい!)
と最初は面白かったが、すぐに飽きた。
私が期待していたのは、昨日、出会った赤い髪の毛をした魔王軍頭領の女の子。
彼女ならマトモに見えたので話し相手になってくれるのでは??と一縷の望みがあった。
あっ!そうだ!!確か、前魔王の指示で、この部屋に入る扉の前で鍋のフタ専門店をしていたんだっけ??
と、思い扉を開けると、彼女が居た。
商人の姿では無く、女の子の姿で同じ場所に立っていた。
「あー、良かった!!居た!!すみませんー!あなたもプレイヤーなんですよね?そこに居ても暇でしょうし、何か話しませんかー??」
『、、、、、、、、、、、、、。』
無反応の女の子。
「あれ??聞こえてない?すみませんー!」
と空気を揺らす声で言いながら、もう少し近づこうと扉の敷居を跨いだ瞬間、バチバチっという音と共に目の前に赤い稲妻の様な物が走り、激痛と共に腰を抜かしていた。
(え??何が起こった??)
恐る恐る、立派な爪を携えた人差し指を扉の外に出してみる。
バチバチっ!!とまた稲妻と衝撃が走る。
(結界!?)
どうやら、この部屋から出れない様に閉じ込められているらしい。
監禁やん!もう。
(いや、待てよ。昨日はあの子はこの部屋に入って来ていたよな。。この結界は、私にだけかけられたモノなのかも。。あの子が入って来てくれれば、話し相手になってくれるかも!)
「おーーーーい!!!」
さっきより大声で呼ぶ。
さっきより凄いホコリが落ちてくる。
『、、、、、、、、、、、、。』
結界のせいで声まで聞こえないのか??
そう思い、手を高く上げて振ってみる。
振った瞬間、肩のツノが激しく頬を刺した。
「痛った!!!もう!邪魔やねんてコレ!!」
と言いながらリアクションしたら結界に触れてしまい赤い稲妻がまた走った。
「ギィヤアァァァァァ!!」
雷に打たれた時にする感電のリアクションで、両手を上げてしまい、両頬に両肩ツノが激しく刺さった。
「こんなんばっか!!」
こんな事初めてやのに、変な事を言ってしまった。
「くそー、あの子を気づかせるには。。あ!そうだ!」
私は魔法のウィンドウを開き、覚えていた閃光魔法の〔フラッシュ〕を選んだ。
相手の目を激しい光で一時的に見えなくする魔法で、実際には使った事はあまり無いが、声はダメでも光なら気づいて貰えるだろう。
彼女との距離は五メートルはあるし、攻撃性は無いはずだ。
「フラッシュ!!」
と言い放ち手の平を高く上げる。
また、頬に肩のツノが激しく刺さる。
「痛った!!」
と思わず手を下げてしまい、自分の顔の前で炸裂する〔フラッシュ〕。
「ギィヤアァァァァァ!!目が!目がぁ!!」
と両目を押さえてよろめき、結界に触れてしまう。
「ギィヤアァァァァァ!!!」
感電のリアクションで両手を上げ、頬に突き刺さる肩のツノ
「でんすけーーー!!!!!」
もう、訳が分からず私は思わず、スイカの種類を叫んでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、、。このツノ、折ってまお。」
『あの、、、。さっきから、うるさいんで静かにしてもらえませんか?』
女の子が鬱陶しそうにこちらを見て言う。
「聞 こ え て た ん か い!!!!」
今日、1番のホコリが舞う。
「いや、聞こえてたなら、返事してよ!!
なぁ、何もする事ないから、話し相手にでもなってよ」
『、、、、、、、、、、、、、、、、。』
「ねぇ、魔王軍の頭領だけど、運営に雇われてるバイトのプレイヤーって言ってたよね?長いの?」
『、、、、、、、、、、、、、、。』
「いや、聞こえてるんでしょ??ずっとそこに居ても退屈でしょ??ねぇ?」
『あなたと話す事は、仕事に含まれてませんので。』
「いや、仕事に含まれてなくてもさ、お互い何もする事無いんだから!」
『今、壁のタイルを見るのに忙しいんです。静かにして下さい』
「えっ!?タイルを見るのに忙しいて何!?何の為にタイルを?? 、、、ねぇ、そんなトコで1日ボケっと立ってても楽しくないでしょ!?」
『、、、、私は、何も考えず、ボケーっとただ立っているのが何よりの幸せなんです。人それぞれの楽しみ方があるんです。
、、、、お願いです。1人の時間を下さい。』
(あぁ、、、ヤバい子やったんや。)
そう思い、「ご、ごめん」と小さな声で言いながら扉を閉めた。
しばらく、部屋をウロウロしたり、
壁に沿って並ぶ柱に彫刻された龍の像に一つ一つ名前を付けて行ったり、
(タイル見て何が楽しいんや??私もタイル見て見るか。)
と、タイルウォッチングしたり、
「タイル見て何が楽しいねん!」と叫んでホコリを舞わせたり、
壁のタイルとタイルの間の継ぎ目でアミダクジしたり、
(“タイル”ってホンマに“タイル”って名前なんやっけ??“タイル”??“タイ・・・ル”?
、、、、、、、“タイル”ってずっと考えてたら“タイル”って何か分からんくなってきたわ。
よし。一回、“タイル”って口に出して言ってみよう)
「タイル」
(、、魔法唱えたみたいなったやん。めっちゃホコリ舞うし。しかし、コレってホンマに“タイル”って名前やっけ??)
みたいな事を考えていたが、もう既に飽きた。
※タイル
昔、一滴一滴落ちて行くドモホル○ンリンクルを見続けておく仕事があったらしいが、こんな気持ちだったのだろうか??
否!それよりも暇!だってここには落ちて行く滴すら無い。タイルしか無い。あれ?“タイル”って名前でホンマに合ってたっけ??
あ“ーー!!これがこの先、毎日続くのか!?
そう考えると絶望が襲ってきたので
遂に私は、早くも初日で、考える事をやめた。
口を開いたまま、無感情で1秒、2秒、、と時間を数え続けてしばらく経った。
『どうです!?初出勤!!頑張ってますか〜??』
急に甲高い声が耳元に響き、驚く!
「うわぁっ!!ビビった!!」
その反動で椅子から崩れ落ちる。
「痛った!どうりで!!!!」
焦りすぎて、“どうりで!”と意味分からんリアクションを取る。
驚かした犯人はだいたい分かるが、一応、声のした方を見る。
やはり、レバ刺し☆大革命だ。
ようやく話し相手が出来た。
【魔王様は倒されたい#4に続く】
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