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院生として取り組んでいた研究がPLOS ONEに掲載されました
株式会社maemo atomoの代表をしており、 [maemo atomo studio]という産前産後の時期に必要な運動を、科学的・医療的エビデンスをもとに助産師・理学療法士が提供するStudioを運営しています、西山夏実です。
本日は自身が取り組んでいた研究がたくさんの方のご協力のもとPLOS ONEに掲載され1つの形にできたことこをご報告したいと思います。
データ補正方法の考案から補正のためプログラミング言語、論文執筆など何もかも初めての中で、たくさんの時間と知識と技術を提供してくださった先生方へ心より感謝申し上げます。
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助産師としての勤務を経て大学院に入学をしたきっかけ
私は助産師の臨床経験があり多くの産前産後の方と関わってきました。その中で、産前産後の時期は今まで健康だったとしても高血圧や糖尿病、産後うつなどといった産科合併症に罹患するリスクがあり、重篤な場合は母児の命に関わるということを医療者として直接目にしてきました。
WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviorによると妊娠中・産後の女性は身体活動を行うことで子癇前症、妊娠高血圧症、妊娠糖尿病、過剰な妊娠中の体重増加、うつ、また、新生児合併症のリスクを減少させることができることが報告されています。また、妊娠中・産後の身体活動によって出生体重への悪影響や死産のリスクの増加はないということも同時に報告されています。
そして具体的な身体活動の推奨内容としては、米国産科婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists)は、正常経過の妊娠前・妊娠中・産後の女性は週のほとんどの日に、1日30分以上の中強度の運動を行うことを推奨しています。またWHOでは、週に150分以上の中強度の運動を行うことを推奨しています。
しかし、推奨基準を達成している産前産後は僅かであり、産前産後の身体活動不足は世界的に深刻な課題となっていることを知り、この分野をもっと発展させる必要があると思ったことが大学院に入学したきっかけとなっています。
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取り組んでいる研究テーマ
身体活動とは、安静時よりも多くのエネルギーを消費する動作のことを指し、強度はMETSというもので表されます。中高強度は3METs以上、座位行動は1−1.5METsの活動を示します。成人を対象にした先行研究では、中高強度身体活動を行うことや、⻑時間の座位行動を避けることは、がん・高血圧・糖尿病・うつの予防に効果があると報告しています。
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そして身体活動の総時間というのは、頻度と継続時間で構成されており、同じ総時間であってもその質である頻度や継続時間は異なります。成人においては、座位行動の間に2分以内の低強度身体活動が入ると高血糖や高血圧を予防することや、1日3回の1分間の高強度身体活動は死亡リスクを減少するなど、身体活動の質が重要であることが報告されています。
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従来の産前産後を対象にした身体活動の調査は、質問紙やインタビュー調査によるものが多く現在のガイドラインのベースとなっており、最近ではウェアラブルデバイスによる調査で定量的に評価が可能になりましたが、産前産後を対象にしたものでは総時間のみに着目しているものが多く、継続時間や頻度を詳細に調査しているものはありません。
そういった背景の中で、自身の研究テーマとしては妊娠中の身体活動における質の特徴や産科合併症に与える影響を明らかにすることを目的にしています。
今回の研究はその前段階として、産前産後の時期には比較的多い傾向のある座位行動など低強度の身体活動を⾼精度で評価するためのデータ補正方法の提案となります。
研究をする論文を書くということを経験して
まずは自身にとって今回が記念すべき初めての論文投稿になり、まずはたくさんの方に助けていただき、サポートいただき、ここまでこれたということが一番大きく、嬉しいという感情よりも、感謝の気持ちが溢れまくっています。
その上で、[産前産後の身体活動と産科合併症との関連]をテーマに研究をすることは間違いなくプラスになるたくさんの学びを得ています。(卒業のような言い回しですがまだまだ過程です)
研究計画をたてる、論文を書くということは、興味だけでなく必要性に駆られて、この分野の研究を読み漁ることになります。自身の研究の背景となる他の論文や、自分の主張を補助するような内容の他の論文を読むことになるため、産前産後の身体活動の分野について深く知り、理解することにつながります。このことがmaemo atomoや自身の考えをつくっていくことに大きく繋がっています。
引き続き、学術的な視点からも産前産後の身体活動という分野を理解し、産前産後のかたたちにとってプラスとなる社会にできるよう取り組んでいきたいと思います。