待ちわびた水曜日
水曜日に会う約束をしてから、1日1日がとっても長かった。
私は久々に友人と会って遊んだり、
高校入学〜編入のことを打ち明け、まさに第二の人生を歩もうとしていた。
そして、火曜日。
ーー時間連絡するって言ってたよな・・・こっちからかけない方がいいよな。
時間は流れ、19時。
・・・まさか、忘れられてる?
かけようか、待つか、携帯を握りしめ、落ち着かない様子でいると、
♪〜♪〜♪〜
・・・あきとさんだ!!!
「はい!!」
「れいちゃん?今大丈夫?」
「はい!!もうかかってこないかと思いました。笑」
「ごめんごめん、忘れてないよ!ちょっと仕事押しちゃって。」
「なんか忙しそうですね。明日大丈夫なんですか?」
「そのために、頑張ってきたようなもんだからね。明日、10:00に迎え行くから。大丈夫?」
「はい!大丈夫です!!というより、私があきとさんの最寄りまでいきましょうか?」
「なにそれ。笑 通り道だから大丈夫。」
「(・・通り道?)そうなんですね!わかりました!」
「じゃあ、仕事戻るから、また明日!」
「お疲れ様です。楽しみにしてます!」
ーーー通り道ってなんだ?仕事の後にくるとか?
でも忘れられてなくてよかったーー!!!
あきとさん、忙しそうだなぁ。
というより、いくら持っていけばいいんだろう!!
学校行かなかった時に、お酒やタバコでお小遣い結構使っちゃったし…。
私は、入学祝い金やお年玉を貯めておいた通帳から、
3万円下すことにした。
ーー足りるよね。よし!
そして当日。
駅へ向かうと、あきとさんの車が目に入った。
目があうと、窓から顔を出して、
「おはよ!乗って!」
「おはようございます!はい!!」
「あきとさん、仕事帰りですか?」
「まさか!ちゃんと昨日家帰って寝たよ。だから運転は安心して。笑」
「あ、いや。通り道って言ってたから。」
「あー!今日行く目的地の通り道ってこと!」
「え、決めてるんですか?どこ行くんですか?」
「内緒〜!」
「じゃあ任せます。それより、お腹空いてませんか?ごはんとパン、どっちがいいですか?」
「え・・・まさか?まさか!?作った?買った?」
「お米とパンは買いました。笑 それでおにぎりとサンドイッチ作りました。運転中食べやすいかなって」
「やーばー!テンション上がるね。じゃあどちらもいただく。」
「じゃあ、おにぎりからどーぞ!」
「ありがと。今日行くところ、完全に俺に付いてきてもらう感じだけど、ごめんね。」
「いえいえ!そのために、きました!!」
「さいこー!」
そして到着したのは・・・・
「神奈川県・・?」
「そう!●●市!俺の地元なんだ。なんかリフレッシュしたくてさー。アウトレットとかもあるから、買い物もしない?」
「アウトレットー!好きです!!」
「決まり〜〜〜」
アウトレットでは、アイスクリームを食べたり、
あきとさんのお買い物に付き添って、
これが似合う、似合わない、を繰り返したり、
私の買い物にも同じように付き添ってくれて、
30分悩んでいた小ぶりのネックレスを「今日のお礼」と買ってくれた。
お金の使い方からして、私が思っている「バンドマン」の経済状況ではなく、
実家がお金持ちとか・・?と想像を膨らませていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、気づけば16:00。
「そろそろ帰らないとまずいよね?お母さん、また夕飯作ってるんじゃない?」
「いや!今日は遅くなるかもだからいらないよって伝えてます!」
「そっか。じゃあ、軽くご飯でも食べて帰る?」
「そうしたいです!!」
平日にもかかわらず、夏休みの時期。
道はなかなか進まず、ナビの到着予定時刻はどんどん後ろ倒される。
「混んでますね・・・」
「夏休みだもんなーちょっとコンビニ寄っていい?飲み物買う」
「もちろん!」
「車で待ってて。」
「はーい!」
あきとさんが飲み物を持って帰ってくると、
すぐに出発はせず、会話が続いていた。
「本当に今日はありがとう。すごい発散できた。楽しかったー。また明日から頑張れる気がしてるよ。」
「よかった!あきとさんが少しでもリフレッシュできたなら!私も、こんなに1日中一緒にいれて嬉しいです。すごく幸せです。」
「大袈裟じゃない?笑 俺、からかわれてる?」
「なんでそうなるんですか!」
笑いながら正面を見つめるあきとさん。
その横顔を見て、幸せを感じると同時に、どこか疲れている様子も感じて、少し申し訳ない気持ちになった。
そんな複雑な表情をしていたら、あきとさんと目があった。
「まだ一緒にいたい」
心の中で何十回も発していた言葉が、口に出た。
「ダメだよ。帰らないと。」
「困らせてる?私。」
「すごく困まってます、俺。」
「ごめんなさい。」
「行こうか。」
「はい。」
コンビニの駐車場を出て、
走り出した車は、ナビが示す方向とは逆へ向かっていた。
「あきとさん・・?道、間違えてない?」
「間違えてないよ。」
「え?でも、逆行ってるよ。」
「30分くらいかなー」
「え?どこ行ってるの?」
「箱根。笑」
「箱根!?温泉!?」
「そ。到着するまでに、帰りたくなったら言って。引き返す。笑」
「・・笑いながら言わないでください。」
「ごめんごめん。笑」
車は箱根方面へ向かい、
私は携帯を取り出して、地元の友人へメールした。
・・
ーごめん、今日、●●ちゃん家に泊まることにしてもらうかも。
ーーえ?どういうこと?
ーごめん!そうなったら連絡する!
ーーいいけど、ちゃんと今度聞かせてよ〜!笑
ーはい・・!ありがとう!!
ーー良い夜を❤️
・・
そして、程なくして、箱根に到着した。
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