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義務教育学校

 (文 前島ひでお)
 さいたま市は武蔵浦和地域に「義務教育学校」を作る計画を明らかにしました。浦和大里小・沼影小・内谷中を一つにして、内谷中と大里小の2か所に1~4年生の校舎を、沼影公園に5~9年生の校舎を作り、一体型で運営するというものです。

 学年編成は従来の6・3制ではなく、4・3・2制にする方向です。児童生徒数は、4年生までがそれぞれ20学級800人、5年生以上が50学級2000人だそうです。合計すると3600人の超過大規模校になります。

 すでに住民からは心配の声が起きています。例えば、「大里小から白幡中に通っていたり、別所小・西浦和小・辻小から内谷中に通っていた児童はどうするのか」とか、「市民の憩いの場であったに沼影市民プールの廃止を前提にしているがなくしていいのか」「学年編制が周りと違うことや入学式・卒業式がどうなるのか心配」(つくば市では、4・3・2制ですが、1年生で入学式を行い卒業式は9年生と1回ずつ)「災害時4年生が1年生を守れるのか」などです。

 先行して実施したつくば市は、4・3・2制をやめて、6・3制に戻しました。4・3・2制は「中1ギャップの解消」に有効とされてきました。6年生が中1になった時に、難しい学習や人間関係に悩み、不登校やいじめが増える、と言われて来ました。つくば市は実施後の2年間をかけて実証検査を行いました。その結果、中1がギャップの解消の効果よりも「小6問題」と言われる6年生の問題が深刻化したそうで、以前の6・3制に戻したそうです。全国でも、一時は7割の学校が4・3・2制をとったそうですが現在は減ってきているようです。

 「小6問題」とは何か。科学研究費基盤研究(梅原利夫代表の「小中一貫校の総合的研究」によると、一貫校の6年生が、コンビデンス(やればできるという自信)が、非一貫校より低い。また、一貫校の6年生にネガティブな傾向がみられる。特に「教師からのソーシャルサポート」や「対教師関係」や「友人との関係」などの、人間関係に関する指標で、6年生に際立ってネガティブな傾向がみられた、ということです。

 私も6年生を何度も持ちましたが、6年生になり1年生の世話をする中で大きく自覚が高まった子ども達を見てきました。1年生の給食の世話・4月いっぱいの教室掃除・朝会に行くときの付き添いなどで「お兄ちゃん・おねえちゃん」と言われ、嬉しそうにおんぶまでするわんぱく小僧が大人になっていく姿を何度もありました。また、委員会活動やクラブ活動など・通学班でも6年生は頼りになりました。しかし、4・3・2の3では、5年・6年・中1が一緒であり、非常に難しい位置にいるようです。

 また、大規模校になると、地域の住民の学校に対する関心が薄れる傾向もあるようです。運動会や学習発表会。文化祭などは地域の人も参加してきましたが、広域な学区になるとそうはいかないよです。また、PTA役員も大変なようです。

 結論です。いろいろと課題が見えますが、一番の問題はこの案が一部の人だけで考え決められていることです。全国的には東京都武蔵野市や大阪府枚方市・兵庫県川西市などが、地域の保護者・住民・教職員そして子ども達までが行政との何度にもわたる懇談会の末、中止・凍結の結論を出しています。さいたま市がこうした立場に立てるかどうかが最も問われているのではないでしょうか。


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