#23 なぜ、地域の問題が国政につながっていくのか(前編)
Q,中野区・杉並区の問題解決をなぜ国政が関わって解決する必要があるの!?
こんにちは。黒崎祐一です。
今回は、私のところに届いた疑問にお答えしていきたいと思います。選挙期間中を含め、いろいろな方と触れ合い、コミュニケーションを取る中で、政治に関しての疑問を投げかけられることが少なからずあります。皆さんの疑問に可能な限りお答えしていこうと思います。
さて、先の衆議院選挙で、私は「国会議員の立場と力を頂いたならば、中野区・杉並区の問題や課題をスピード感をもって解決したい」と訴えてきました。
すると、「国政とがどのようなつながりがある?」という質問を先日いただいたのです。確かに、「国の問題は国会議員が、地域の問題は地方議員が解決すればいいじゃないか」と思いがちです。
けれども、そうはいかない点があるのです。
私も2期8年間を地方議員として経験してきましたが、地方議員ができることは実は限られていることが、その理由です。
やや長くなるので、今回は前編・後編に分けてお伝えしてきたいと思います。
■中野区・杉並区の問題と、国政とのつながりとは!?
一言で言えば、「日本の行政や政治のシステムや構造によって、地域の問題を地域の力だけで解決することができないから」ということになります。
まず、国と地方自治体との関係の歴史を振り返ってみましょう。
地方自治体というものはそもそも、国の事務を地方に委ねるという仕組みのもとに生まれたものです。
戦後の歴史の中で、地方自治体というものを規定する地方自治法は変化していき、地方分権の方向へとシフトチェンジされていきました。現在では国、都道府県、市区の関係は対等なものと規定されています。
しかし、現状として、地方自治体がその地方の内部だけで様々な問題を解決できるのかといえば、そうではありません。現実的には、市区町村単独では動かない問題というものが山ほどあります。
実際、私が地方議員を務めていた経験の中でも、区議会議員では区内の問題を解決しきることができないということを痛感しました。ある程度のレベルの問題になると、区の裁量権はほとんどないというのが実情なのです。しかも、区議会議員が何度も都や国に陳情に行ったところで、なかなか相手にしてもらえません。
本当に地域の問題を解決できる地域運営をしたいというのであれば、国や都の方針から動かさなくてはできないことがあるという現実にぶち当たりました。
■地方自治体と国との関係における分かりやすい事例
一例を挙げますと、皆さんが商品の購入などのトラブルの際に相談する機関として消費生活センターがあります。消費生活センターを設置しているのは地方公共団体ですが、実際のところ、消費者センターに寄せられる相談の約8割は地方公共団体の権限内ではどうにもならない問題です。
例えば、現在寄せられる問題の多くにクレジットカードが関わっています。しかし、日本のクレジット関連を監督しているのは経済産業省であり、その他、案件の内容により、消費者庁や金融庁の法令が関わってきます。つまり、クレジットカード1つ絡んだだけで、地方公共団体レベルで判断できるレベルを超えてしまうのです。
そうなると、窓口での解決はできるはずもありません。
消費者が消費者センターに訴えかけても根本的な解決へと繋がらない現状には、表向きは権限を与えられた独立機関とされながら、その機関が権限や力を持っていない実態があるという二重構造があります。
公正取引委員会が、建前上は独立機関と規定されていても、結局のところ内閣府の意向に沿ってしか動くことができないというのと同じです。
このように、結局、国単位で動かないと問題が解決しないという事例が様々にあります。
■地方自治と国の政策の足並みが揃わないと、どのような問題が生まれる!?
各地方間での公平さが失われるというのが、大きな問題の一つです。
例えば、給食費の無償化の問題などもそうです。2023年4月から、東京23区の公立小中学校での給食費が無償化となりました。
しかし、全国的に見れば、まだ半分以上の公立小中学校で無償化されておりません。無償化できるかどうかは、地方の財源的な強さなどによってしまっているのが現状です。
同じ義務教育を受けている子どもたちということでは、明らかに公平さに欠ける現実があるのです。
余談ですが、私は、日本国憲法で義務教育が定められたときと同時に、公立小中学校での給食費の無償化がなされるべきであったと考えています。
給食費は授業料に当たらないので、無償にしなくても憲法違反にはあたらないというのが現行の主な解釈ですが、国民の教育を受ける権利を平等に保障するのであれば、給食費も平等に無償であるとする方が現実的な考えだと思います。
そして、現状として、給食費に関しては各自治体がバラバラに対応するということになってしまっています。結果的に、子どもに手厚い地区とそうでない地区という、不公平さが生まれてしまう結果となっています。
■国や都道府県と地方の問題の根底には財政的な問題がある
まさに、問題は財政的な部分にあります。中野区、杉並区の抱える問題の多くも財政的な壁に阻まれているのです。
一言で言えば、中野区、杉並区が財政的に独立した状態にないということです。それは毎年、都から交付される都区財政調整基金に表れています。
都区財政調整基金とは、東京都の特別区である23区内の基本財政の均衡を調整を図るために、積み立てられ、交付されるものです。法人税などをはじめ、都が税収したうちの約55%を、各区の財政状況に応じて振り分ける仕組みです。
これは自律的な財政を維持できていると判断された区には交付されません。令和6年度では、港区と渋谷区の2区のみが交付を受けずに済んでいる状態です。
中野区、杉並区は年によって波はありますが、400億円、500億円といった単位で交付されています。
中野区を例に取れば、歳入のうち東京都からの交付金が約3割を占めている状態です。
つまり、自分たちの自治体の税収だけではやっていけない状態なのです。そのような状態で、自分たちの手でだけで、地方の問題に向かい合おうというのは限界があると思いませんか?
後編へ続く。