ホタルのこと
ホタルについて調べたことを記録しておく。
ホタルの種類
水辺の生き物としておなじみのホタル。
でも、世界に2000種以上いるホタルのうち、幼虫時代を水の中で過ごす水生ホタルは10種ほどしかいない。
そもそも、水生ホタルは、陸上で一生を送る陸生ホタルが食べ物を求めて水中へ進出し、その環境に適応したと考えられている。
そして、ホタルといえば、みんな光ると思われているかもしれないが、実は成虫が光らない種もいる(幼虫はみんな光る)。
水性と陸生、光るものと光らないもの。
いろいろなホタルがいるのだ。
日本に生息する水性ホタルは、ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマホタルの3種。
このうち、成虫がよく光るのが、ゲンジボタルとヘイケボタル。
ゲンジボタルは渓流や小川など流れのある所に、ヘイケボタルは湿地や水田など流れの少ない所に棲むといわれている。
◆ゲンジボタル
成虫は15〜17mmくらい
胸部に十文字模様
日本の固有種
◆ヘイケボタル
成虫は9〜11cmくらい
胸部に縦のライン
日本以外に東アジア、シベリアにも生息
ゲンジボタルの一生
◆卵時代
東京近郊では毎年7月頃、ゲンジボタルは水際のコケや草の根に卵を産む。
卵はぼうっと光り、その光は孵化に近づくにつれだんだん強くなる。
卵はおよそ1か月で孵化する。
◆幼虫時代
孵化した幼虫は、自ら速やかに水の中へ入っていく。
そして、10ヶ月ほどの間に5〜6回脱皮しながら水中で成長する。
冬の冷たい水の中でも冬眠しない。
主な食糧はカワニナという巻貝。
だから、その年のカワニナの数が、翌夏の成虫ホタルの数に影響する。
幼虫もまた、水の中で時々光る。
自らが光るからだろうか、ゲンジボタルの幼虫は外光を嫌い、水底の石の影でひっそりと暮らす。
4月中旬頃。
水温、気温、日長の条件が揃うと、最終齢に達した幼虫は、蛹になるため岸へ上がり始める。
上陸を開始するのは、必ず雨の日か、雨の後の夜。
幼虫は水面から頭を出して、雨が降っているかどうか確認するそうだ。想像するとかわいい。
上陸する時は全ての幼虫が光りながら歩き、次々と岸へ上がるというから、見てみたい。
◆蛹時代
岸へ上がった幼虫は、土の中に潜って蛹を作る。
20~40日かけて蛹になり、その後10日くらいで羽化を開始。
蛹もまた、昼夜を通して光り続ける。
◆成虫時代
蛹は羽化して成虫になる。
東京近郊でゲンジボタルの成虫が飛び始めるのは平均して毎年6/10頃、出現のピークは7/2頃。
だから、ホタルの見頃は夏至の日(6/21頃)の前後10日ずつくらいと覚えている。
(このタイミングは、ホタルの幼虫が岸へ上陸した日からの「有効積算温度」(毎日の平均気温を足し上げたもの)に左右されるという。
春から初夏にかけて暖かい日が多ければ、ホタルが飛び始めるのも早いということだ。)
成虫は口が退化して、ものを食べることができない。
幼虫時代に蓄えた栄養分と、草の葉に溜まった夜露などの水分だけを摂って生きる。
ゲンジボタルの成虫の寿命はおよそ二週間。
この間に、オスとメスが発光することによってパートナーを見つけ、子孫を残し、一生を終える。
ゲンジボタルの生活史カレンダー(東京近郊)
水際、水の中、土の中で暮らすため、ゲンジボタルはこれらの全ての環境が揃わないと生きていけない。
きれいな水辺の環境がどんどん失われゆく現代。
かつて、陸生ホタルが水中へ進出して水辺の暮らしに適応した水生ホタルだが、今となっては、自ら生きるハードルを上げてしまった感が否めない。
ホタルの光
ホタルの発光は、「ルシフェリン」という発光物質の化学反応によるもの。
化学反応で発生するエネルギーの実に98%を光として放出し、熱はほとんど出さないため、「冷光」とも呼ばれる。
そのクールな黄緑色の光は、夏によく合う。
成虫が光る種のホタルは、その発光明減によりオスとメスがコミュニケーションを取って、パートナーを見つけると考えられている。
ホタルに外から光を当てると、2~3日の間、自ら光れなくなるという研究報告があるそうだ。
二週間の寿命の中での2~3日は大きい。
ホタルを見る時は、光を当ててしまわないように気をつけなければいけない。
ホタルの発光明減のパターンは、種や地方によって違う。
◆ゲンジボタル(関東)
平均して4秒に1回程度、強く光る。
◆ゲンジボタル(関西)
平均して2秒に1回程度、強く光る。
◆ヘイケボタル
平均して1秒に1回程度、不規則に弱く光る。
西日本のゲンジボタルのオスは、集団の全員が同じタイミングで光る「集団同期明減」をする。
私はまだ見たことがないが、動物写真家の小原玲さんという方が貴重な動画をアップされていた。
これを実際に見たら、感動するだろうな。
ところで、集団同期明減をして、ホタルのオスとメスの会話は成り立つのだろうか?
オスたちは、集団でメスに呼びかけているのだろうか?
それとも、何か別の意味があるのだろうか?
ホタルの発光については、まだ分かっていないことも多い。
奥が深いんだ。
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古くからホタルが人々に愛でられてきた理由の一つは、やはり、美しく光るからだろう。
その生息地の減少には全く追いつかないが、今、ささやかながらも、各地でホタルの保護活動が行われている。
ホタルの発光は、結果的に、人間に愛でられ保護されるという、ホタルの生存戦略につながるのかもしれない。