ビジョンとミッションはどっちが先に来るのか?
授業でビジョン、ミッション、バリューを作ってみましょうというのがありました。
別の授業でまずやり、そこでは架空の会社を示され作りました。ビジョンが先とかミッションが先とか言われませんでしたので、わたしはミッションを先、ビジョンを次に作りました。
今やっている授業では非常にさらっと触れられましたが、ビジョン、ミッション、バリューの順番でした。
授業のかなり最初の方で、グループワークで対象企業のビジョン、ミッションを分析することというお題でした。
われわれのグループはACE Hardwareという、ホームデポ、イケアみたいな会社を選び、そこのビジョン、ミッションがなっていなかったので変更案を作りました。
ちなみにACE HarwareもVision、Missionの順番で書かれています。
BtoCであれば、顧客へのアプローチが欠かせませんし、顧客の心や生活を豊かにすること、社会を豊かにすることといった視点を入れたいです。
この会社はベクトルが自分に向いてしまっているので、そこは直しました。
インドネシアの上場企業に対し偉そうですいません。
念のため言いますが、わたしはACE Hardwareは好きで何度も買い物していますし、売られているものを定点観測のために観察しに行きもします。インドネシアを代表する小売企業なので、インドネシアの現状を把握するベンチマークにちょうどいいのです。
話を元に戻し、授業としてはそれで終わりだったのですが、わたしはどっちが先なのか、なぜ会社によって順番が違うのかが気になりました。
実は前職で同じような議論になったことがあり、結局考え方次第らしいよで終わってしまったのです。
わたしがなぜミッション、ビジョンの順番にこだわるのか
わたしは自分のミッションとビジョンと行動基準(バリュー)を20年前の最初のジャカルタ駐在の時に作りました。その時にいろいろと調べて自分なりの考えがあるのです。
ちょっと前の「パーパス経営」ブームみたいな、ミッション、ビジョンを作りましょうというブームがありました。
ちょうどインドネシア法人の代表になってしばらくしたタイミングで、自分の軸がブレブレでは困ると思い、原理原則的なものが必要だと思ったのです。
これだと思いました。
ミッション:不変的な価値観。こういう世の中になっていてほしい、なるべきだというようなもの。それを実現するために自分が存在している意味がある。
ビジョン:ミッションを遂行するためにやらなければいけない、あるいは変わらなければならない部分で、期限があるもの。言い換えれば変わりうるものです。手段といってもよいかもしれません。あるべき自分の姿です。
バリュー:行動基準、価値基準。ミッション、ビジョンとかぶる印象がありますが、わたしの中では時間軸はミッションに近く不変、具体的なところはビジョンに近くビジョンよりもっと細かいというイメージです。
ACE Hardwareのビジョン、ミッションを考えるときに参考にしたイケアはビジョン+バリューのみ、ホームデポはバリューのみです。
ちなみにニトリはミッションの代わりにロマンという言葉を使い、ロマン+ビジョンという構成です。
三菱自動車はビジョン、ミッションの順番
わたしの前職である三菱自動車はビジョン、ミッション、行動規範の順番だったのです。
会社のビジョン、ミッションを本部のビジョン、ミッションに落とし込み、それを部のビジョン、ミッションに落とし込むことになり、感覚がずれているためとても作りにくかったです。
ビジョン=作りたい社会、ミッション=ビジョンを実現する方法という、わたしの理解とは逆の解釈でしたが、わたしのなかのミッション、ビジョンの解釈と入れ替えてやりました。
こうなったのはおそらく三菱三綱領が強く影響したのだろうと思います。
これは一般的な定義に当てはめればバリューにあたるものというのがわたしの解釈です。
- 所期奉公
- 処事光明
- 立業貿易
この三綱領を三菱グループの誰かが「ビジョン」としたのではないかというのがわたしの仮説です。
そうなると、一番重要な経営理念である三綱領を下に持ってくるわけにはいかないので、ビジョンが上に来たのだろう、というわけです。
伊藤忠商事でいえば経営理念「三方よし」がこれにあたり、伊藤忠はミッションの根本にあるものという定義をしています。
伊藤忠はミッション+バリューです。ビジョンはありません。
わたしの前々職のシャープは、経営理念と経営信条です。経営信条は内容を見れば行動指針そのものとなっています。経営理念はまさにバリューです。これは鴻海が来ても変わることはなく、永久に変わらないと思います。
「目のつけどころがシャープ」とか、「Be Original.」はブランドメッセージにあたります。三菱自動車だと「Drive your Ambition」です。
結論:ビジョン、ミッション、バリューはやめたらどうか
日本人に一番しっくりくるのは経営理念です。それから経営理念に基づく行動指針。この二つだけでビジョン、ミッション、バリューは十分にカバーできます。
よく分からず、人によって解釈が変わるような英語を使って、無理に当てはめる必要はまったくありません。
ミッション・インポッシブルという映画がありますが、あの英語のミッションってアサインメントに近い任務という概念で使っているじゃないかとか。ビジョンの時間的な概念は会社の寿命と同じくらい長い可能性だってあるし、そうなるとミッションより時間軸が長い場合だってあるよねとか。
共通の概念を確立できていない外国語を使う難しさです。そこで余計なワンステップが必要になります。
経営理念、行動指針を英語に訳せと言われればValueです、と言えばよいと思います。
無理やりはめ込んでみても、しっくりこないので、そんなものが従業員に浸透するはずがありません。
誰も覚えていないビジョン、ミッションなんて作る意味ないです。
だいたいビジョンはよく変わるイメージです。時代に合わなくなってきたからという理由で、経営陣が変わると変わる可能性大です。
組織変更や組織の名称が変わるのと同じ意味合いというのがわたしの認識です。
たしかに、ビジョンというのは手段でしかないので、世の中が環境やテクノロジーにより変われば、ふさわしくなくなるでしょう。
なので、中期経営計画を発表するときに、今後5年間はこのビジョンで行きますと発表すればいいと思います。
ビジョンを経営理念や行動指針と並べて記載する必要はありません。時間軸がまったく違います。経営理念や行動指針は本来変わらないものだからです。
わたしは三菱三綱領は大好きですし、シャープの経営理念、経営信条も大好きでまだ覚えています。
日本アジア投資の経営理念は覚えていませんが、経営理念に非常に近い概念でいつもみなが口にする言葉は「on the same boat」でした。これが経営理念と思います。
ベンチャーキャピタルの精神を表す言葉として習いました。起業家と投資家は同じ船に乗り、成功も失敗もともに分かち合うという精神です。
つい最近もOB会の掲示板で、正しくはinなのかonなのか、onにするとどういう意味になるのかという議論が行われていました。30年前から同じです。年をとっても皆変わらないなと思いました。
好き勝手なことを書いてしまいました。
人によって様々な意見があると思いますので、一人の意見として「ふーんそうなんだね。わたしは別の意見だけどね。」あるいは「そんなのどっちだっていいんだよ!」くらいに受け取っていただければ幸いです。