【タイ旅！】～金なし・コネなし・実績なしの三七歳フリーターがタイで絵本作家になるまで～
タイ旅！
#1, プロローグ
成田空港を出発した１機の飛行機が、夕暮れ時の空の中をするすると上っていく。
眼下に広がる１月の寒々とした田畑。
国道をのんびりと走る小さな軽トラックのシルエットが小さくなって消えていく。
飛行機はぐんぐんと高度を上げる。
山を越え、千葉の市街地がくっきりと見える。
東京湾。夕焼け色の海の上にいく艘ものタンカーが浮かんでいる。
ポツポツと灯りが灯り始めた東京の街。
いつもならばあの灯りの中で暮らしているはずの街。
今ははるか上空から、幽体離脱をしたみたいにそれを眺めている。
夜がやってくる。
ノスタルジックな感傷からふと我に帰り、機内を見渡す。
がらんとした広い機内の中にはちらほらと数名の乗客がいるばかり。
２０２２年１月。
日本ではまだまだ新型コロナウイルスが猛威を振るい、何度目かの緊急事態宣言も噂されていた。
とてもではないが旅行ムードどころではない。
ましてや海外なんてもってのほか。
何で今？
何で海外？
周りからはよく聞かれたものである。
分からない。
でも、だからといって、この旅を止める訳にはいかなかった。
気がつけば私は今年で３７歳。
古代エジプトだったらとっくに寿命が尽きていてもおかしくない年齢である。（古代エジプトの平均寿命は２０年弱）
一応、絵本作家を名乗ってはいたが、実際の生活はアルバイトをしながら、月収１３万円でコツコツと絵本を描く日々。
（つまり絵本作家という名のフリーター）
持ち込みを繰り返すも、出版の目処は全く立たない。
正直、行き詰まっていた。
かといって今更引き返す道も無い。
このままではいかん！と覚悟を決め、カバンに画材と絵本のデータを詰め、タイ行きの格安航空券を買った。
全財産は３０万円。
タイムリミットは９０日間。（三ヶ月間のツーリストシングルビザを取得）
頼るアテも無く、コネも無く。
ここで人生ひっくり返さなければ後もない。
無い無い尽くしの絵本作家まえだゆうき。
今まさに、人生を賭けた大勝負がタイを舞台に始まろうとしていた。
タイ旅！
～金なし・コネなし・実績なしの三七歳フリーターがタイで絵本作家になるまで～
これから始まる冒険譚、一体どこに行くのやら。
【タイ旅！】#2,ロイヤルラタナコシンはこちら！
絵本作家まえだゆうきがタイで絵本を出版するまでの、１００％リアルなドキュメンタリー紀行文。
タイ旅！
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