冒険の扉が開く時
タイ旅!
#2, ロイヤルラタナコシン
目を覚ますと、見知らぬ天井にくっついた見知らぬファンが、窓から吹き込む風に吹かれてゆっくり回転している。
ベッドの上で大きく伸びをして、しばらくゴロゴロしてから起き上がる。
真っ白な、パリッとしたホテルのシーツとふかふかの枕。
ペットボトルの水を飲み、窓から身を乗り出す。
今日は快晴。
1月だというのにタイの日差しはジリジリと肌に照りつける。
街に出たい気持ちがウズウズと芽生えてきたけれども、今日から1週間は隔離期間。(隔離中はホテルの部屋からは出てはいけない)
さて何をしようかとぼんやり考えていると、けたたましくフロントからの内線が鳴った。
「ハロー」
「ハロー、グッドモーニング、ミスター。昨日はよく眠れた?」
「ありがとう、おかげでぐっすりだったよ」
「グッド!そうそう、昨日のATK(コロナ検査)の結果だけど、陰性だったよ。おめでとう!
というわけで、今日から外出してもいいわけだけれども、一応、行き先はフロントに告げるようにしてね」
「うんうん、分かった。ちゃんとフロントには言うようにするよ。
…って何?え!?外出していいの!?」
「ワッツ?何言ってるの?今説明したばかりじゃない。まぁ、とにかくそういう事だから、バーイ」
ガチャリ。
一方的に切れた受話器。しばし一人で考える。
え?本当に外出していいの?
日本にいる間、散々ネットで情報を集めて、隔離期間の事調べて。
政府公認のお高いホテル一週間予約して。(1泊8千円)
毎日部屋で検温とATKチェックやると聞いて、身構えていたけれども。
この拍子抜け感たるや…。
隔離とは一体…。
まぁ…、でも、考え方によっては、1週間部屋に缶詰になるよりはいいか。
気を取り直し、カバンから撮影用のカメラを取り出して部屋を出た。
思った通りには大抵行かないのが旅の鉄則。
久しぶりの旅の感覚が、体の奥からじんわり蘇ってきた。
私が泊まったロイヤルタカナコシンホテルは、さすが政府公認のホテルというだけあって、天井も高いし、広いし、壁も白い。
いかにもホテル!といった感じの赤いふかふかのカーペットが敷かれていて、壁には風景画が飾ってある。
ロビーに降りると、制服を着たドアマンがうやうやしくドアを開け閉めしてくれる。(隔離でもなければまず泊まらないホテルだ)
辿々しいタイ語で、早速ドアマンに道を尋ねる事にした。
「サワディカッ! ポム ヤーク スー アニ!(こんにちは、私はこれが買いたいです)」
スケッチブックに書いた、パンツと靴下の絵を見せると、ドアマンは理解したように大きく頷いて、ガラス戸の先に広がる街を指差した。
「オーケー、オーケー、トロンパイ(まっすぐだ)」
「トロンパイ?(まっすぐだね?)」
「トロンパイ(まっすぐだ)」
そうしてドアマンはうやうやしくホテルのガラス扉を開けてくれた。
ギィィ…。
1月の照りつける日差しが目の前に広がっている。
いよいよ未知なる土地での冒険が始まる!
【タイ旅!】#3,ロイヤルラタナコシン②はこちら!
【タイ旅!】#1,プロローグはこちら!
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