「大学教授の資格」に関する本のレビュー
この記事の補足です。
今回はタイトル通り、松野弘氏の「大学教授の資格」という本に関するレビュー。
まずこれ。2010年発行。
前回もレビューしたけど、実際に社会人から大学教授になった人の事例は沢山取り上げられているけど、経歴がHPで確認できる範囲だから、実際にその人が何をしたのかがわからない。その部分が欲求不満でした。
そして次作。2014年発行。
こちらは実際に社会人から大学のポストを得た人11人にアンケートをとって、その内容が書かれているので、その部分がかなり参考になります。
筆者の松野氏は社会人から大学教員になった人。ご自身の経緯については書かれていないんだけど、できればその話も聞きたいです。
2冊を通して松野氏が主張されているのは、社会人から大学教員になる場合でもちゃんと研究能力があって論文を書いていることが最低条件だ、ということ。誰でも気軽に大学教員として採用すべきではない、と強調されている。
以下は「実践応用編」からの引用。池上彰氏が大学教授になったことについての言及です。
私のように「若くない」ポスト・ドクターも専任教員に就職できていない現状があるので、よく書いてくれた、という感じ。
松野氏も前回記事にした鷲田小彌太氏も基本的に言っていることは同じ。大学教員たる者、研究して論文を書く能力がないとその資格がない、ということです。鷲田氏は大卒後そのまま大学院に進むという大学教授としては王道を行った人ですが、松野氏は社会人から大学教授になったからこそ、誰でも大学教授になれるという風潮に対して批判的な感じが強く出ているのではないでしょうか。
ちなみに前回の記事はこれ。
そういう訳で、大学教授になりたい社会人がもし仮に一冊だけ、あるいは最初の一冊として何を選ぶか、となると、この松野氏の「実践応用編」、あるいは次の本をお勧めします。
松野氏はもう一冊出されています。内容的には「実践応用編」と同じ感じです。全く同じ原稿をかなり(ほぼ全部?)流用されています。2019年発行なので、特に大学教員の需給バランスに関する情報はアップデートされています。
先に刊行された「実践応用編」について、こちらの本の中で全く触れられていないのは不誠実だと思います。
このレビュー、いつまで続くのかという感じが自分でもしてきていますが、多分もう1回やります。同じような内容の本を何冊も読んで、さすがに飽きてきました(苦笑)。研究者の素養として「たくさん本を読む」ことは重要ですから、そのトレーニングだと思いましょう。