岸田総理はEU代表から国境開放を迫られていた
岸田総理が5月12日に開催された「第28回日EU定期首脳協議」で、欧州理事会議長と欧州委員会委員長から日本の入国規制を撤廃するよう求められていたことが外務省のHPに掲載されている。
第28回日EU定期首脳協議
EUは現在、国境措置が新型コロナの感染防止に役立っていない、という立場にあり、日本もそれに同意する、と宣言したのだ。
ここで重要なのは、日本がEU諸国に対するビザ免除措置を回復させなければ、EUが日本に対して今現在継続させているビザ免除措置を中止することを考えているようなことだ。
仮にEU諸国が日本人に対するビザ免除措置を停止すると、ビザ無しで入国できる国の数を基準に「世界最強のパスポート」と言われる日本のパスポートの価値を毀損し、それが国民に知れると内閣支持率が下がる、と岸田総理が考えても不思議ではない。
EUが相互主義のもとで日本に対し入国規制を緩和させることを求めていたことは、これまでのEUの政策から見て取れる。
以前私が「アゴラ」に掲載した記事を参照頂きたい。
EUの「グリーンリスト」に日本が復帰しないのは何故?
EUはコロナ対策のなかで「グリーンリスト」あるいは「ホワイトリスト」と呼ばれる「無条件で入国をさせることを推奨する国のリスト」を作成してきた。リストは2週間ごとに見直され、リスト掲載国からの入国者については、ワクチン接種や入国前のPCR検査陰性証明書などを求めることなく入国させることを加盟国に推奨していた。私も2020年11月に何の証明書も持たず入国時の検査も受けることなく、リストに準拠した入国規制を取っていたフィンランドに入国し北欧旅行をしてきた。
日本は感染度に応じてこのリストに掲載、削除、再掲載を繰り返してきた。2021年夏に起こった感染拡大に伴いリストから削除された後、秋には感染者がほぼゼロになったにも関わらず、リストに再度掲載されることなく現在に至っている。これは「相互主義」を理由にしているとしか考えられない。
ちなみにこのリストは2022年1月17日以降、現在まで更新されていない。ずっとリストに掲載されていたオーストラリアなどが外れる所までは更新されたが、その後世界最悪の感染度になったニュージーランドや韓国、香港、台湾はリストから削除されず、今でもリストに従って国境措置を取っている国へは、これらの国の在住者であれば何の証明書もなく入国することができる状態だ。
EU側は現在、国境措置は全てなくす方向で政策を進めており、このリストは意味がなくなっているから廃止する方向で検討されている。
ETC Calls on EU to Abolish List of Epidemiologically Safe Third Countries
結局、日本の政策は国内世論を変えるより外圧に頼る方が手っ取り早いということが、この一件でもわかる気がした。
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