脱炭素からの撤退が始まった??
私は日頃、Googleニュースをスマホやパソコンで見ている。Googleのいいところは、自身の趣味趣向を履歴から分析し、よりそれにフィットしたニュースをピックアップしてくれるので、最新情報を得るには利点がある。
(もちろん、その裏もあるわけで個人情報が活用されている・・・そういうことについてはまた機会あれば書いてみたい)
さて、キヤノングローバル戦略研究所サイトから下記情報を紹介する。
レポート エネルギー・環境 2024.03.15
脱炭素からの撤退が始まった
これは、Net Zero Watchの許可を得て「The Retreat from Net Zero」と題された報告を翻訳されたものだとのこと。
サイトには序文の「はじめに」の部分だけ掲載されているが、邦訳全文は上記リンクをクリックしてご覧ください。
この「はじめに」の部分だけをとっても、筆者は『ネットゼロ目標を撤回した国はまだないが、各国政府が目標達成の非現実性とコストの高さに気づき、中間目標の多くが緩和され始めている。強硬な約束のように見えたものは、むしろ弱い意図へと変わりつつある。』と書いている。
いざ、日本はどうだろうか?
日本国として『2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。』と、環境省サイト「脱炭素ポータル」にて掲載しています。
カーボンニュートラルを目指すために日本はどんな政策をとっているのだろうか?この辺りは、経済産業省のサイトを見ていこう。
経済産業省:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
絵で示されているが、左下から『海外から』という文字があり、水素やアンモニアが脱炭素の切り札ということなのだろう。その次に地下貯留のCCSとあるが、これも日本には場所がないので諸外国に頼るのだろうと思われる。太陽光発電や風力発電は輸入物ばかりだし、ゼロカーボン・スチールなんてどうやってやるのか?水素やアンモニアを使うのだろうか?燃料電池車の水素は水素ステーションで作られるのかもしれないが今のところは都市ガス等から誘導される水素がほとんど。EVと言われる電動自動車については、どこから電力を持ってくるのか?FCトラックやEVトラックもどうするの?バイオマス発電も色々あるが、輸入ペレットなどを燃料としていたら元も子もない・・・ハイブリッド電動航空機や水素航空機なんて実現するのかしら・・・みたいな絵になっている。
トドのつまり、石油・石炭、天然ガスの代わりに、水素やアンモニアを輸入してなんとか凌ごうということなのだろうか?
そんな中、ひょんなことからアンモニア供給に関する世界情勢について知ることに繋がった。
アンモニア供給に関する世界情勢
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これ、ディーゼル車の排ガス中に発生した窒素酸化物を、アンモニアで分解して窒素と水に変えて大気汚染を軽減する機構とその液体「アドブルー(AdBlue)」に関する解説でした。
「アドブルー(AdBlue)」は、32.5%の尿素水であり、ドイツ自動車工業会(VDA)による登録商標であるとのこと。その作用原理は、WikipediaのAdBlueの解説を参照下さい。
尿素とは、アンモニア2分子からなる。
このアンモニア供給の重要な拠点が中国にあったため米中貿易摩擦の狭間で供給が滞った2021年の状況である。
尿素水不足問題、転売横行で現場が混乱 増産急ぐあまり「農業用」使用の懸念も 2021/12/24(金) 8:12
韓国は対岸の火事ではない 日本でも尿素水不足で「物流が止まる」の声
2021/12/7(火) 7:44
ディーゼル車向け尿素水不足問題、1月中に正常化へ 経産省
2021年12月27日(月)09時38分
ディーゼル向け尿素水不足が深刻化 国内トラック9割の運行に懸念
2022年1月06日
この辺りの騒ぎを実感することは自身にはなかったが、大騒ぎだったのだろう。ことの発端は、米中貿易摩擦からオーストラリアが中国への石炭輸出を制限し、その煽りを受けて中国の尿素製造工場が止まり、日本も韓国もその他関連諸国に影響したということ。特に韓国は自国内での製造を廃止してしまっていたためにモロ煽りを受けてしまったということに・・・オーストラリアでは製造工場を建設したので、日本はそこからアンモニアを持ってくればいいのだぁ〜という反応なのかもしれない・・・
それでいいのでしょうか??
上に4つニュースを掲載したけれど、最初のニュースでは『農業用』尿素を「アドブルー(AdBlue)」製造に転用しているのではという懸念であったが、そもそも尿素やアンモニアは農業を支える肥料として世界的需要があり、ちょっとやそっとでは動かしにくいボリュームが流通している。それにもかかわらず、カーボンニュートラルのために増産したアンモニアをエネルギーのために輸入するという日本のわがままが許されるのだろうか?それによって、アンモニア・尿素市場の高騰が発生したら日本はどう責任を取るのだろうか?
今回は、ひょんなことからアンモニア・尿素に関する情報を得ることができた。冒頭に戻ろう・・・そろそろ脱炭素やカーボンニュートラルに関する政策は見直しが必要ではなかろうか?そもそも声掛けだけで、どこも本気でやろうとしていないし、日本の政策を見てもその辺りが透けて見える。企業や国民がそれに対して事業転換してみたり追加投資をしたり税金を多く取られたり・・・近年、ニュースにならないことがない気候変動については、もっと正確な分析が必要なのではないだろうか?その上で、無理な脱炭素やカーボンニュートラルを目指すのではなく、行きすぎたライフスタイルを見直し、世界各国が安心して暮らせる時代を作っていくべきだと想像する。
ウクライナ情勢は悲しいことばかりだけれど、それもアメリカ+欧州vsロシアの構図に飲み込まれた一国の惨状であり、脱炭素・カーボンニュートラル側面から見れば、甚大な二酸化炭素排出につながる戦争を継続させ、かつそこへ供給する武器などの製造工場が猛烈に稼働をしてまた甚大な二酸化炭素排出をしているのだからどうしようもない・・・とも言える。
日本は、広大な島国だけれども、明治からの電力網は再編されておらず戦後高度成長期を支えた巨大な発電所から電力需要までの送電網もツギハギだらけ。配送電ロスは5%に上り、これをどうかすることで大きな二酸化炭素排出量低減となる。また、発電所において40%程度は熱として大気放出をしている。この熱利用も含めて産業再編を行えば、大きなエネルギーロス回避へとつながる。諸外国からの水素・アンモニア輸入構想と同時並行に国内で出来ることをもっと議論いただきたいものである。
今日はここまで。