文化は辺境に残る。函館の立ち食い寿司に、かつての江戸の立ち食い寿司の面影を見た
函館のシゲちゃん寿司に行ってきた。人生2回目の立ち食い寿司である。
ぼくは生まれてこの方、寿司はベルトコンベアの乗って流れてくるものだと思ってる。
だから、ちょっと立ち食いスタイルのお店に入った時は緊張した。
しかし、函館のシゲちゃん寿司は非常にアットホーム。6人も入ればいっぱいになる店内に、優しい大将と奥さんが接客してくれる。
「これがオススメですよ」「狭くないですか?」「食べにくかったら、皿を移動させてくださいね」と言ってくれた。
回転寿司のタッチパネルのような機械的なスタイルでもない。高級寿司店に入ったような緊張感を味わなくていい。
何よりお寿司が美味しい。今回はウニやトロが入ってるおまかせコースを頼んでみた。
ミョウバンを使っていない甘いウニ。口の中で一瞬で消える大トロ。道南名産ガゴメ昆布巻きもあって、ネバネバした食感が美味しかった。
おまかせを頼んだ後は、まだお腹に余裕があったので、単品でお寿司を頼んだ。
値段も1巻あたり129〜432円。回転寿司は2巻出てくるが、シゲちゃん寿司は1巻だ。
しかし、価格帯が回転寿司と変わらないので、気軽に頼める。素晴らしい。
出てきた後は、アットホームな雰囲気に癒され、一緒に行った人と「本当に行ってよかったね」と語り合った。
ふと、「文化は辺境に残る」という言葉をぼんやりと思い浮かべた。
いまの握り寿司は江戸時代末期の江戸で生まれたそうだ。それから対面のカウンター寿司になり、回転寿司の時代になって、隆盛を極めている。
最近のニュースによると、ここ10年(2012〜2022)で800軒も回転寿司店は全国に増えたそうだ。
タッチパネルで注文し、ベルトコンベアで飛んでくる回転寿司はラクでハイテクで面白い。
しかし、最近は会計までセルフレジだ。うっかり一人でスシローに行ったら、誰ともしゃべらずにお店から出てくる可能性がある。
でも「東京に気軽な値段でゆっくり会話できる立ち食い寿司で作ってくれ」と言われても、無理な注文である。家賃やお客の数が違う。
(最近は東京でも立ち食い寿司が密かにブームになりつつあるらしい。でも東京の忙しさでは、アットホームな空間までは再現できないだろう)
だから、日本の地方に旅行する面白さは、昔の日本を疑似体験できるところにあると思うのだ。
1923年に関東大震災により、江戸前寿司の職人は全国へ散らばった。
かつて東京にもあっただろう会話を楽しめる庶民の江戸前寿司。もう現代の東京には絶滅危惧種かもしれない。
けれど、北海道の函館まで行けば気軽に楽しめる。
他にも辺境に昔の中央の文化が残る例はいくつもある。
台湾の地方や沖縄の離島に行けば、数百年前の昔ながらのつくりの家がまだ残っている。
でも、台湾の台北や沖縄本島にはほとんどない。
大陸のフランスや中国では、王様や皇帝が消えてしまった。
しかし、海を越えた辺境の英国や日本には皇室が、まだ残っている。
辺境のスケール感次第で、残される文化はさまざまだ。
田舎というと聞こえが悪い。しかし、失われた中央の文化を楽しめるのは、なかなか気づかれない田舎の魅力である。
また行きたいと思えるおすすめのお店だっった。
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