会社なんてとっとと潰せ(続編というか補足)
会社はどんどん潰れるのが健全な社会
会社は資本主義社会の生活を円滑に、豊かにするために必要な道具です。その経済活動の結果、上がった利益の一部を税金として納め、公共のインフラを維持しています。
そして、社会を進歩させるための技術やアイデアを持つ人に対して、すでに成功している人たちが資金や人脈などを支援する。それがベンチャー起業家と資本家(投資家)です。
そんななかで、利益が出ない、特別な技術も将来的なビジョンもなく、過去の借り入れで何とか生きながらえている。中小企業にはそんな会社が想像以上に多く、負債が資産を上回る「債務超過」に陥っている先も、実に中小企業の40%近くに達すると言います。
前回「会社なんてとっとと潰せ」と書きました。私はM&A事業者として、上記のようないわゆる「ゾンビ企業」をM&Aで存続させるというのは無理があるし、そんなことをする必要はないと思っています。
この記事にも書きましたが、そもそも後継者が見つからないのは、社長が高齢になったからとか、人気がない業種だからといった理由ではありません。「現状儲かってなくて、これからもその見込みがないから」です。
その中でも、光る技術があるとか、儲かっている部門があるなら、手の打ちようはあります。その事業や技術だけを切り出して、別会社(第二会社)を作るとか、その部分だけを譲渡して、その譲渡収益で負債を返して清算するとか。負債が大きな場合は、バンクミーティングを開いて負債をカットしてもらった上でスポンサーを見つける場合もあります。いずれにしても、光る技術や儲かってる部門があれば、の話です。
しかし、それらがない会社の場合は躊躇なく潰せばいいと私は思っています。多くは債務超過ですから、清算しても負債が残る状態です。個人保証してしまっている場合は、その負債を個人で引き継ぐことになりますが、とても返せない場合、会社だけでなく個人も法的に破産処理することになります。
多くの人は、それを何となく恐れているのです。あるいは「借りたものは返さないと」という倫理観かもしれません。あるいは、「社員たちが路頭に迷う」という気持ちもあるかもしれません。気持ちはわかりますが、会社の経営である以上、その個人の価値観とはある程度切り離さないと、共倒れになってしまいます。
共倒れというのは、破産してしまうことを出しているのではありません。破産というのは法的な救済処置で、再起を促す制度です。共倒れとは、それを恐れてズルズルと引きずってしまい、心身ともに疲弊してしまうことを指します。
廃業数より起業数
「どんどん潰せばいい」とは極端な言い方ですが、社会のダイナミズムを取り戻すには、会社を潰すことを恐れてはいけません。会社なんてハコは、ダメなら潰してまた作ればいいのです。上で書いたように、見込みがないのにダラダラ延命して、心身ともに疲弊するよりよほど健全です。
会社が経営難に陥った時、社長が心臓発作などで急死するケースが多いのはご存じでしょうか?それほど、経営難の時の経営者の心身には負荷がかかっています。私自身、会社の経営が思わしくない時に、危険を感じるレベルの心臓の不調で病院に行ったことがあります。その時、病院のベッドで点滴を受けながら「こういうことか」と実感したことを覚えています(そんな時はだいたい寝不足ですし)。
それ以上無理をして最悪の結果になったら、それこそ誰も幸せになりません。また、逆転ホームランを狙ってそれ以上無理をしても、逆にダメージが大きくなり、再起が難しくなります。
大切なのは撤退のタイミングです。最低資本金の制限もない今は、会社を作るのは誰でもできますが、閉じるのはそう単純ではありません。閉じ方も複数あり、それぞれにコストも労力もかかります。タイミングを逃してギリギリまで疲弊すると、それに費やすべきお金やエネルギーが残らないことにもなりかねません。
撤退時のコストは、撤退の方法や負債額などによって違いますが、数百万の手持ち資金は必要でしょう。起業よりも廃業の方がお金はかかるのです。廃業時の残務処理は時間もかかります。すべての取引先に通達して、「隠れ債権(廃業する会社の債務)」がないか確認する期間も必要です。
精神面だけでなく、物理的な余力も残しておかないと次に進めないことは、それだけ見てもわかると思います。余力のあるうちにとっとと潰して、次に進むべきなのです。
失敗経験こそ最大の学習
社会の活性化のために必要なのは起業数です。そして起業には失敗がつきものです。起業家がそれを恐れて小さくまとまると、社会全体の発展を阻害します(その意味で、大胆な挑戦を阻害する個人保証という制度には、私は真っ向から反対です)。
経営していれば日々学習の連続ですが、最大の学習は失敗した時です。「潰さない程度の失敗を積み重ねる」のが大切とよく言いますが、徹底のタイミングを冷静に見極め、見込みがない場合は早めに見切りをつけて、その経験を次に生かすべきなのです。その経験をした経営者は、誰よりも学習しているはずです。それができないのは、心身が疲弊しきってしまうまで引っ張ってしまった時です。
起業するくらいの人ですから、何かやりたいことがあったはずです。社会情勢は刻々と変わっていますが、それを見極めたうえで、今度はもう少し上手くできるでしょう。それには、年齢的な問題も大きく関係します。その意味でも、ダメならとっとと見切りをつけて、次に進みましょう。