自作FPVドローンで使うリポバッテリーにPSEマークが必要か確認してみた
リチウムイオン電池の「PSE 400Wh/L」問題とは?
~体積エネルギー容量をやさしく解説~
みなさんは「PSEマーク」という言葉を耳にしたことはありますか?
これは電気用品安全法(PSE法)に基づき、家電や電池製品などに付けられる安全性を示すマークです。
その中でも近年注目されているのが「リチウムイオン電池のPSE対象基準」。実は、リチウムイオン電池には「体積エネルギー容量(Wh/L)が400を超える場合」に届出が必要になるルールがあります。
今回は、この400Wh/Lの基準について、具体的な事例計算を交えながらわかりやすく解説していきます。
結論
結論を先に書くと、一般的なFPV自作ドローンで利用するような小型のリポバッテリーについては、PSEの取得は不要の様でしたので、要不要だけ知りたい方はここまでで大丈夫です。
PSE法におけるリチウムイオン電池の規定
電気用品安全法では、リチウムイオン電池を「特定電気用品以外の電気用品 No.341」に分類しており、その別表第二において「リチウムイオン蓄電池(単電池一個当たりの体積エネルギー密度が400Wh/L以上のものに限り、自動車用、原動機付自転車用、医療用機械器具用及び産業用機械器具用のものを除く。)」が届出対象になります。もしこの基準を超えるバッテリーを製造・輸入しようとする場合は、法令に基づいた手続きが必要になるのです。
特定電気用品以外の電気用品(341品目)一覧
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/non_specified_electrical.html
「体積エネルギー容量」って何?
体積エネルギー容量(Wh/L)とは、文字どおり「単位体積あたりのエネルギー量」を示す値です。
**Wh(ワットアワー)**は「電圧(V)×容量(Ah)」で求められるエネルギー量。
**L(リットル)**はバッテリー全体の体積。
これらを割り算することで「1リットルあたり何ワットアワーあるか?」を算出できる仕組みです。
もしこの値が400を超えると、「非常に高い密度でエネルギーを詰め込んでいる」ということになり、安全上の届出義務が生じるわけですね。
リチウムイオン電池の体積エネルギー容量を算出する式
バッテリーの体積エネルギー容量(Wh/L)は、以下の式で求められます。
$$
\frac{\text{電圧(V)} \times \text{容量(Ah)}}{\text{体積(L)}}
$$
具体的な事例計算
3セルのバッテリー例
公称電圧: 3.7V × 3 = 11.1V
サイズ(体積): たとえば 65×18×18.5 mm → 約 0.021645 L
容量: 530mAh, 660mAh などを想定
この条件で体積エネルギー容量を計算してみると、いずれも 300Wh/L 前後となり、400 に届きません。
以下は 530mAh の例です。
Wh/L = (11.1V × 0.53Ah) / 0.021645L ≈ 271.8 Wh/L < 400 Wh/L
結果、400Wh/L未満なので、PSE法上は届出不要と判断されます。
6セルのバッテリー例
公称電圧: 3.7V × 6 = 22.2V
サイズ(体積): 78×37×52 mm → 約 0.150072 L
容量: 1.55Ah などを想定
この場合も、計算では約 229Wh/L。やはり 400 には届かず、届出不要という結果になります。
Wh/L = (22.2V × 1.55Ah) / 0.150072L ≈ 229 Wh/L < 400 Wh/L
同じサイズで「400 Wh/L を超える」容量条件
体積 ( V_{\text{bat}} )(L)と電圧 ( V_{\text{cell}} )(V)が固定されているとき、
「400 Wh/L を超える」ための容量 ( C )(Ah)の目安は、以下の不等式で表せます。
$$
\frac{V_{\text{cell}} \times C}{V_{\text{bat}}} > 400
$$
両辺を変形すると、
$$
C > \frac{400 \times V_{\text{bat}}}{V_{\text{cell}}}
$$
例1:3.7V 公称電圧(1セルあたり)の 3セルパック (合計 11.1V)
外寸: たとえば 65 mm × 18 mm × 18.5 mm
体積: 約 21,645 mm³ → 21,645 ÷ 1,000,000 = 0.021645 L
合計電圧: 3.7V × 3 = 11.1V
上記条件で体積エネルギー容量が 400 Wh/L を超えるためには:
$$
C > \frac{400 \times 0.021645}{11.1}
$$
計算すると、
400 × 0.021645 = 8.658 8.658 ÷ 11.1 ≈ 0.78 Ah
つまり 約 0.78Ah(= 780mAh)以上 で 400 Wh/L を超えます。
例2:4.2V で計算(満充電電圧)した 3セルパック (合計 12.6V)
上と同じサイズ(0.021645 L)で、1セルあたり 4.2V を想定した合計電圧は 12.6V となります。
この場合、体積エネルギー容量が 400 Wh/L を超えるための容量は:
$$
C > \frac{400 \times 0.021645}{12.6}
$$
計算すると、
400 × 0.021645 = 8.658 8.658 ÷ 12.6 ≈ 0.686 Ah
つまり 約 0.686Ah(= 686mAh)以上 で 400 Wh/L を超えることになります。
まとめ
式:
[
\displaystyle
\text{Wh/L} = \frac{\text{電圧[V]} \times \text{容量[Ah]}}{\text{体積[L]}}
]400 Wh/L を超えるかどうかは、この式の値が 400 を上回るかで判断します。
同じ体積であれば、電圧が高いほど、同じ容量でも Wh/L は大きくなり、400 を超えやすくなります。
実際には、バッテリーパックの外形寸法・セル構造・内部保護回路などによって「実際の体積」が変動するため、最終的には 実測や 正確な設計仕様をもとに算出してください。
(注意)本資料はあくまで一般的な計算例です。実際の法的手続きや判定には、経済産業省や登録検査機関などの最新ガイドラインを必ずご参照ください。