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わたしの麒麟はここにいる

2020年の大河ドラマが「麒麟がくる」というタイトルだ。

また、2019年に続編が発売され大変話題となった小野不由美さん著「十二国記」のなかにも麒麟は大変重要な位置づけで登場している。

もっとも、多くの人がピンとくるのはビールメーカーの名前とラベルに描かれたイラストかもしれない。

ただ、わたしにとっての麒麟は、彫刻家の土屋仁応さんが制作される木像の麒麟だ。

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空想上の生物だとされている麒麟だけれど、土屋仁応さんが作り出される麒麟は、人がそばにいない静かな瞬間にだけ動いているように思う。

土屋仁応さんの作品を初めて目にしたのは、いつだったか覚えていない。

ただ、今村夏子さんの「こちらあみ子」の表紙に静かにたたずんでいるのが土屋さんの作品である。

他にも、小川洋子さんの「人質の朗読会」の表紙もそうだ。

何気なく書店で目にしていたのもあるだろう。2016年に横浜美術館で開催された「村上隆のスーパーフラット・コレクション」に土屋さんの作品も展示されていたという。この展覧会に足を運んでいたけれど、作品の記憶はおぼろげにしかない。展示品目が多岐にわたっていたことと、わたしの精神状態があまり良くなかったためだ。

土屋さんの作品は、写真で見る限りではかわいらしく、無垢な生物だという印象がある。しかし、実際に展示されている木像を見ると、背すじがほんの少しひやっとする感覚がある。恐怖というより畏怖という言葉がしっくりくる。

たとえば2019年に銀座のギャラリーで展示されていた竜。

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神秘的なたたずまいでありながら、どこか犯してはならない恐ろしさのようなものがうかがえる。

現在、神奈川県にある横須賀美術館で土屋仁応さんの作品が展示されている。

横須賀美術館の展示では八点の作品が並んでいて、見るものを静かに圧倒する。その中で一点だけ、写真撮影可の作品がある。

小鹿、というタイトルの作品だ。

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わたしの写真がヘタクソなのだけれど、この作品は本当に生きているように感じられる。白目に見えるところは、光の反射が起きている。目にはめ込まれている水晶が光を反射して、こちらをじっと見ているような、そんな感覚を覚えるのだ。

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じっと見ているのが、少し怖くなる。けれど、この瞳に吸い込まれるように、見つめずにはいられない。

土屋仁応さんの作品集も本当に素晴らしい。

何度見てもため息が出る。あまりにも好きすぎて、うまく説明できないのが辛い。実際に展示されている作品を見てほしい。

石川県の「ホテルウィングインターナショナルプレミアム金沢駅前」には

土屋仁応さんの作品がフロントに展示されている。このホテルに訪れたことはまだないのだけれど、土屋さんの作品を見るためだけにでも宿泊したいを考えている。

わたしの大きな夢(野望)として、小説を商業出版できるチャンスを得たときに、土屋仁応さんの作品を表紙に使用させていただく、というものがある。好きすぎて恐れ多いのだけれど。


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間詰ちひろ
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