ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳2020~【#まどか観劇記録2020 28/60】
歴史好きから刀剣乱舞にはまるということがよく分かった作品でした。
これは幕末好きには沼。。。
新選組好きの視点からも納得の丁寧な物語構成
私は新選組が好きなのですが(もちろん刀剣男士も好きですが)、新選組好きの視点から見ても見ごたえのある構成でした。
限られた上演時間の中でよくぞこのエピソードを描いてくれた、と称賛を送りたい。しかも、それぞれのエピソードの膨らませ方も素晴らしくて、制作陣の方々には頭が上がりません。
そして新選組側の近藤勇役(小柳心さん)、土方歳三役(高木トモユキさん)、沖田総司役(定本楓馬さん)のお三方がドンピシャすぎるのです。個人的に理想の新選組。ああ、素晴らしき。
このままずっと新選組愛について語ってもよいのですが、本題に行きつかないうちに文字数が増えそうなので話を戻します。
生死を共にした刀目線の語り口
私は刀剣乱舞のゲームをやっていませんし、全ての作品を見ているわけではないので、あくまで現時点での私の理解なのですが、刀剣乱舞の世界は、もともと刀だった存在が人の形をとり、考え、悩み、人格を持つようになったということ。そして、彼らの使命は、歴史を改ざんしようとする歴史修正主義者から正当な歴史を守ること、です。
作中でも触れられていますが、刀にとって幕末は特別な時代です。そして、新選組も特別な存在です。つまり、幕末は刀が武器として用いられた最後の時代であり、銃へと移行していく中、最後まで刀に、武士としての誇りである刀にこだわり続けたのが新選組だからです。
かつての持ち主のことを刀は主と言います。明日の命はあるのかという毎日の中で生死を共にした刀です。刀の生涯は人間よりもずっとずっと長いはずだけれど、それだけの日々を過ごしたことは刀の側にとっても特別ということで、刀剣男士からかつての主たちへの想いが痛いくらいに伝わってきます。
しかもそれが、幕末の新選組となれば、想いも相当なものでしょう。
そもそも新選組の生き様、悲運は観客としても涙なしには見られないのです。「もし彼らが生きていれば」「もし沖田が結核にならなければ」歴史にifはないと知りながらも考えざるを得ないほど、新選組という存在はそれだけでドラマです。
そこに、かつての主を見守る刀剣男士たちの想いが重なる。
想いと相反する使命の残酷さ
しかし、刀剣男士たちの使命は歴史を変えさせないこと。つまり、歴史上で死ぬべきタイミングで新選組の誰かが生きてしまうことは許されないのです。
沖田の病気が治る、近藤が処刑されない、そんな歴史があったら。誰だって大切な人には少しでも長く生きていてほしい。そんなifを考えてしまうものの、もしそれが現実になってしまってはいけません。正しい歴史に戻すため、刀剣男士たちには元の主を見殺しにする、もしくは、自らの手で殺す、必要があります。なんと残酷なことか。
誰よりも大切に、誰よりも見守っていたい存在を己の手にかけなければいけない使命。この残酷な悲しさが刀剣乱舞の物語に更に感動を呼ぶのではないかと思いました。
残酷すぎるこの構成。刀たちの視線を取り込んだこと、そして歴史を変えないという使命を与えたこと。そもそもの刀剣乱舞の世界のこの設定がどれだけすごいことか。感動の涙と共に身をもって体験しました。
そして、刀剣男士たちはかつての主たちに似ているのですよね。考え方、身なり、そして、主と彼らの間にしかわからないだろうというエピソードのかけらが垣間見えたりして。
観客は歴史上の人物を胸に、その生き写しのような刀剣たちに、その幸せを願い、想いを託す。
よくこの世界を生み出した人がいたな、と、「刀剣乱舞」の世界観のすばらしさに脱帽です。
二部の圧倒的なエンタメ性
そして相変わらずの2部との温度差には、何度観劇してもなんだか笑いそうになってしまう。
休憩25分では決して戻れない悲しみや感動を1部で与えておいて、2部は最初から圧倒的なエンタメとして迫ってきます。(まだ心の準備が…!といつもなる)
ダンスあり、歌あり、スタイリッシュな衣装や早着替えもあり。更に今回は新選組メンバーによる太鼓演奏もあり。盛りだくさんです。
かつて日常的に殺し合いが行われ、それぞれの矜持を胸に戦い続けた人がいた時代が確実にあったのです。今は多くの人が明日の命の心配をせずに過ごせるようになりましたが、なんだかその平和がうれしくなるようなそんな2部でした。
そして、2020年の~幕末天狼傳~は最初の東京公演、京都、神戸公演がコロナによって中止に追い込まれ、ようやく再開できた東京凱旋公演でした。
その最後にそれぞれの刀剣男士たちから発せられた挨拶の言葉、しみじみと感じるものがありました。
コロナ禍でもそれぞれにまっすぐに生きられたらと思うメッセージでした。
充実の各配信あり
ちなみに本日(11/23)の千秋楽2公演ともライブ配信あり。再ライブ配信、ディレイ配信で11/30(月)までは、自宅からでもこの熱くて悲しくて強い物語を観ることができます。
おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。