『チョコレートドーナツ』【#まどか観劇記録2020 32/60】
なかなかチケットが取れない上に、新型コロナウイルスのせいで初日が延期となってしまい、ますますチケットが取りにくい『チョコレートドーナツ』ですが、当日券にチャレンジしてでもぜひ観てほしいそんな作品です。
ヒガシの完璧ボディ
冒頭から東山紀之氏の脚線美に釘付けです。
ミラーボールにすら負けないキラッキラの麗しい衣装で、完璧なボディラインを惜しげもなく披露し、ブロンドヘアで歌い踊る東山さんのルディ。オペラグラスを持って行っておいてよかった...!(これからご覧になる方、オペラグラスは必需品です)
54歳なんて嘘でしょう。という美しさ。
その後も際どい(観客的には歓喜の)ドラァグクィーンの衣装に鍛え上げられた身体に眼福続きです!
そして、声がいいです。
もちろん歌手としてもご活躍されているので声がいいことは当たり前かもしれませんが、作中で歌っている時だけでなく、セリフを話している時の声がとても…!
ルディの持つやさしさとひたむきさが声になったらこんな感じだろうなというような。
優しくてどことなく甘い、低いでもなく高いでもない声がマルコに話しかける時の温度が感じられるような声音が素敵でした。そこから歌を歌った時もいいのですよね。
ルディ、はまり役でした。
谷原章介の包容力
そして、東山さん演じるルディのパートナーで検察官のポール役の谷原章介さんがまた素晴らしかったのです。
一見頼りなさげに見えたポールの包容力、冷静さ、検察官という堅い職業ながらゲイということを隠していた(ルディとマルコ出会ってからはオープンに)葛藤を乗り越えた強さなど。ルディやマルコだけでなく、観客を含めた劇場全体を包むような包容力でした。
おそらく、観客はストーリーが進むごとにルディに感情移入する人が多いでしょう。ルディと共に嘆き悲しみ怒り、喜ぶ。感情豊かなルディと一緒に衝動に振り回されている時に谷原さんのポールの存在が頼もしく、心地よいのです。
情熱的な性格ゆえにバランスを崩しがちな優しいルディをまっすぐで視野の広いポールの優しさが支え、その二人の愛がマルコの傷ついた心を包む。
どうか3人幸せに暮らしてくれと、いつか一緒に親子として暮らせる希望を持ち続けてくれと、そう願わずにはいられません。
でもまさか。
こんな結末だったとは。。。
今、上演すべきテーマ
ゲイのカップルが障害を持つ子供を育てるということにまつわる様々な偏見、立ちふさがる障壁。心無い言葉や人々の無意識の偏見に傷つけられる3人を通して社会的マイノリティが直面する問題を告発し、人間の本質とは何かを描いたのが原作映画「ANY DAY NOW(邦題:チョコレートドーナツ)」でした。
今回の舞台化にあたってもそのテーマは変わることなく掲げられていました。
作品の世界は1979年。現在は2020年。
この作品を観終わった時、あまりの結末とその過程の残酷さにに、もし今だったらもっと違っただろうと思いました。けれど、瞬時に「本当にそうか?」と問い直す自分がいました。
確かにこの数年でセクシャルマイノリティへの理解は進んだように見えます。様々な声が聞かれるようになり、それぞれの人生を尊重しようという風潮が強まってきているのも事実です。
しかし、まだまだ当事者の方々からすれば、生きづらいばかりの社会であるし、自分自身についても、無自覚に偏見を持ってしまっていることに気づいて愕然とすることもあります。
だから、このテーマは、この作品は決して過去のものではありません。今なのです。現在起きている状況を可視化したリアルでした。
悲しすぎるハッピーエンドと、
最後のルディの歌が伝えてくれた、悲しみを忘れないことが、このテーマから今後も目をそらさないことの約束のような気がしました。
おまけ
ちなみに、ちょっと聞いてみたいのですが、
これを読んでくださっている方は、舞台の原作映画があった時に観てから観劇しますか?観ないで行きますか?
ライターとして感想を書く場合は見るべきかなと思うのですが、実は個人で観に行く場合は私はあまり事前情報を入れたくないタイプでして…今回も観ていません。
何回か観る場合は舞台を初見で見て、映画を観て、再度観劇にというパターンが理想かな、なんて。
そんなことを言いつつ、今回の舞台での素晴らしかったキャストのみなさまのイメージを上塗りしたくないなとまだ映画を見るかを悩んでいます。笑
でもこの舞台を観たら映画も見たいんですよね。という葛藤中です。
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東京公演は終わってしまいましたが、
2021年1月中に上田、宮城、大阪、愛知公演が上演予定です。
観に行ける方はぜひ観てほしい作品です。ライブ配信はないようなのでぜひ、劇場で。
おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。