『両国花錦闘士』【#まどか観劇記録2020 39/60】
2020年12月から約2カ月間にわたり、東京・大阪・福岡を沸かせたお相撲エンターテイメント。
両国花錦闘士は(りょうごく”おしゃれ”りきし)と読みます。
公式サイト↓
相撲の新たなエンタメ性
相撲と聞いて私の脳裏に浮かぶのは、日本の国技という位置づけだったり、相撲中継されるNHKというチャンネルだったり、一時期ニュースになった女性は土俵に上がるな問題だったりと、なんとなくお堅いという印象がありました。
原作も読めていないのですが、一体そんな相撲がどう笑って暴れるエンターテインメントになるのか、と興味を持って伺ったのですが、かなり予想外の展開に驚きました。相撲そのものというよりも、相撲にかける様々な人の想いに焦点を当てたような作品なのかな、と。
相撲の真剣な取り組みを見るというより、それは本物の相撲を見てくれとばかりに違うアプローチで魅せる。力士としての強さだけでなく、恋愛などに悩む登場人物の姿を通じて、相撲そのものの真剣なイメージは壊すことなく、より観客にとって身近に感じられる相撲像が描かれていたように思います。
コメディタッチの効果音や、ふんだんに使われる映像、そして照明はなぜかディスコのイメージ。デーモン閣下は出ていらっしゃるしDJ KOOさんみたいな人もいらっしゃったし。笑(座席が遠かったのでDJ KOOさんは本人とは確信持てず)
力士の方々のプライベートのことを改まって考えたことがなかったのですが、力士の平均年齢は20代半ばで、10代半ばから相撲部屋に所属して強くなるための修業を積むことになるのが一般的だそうですが、その年代って恋もしたいし格好良くもなりたい時期だと気づいて、「そうだよね!」と途端に納得。
しかし、そこが相撲の特殊性で、一般的に格好いいと言われる体格と、相撲力士として強い体格が相反するというのがドラマになります。
あれだけの肉体のぶつかり合いです。一概には言えませんが、体の重量も力士の武器のひとつであるので、極端に軽い場合はいくら筋肉を鍛えたとしても不利になります。重量が重い方が力士としては強いけれど、外見のスタイルとしては、モテるかどうかというと。。。
主人公であるソップ(やせ)型の昇龍は、格好いいスタイルを保ったまま勝ちたいと悩みますし、そのライバルでアンコ(ぽっちゃり)型の雪乃童は、勝率こそよいものの片想いの相手にはその体格ゆえに相手にしてもらえない。他の力士も含めて、お年頃ならではの等身大の悩みが何ともいえず、もどかしいようなほほえましいような切ないような。
色の少ない相撲世界をカラフルに彩る
視覚的な色彩の話をします。
お相撲エンタメと聞いて素直に思い浮かぶように肌色が多いです。まわし姿がしっくりきつつ、実際の力士ではないのでぽっちゃりではなく皆さん鍛え上げられた立派な肉体にこの作品にかけた熱量を感じました。コロナ禍の懸念もなんのその、なんのためらいもなく美しい肢体をさらす潔さ。
また、相撲の取り組みが行われる土俵や相撲部屋(もちろん和風の)を改めて考えると、色が地味、です。人は肌色だし、周りの建物は茶色か土色だし、となると、舞台としては映える色がない。視覚的に非常に盛り上がりの少ないステージになってしまいますが、そこにカラフルな照明や巨大な土俵がぐるぐる動く仕組みだったり、映像を投射したり、上下2階建てでセットを使う仕組みだったりと、普段は相撲を見ないという人に対してどう魅せるかということを細かく考えられている舞台だと感じました。ダンスがかなり入れ込まれていたのもエンタメ性が増していてよかったです。
「相撲を観に行くといったって、こういうものないからなあ」と思っていた思考を先回りされて、ほらここにはありますよ、と言われている感じです。
癖の強いキャラたち
ここはテーマパークだろうかと思うほどにキャラが濃いです。癖が強すぎる。笑
前述したように、力士たちは相撲の対戦シーンは肌色(まわし姿)で、稽古場や相撲部屋をはじめとするほとんどの場面での衣装は浴衣ですし、衣装面での役の区別がつきにくいため、必然的にキャラで主張をしていかなければならないのですが、どの役も癖が強すぎてすぐ覚えられました。笑
しかし、衣装での区別がつくキャラまで癖が強いというか、こちらの方がさらに一層強かったです。
なかでも芸能事務所社長の桜子役のりょうさんが最高すぎました…! 一言で表現すると“残念なクールビューティー”。りょうさんのクールなイメージを覆すようなはっちゃけた役で、すごい、という感想しか出てきませんでした。桜子が舞台に出てくるたびに今度は何をやらかしてくれるのか、と変な期待をしてしまったり。笑。とにかく目が離せない人です。
主演の原嘉孝さん(ジャニーズ.Jr)は、当初別の役だったそうですが、急遽二ヶ月前に主演の代役に抜擢されたそうです。相撲を題材にした作品自体が少ない中、おそらく初めての経験も多かったと思いますが、お芝居やダンスだけでなく、相撲を表現するということに対して真摯に取り組まれたのだなというような空気が伝わってきて素晴らしいと思いました。最初から主演というのとまた違い複雑な想いもあるのかもしれませんが、約二ヶ月にも及ぶ大公演を座長としてやりきったというのは本当にすごいことだと思いました。これを糧にこの先は最初から主演の座をつかんでほしいおひとりです。
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派手に歌って笑って暴れてというこの作品が相撲そのままを描いているかというと、それは違うかもしれませんが、少なくとも、私が今まで相撲に抱いていたイメージと違うものが相撲にはたくさんありそうだということを気づかせてくれました。相撲そのものについてはよくわからなかったけれど(笑)、原作も含めて、このような形の作品ができるほどの相撲愛があふれていることに完投しましたし、そして、観劇後の今、この作品のおかげで相撲そのものがとても観たくなっています。興味を広げてくれる作品って素敵ですよね。
残念ながら公演は終了してしまっており、DVD等の発売もまだ発表されていないのですが、映像コンテンツがかなり充実しているので公式サイトのMOVIEページをご紹介しておきます。
おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。