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劇場を貸し切りたかった話。

大金を手にしたら何をしたい?

誰しもが一度や二度は考えたことがあるのではないでしょうか。
私がやりたいことのひとつは

「劇場を貸し切ること」

でした。

ある日ある時間の公演を貸し切って、客席には私ひとり、周囲の何にも気兼ねすることなく舞台を独り占めするのです。

そんなことを思いついた理由は簡単で、観劇をする人なら多かれ少なかれ経験があると思うのですが、観劇マナーが守られない事態に遭遇するからです。暗転してからもスマホをいじっていたり、隣の人とひそひそ会話をしていたり、ガサガサと音をたてたり、前の席の人があれで舞台が見えなかったりとかあるじゃないですか。楽しみにしていた公演がマナーが守られないことで台無しになってしまう悲しさといったら…!

ちなみに私の今までで一番閉口したのは、ロングのダウンを着たマダムが隣で、公演中もダウンを脱がずにずっと体のあちこちをこすっていたことですね。という、悲しい観劇の話はいつかの機会に置いておいて。


そんな経験から、誰にも邪魔されずに作品を堪能したい!そのためには貸し切りだ!と思っていたのですが、今回の新型コロナの影響でその考えが変わりつつあります。

4月、5月といくつかのライブ配信やオンライン演劇というものを見ました。もちろん素晴らしい体験だったのですが、やはり劇場に行きたいなと思ってしまうことが多く、その原因を考えたのです。

部屋を暗くして、環境音をなるべく排除すれば、そこは理想に近いシアターになります。映画なら環境としてはなかなか上出来です。観劇だとしても、舞台上の生の熱量は何にも代えがたいですが、少なくとも、他の観客に何かを邪魔されるという危惧は全くありません。
それでも、舞台上の熱量以外に何かが足らなかった。劇場に行きたい理由がさらにありました。

よく考えると、それは客席の存在だったんです。自分以外の観客の気配だったんです。舞台上で繰り広げられる物語に反応する空気、熱を帯びた緊張感、客席が一体となる感覚。
私は舞台の上から作品を経験したことはありませんが、舞台に立つ方々は客席の反応を感じながら生で物語を紡いでいるそうです。日によって客席の空気が違う、それもナマモノで、その空気に反応して微妙に変わる演者の心理もナマモノ。舞台の上と下との交流があってこそ、私の好きな舞台という空間なのだと気づいたところです。

そういえば、記憶に残る素敵な公演はどれも客席も含めた一体感があったような。。。

だから、ひとりきりで貸し切りにしてしまうと、客席側の空気が明らかに負けてしまうし、それは私が望むものではないのではないかと思ったので、少し目標を変えました。

「貸し切った後に、客席をマナーのいい人で埋めて、気分良く観劇する」

です。
客席数分のマナーのいい人(と言ってもそれぞれコンディションもあるでしょうし何がいいと一概に言えないし判断できる立場でもないのですが)を集めるという大金を所持するというよりも現実味のない目標になりましたが、それだけ客席って大事だったんだなと思った次第です。

早く劇場にいきたいなあ。
結局はそれに尽きる。

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よこやままどか
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