見出し画像

『フラッシュダンス』【#まどか観劇記録2020 19/60】

気持ちが落ち込んでいる人に見てほしい作品。
元気をもらえるだけでなく、人を信じることの温かさを感じられる。

あらすじ

1983年、ピッツバーグ。
プロのダンサーを夢見るアレックスは、昼は製鉄所、夜はバーのフロアダンサーとして働いていた。親友のグロリア、ダンスの恩師でもあるハンナからダンスの名門学校のオーディションを受けることを勧められ、挑戦する物語。製鉄所の御曹司ニックとの恋模様も。


ザ・ミュージカル、ザ・ショーダンスといった王道の作品を観たように感じました。

翻訳もののミュージカル

『フラッシュダンス』の舞台は、1980年代、アメリカ。

私の友人にも、ミュージカルが苦手という人がいるのですが、彼らが苦手という理由には大きく二つあります。①突然歌いだすという日常とかけ離れた言動が苦手。②舞台設定が海外のいかにもなものを日本人が演じているのに違和感があって苦手。という二つです。

このフラッシュダンスは、もともと1980年代にアメリカで上演され大ヒットになったものなので、まさに苦手な理由②に該当してしまうわけですが、私個人の感想としては違和感は全くありませんでした。

翻訳、日本語脚本から演出までを手掛けるのは岸谷五朗さん。

俳優としてももちろん素晴らしい方ですが、『フラッシュダンス』がすんなり受け入れられる作品に仕上がったのは、彼の脚本や演出の手腕のおかげではないかと感じました。

おそらく原作にはアメリカ人ならではのネタやニュアンスが入っていたのだと思いますが(原作未見なので違っていたらすみません)、それをそのまま日本語訳して演じてしまっては、観客も不思議に思って終わってしまいます。しかし、このフラッシュダンスは愛希れいかさんはアメリカ人を演じていたのではなく、アレックスを、観客が感情移入して応援してしまう純粋な少女を演じていらっしゃいました。それができた作品のすばらしさを感じました。


歌は心を前に進める

歌というのは、全てを前に進める力を持っているのではないかと感じました。うれしい時や楽しい時はもちろん、ミュージカルの作品では、落ち込んだ時も、怒った時も、悲しい時といったマイナスな気持ちの時にも歌います。でも、マイナスな気持ちで歌い始めたとしても歌い終わるときに更にマイナスになっていることはなくて、歌い始める時よりも少しプラス側に進んだところにいるのじゃないだろうかと、フラッシュダンスを観ていて感じました。

歌の起源は明確にはわかっていませんが、人々が前を向くための、今日より明日をよくするためのものだったのではないかとまで思うほど、フラッシュダンスの歌には我々観客をも前向きにさせる力が込められていました。

新型コロナのせいかわかりませんが、この数か月、理由もなく心が落ち込むことが多いのですが、そんな気持ちに染みる歌、心を前向きにしてくれる歌でした。

おそらく版権等の関係か、グッズのラインナップにサントラはないのですが、元気が出ない時のプレイリストにしたいくらいどの歌も素晴らしく、のびやかなキャストの声で何度も聞きたい曲の数々でした。


信じること、信じられること

ストーリーで最も感動したのが、この作品では主人公のアレックスのことを真正面から信じる人がたくさんいること。

友人のグロリアも、恩人のハンナも、エリックも、みんなアレックスを真正面から信じている。アレックス自身よりも彼女のことを信じている。そのことが、うまく言えないけれど涙が出るほど素晴らしかったのです。

私たちは日々自分のことですら信じられなくてもがいているのに、人のことをこれほどまでに信じられるなんて。信じさせることができるアレックスの人となりって。
ハンナの最初のシーンは特に好きでした。


映像投影を兼ねる舞台装置

今回も舞台装置の話をします。

フラッシュダンスは、アレックスが普段働いている工場、ダンサーとしてショーをしているバー、アレックスの部屋、ダンスフロア、など、シーンの場所が様々です。

昔はどうやって表現していたのだろう、と思いますが、今は、どんなところにも映写できる技術が発展したので、舞台装置はドアになる部分のついた曲面スクリーンと机にもステージにもなる箱のような塊のみ。
スクリーンには様々な背景を写してそれぞれの場所を表現し、箱はシーンに合わせたものに見立てる。

映写技術の発展は表現の幅を広げたのだろうと思います。

今回の作品で使われていた曲面のスクリーンは、かなり大きなものでしたが、同じ場所で映像を投影しているだけでなく、スクリーン自体も二つに分かれており、それぞれが自由に動かせるようになっています。

当然大がかりな舞台装置でも移動は人力で行うのが常ですが、シーンとシーンの間の決められた時間内にスムーズに動かすためにおそらく、倒れないけれど重すぎないという絶妙に見極められた重量で作られたのではないかと、舞台装置を作る際の細やかな配慮や計算も舞台には不可欠であることを強く思いました。


今日落ちこんでいても、明日は今日よりいい日になる。いい日にできる。

そんな力をもらった作品でした。

最後に、出演者みんなスタイルがいい…! ほれぼれしてしまう!


*****

東京公演は9/26(土)まで。
その後、大阪公演、名古屋公演と続きます。

チケット情報は下記より↓


おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。