劇団朱雀『ぎふ葵劇場幕引き公演』【#まどか観劇記録2020 48/60】
騒ぎ屋たちのすばらしさ
幕引き、つまりさよならって一般的には寂しいものですが、「ありがとなーーー!!!」と笑って楽しんで終われるって最高じゃないですか。
もしそうしたいなら騒ぎ屋稼業の劇団朱雀にお任せあれ! これほどの適任者はおりません! ということで、昨年末で9年間の歴史に幕を下ろしたぎふ葵劇場の最後を飾った劇団朱雀の『ぎふ葵劇場幕引き公演』が3月27日より日テレプラスで放送されます。岐阜まで行けなかったよという人も自宅のテレビ、PCから見れてしまうのでぜひこのチャンスをお見逃しなく!
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(配信は3公演観させていただいたのですが、noteは主に千秋楽の感想を書かせていただきます。)
見どころばかりの贅沢3幕
一幕:女形をはじめとする舞踊ショー
早乙女太一といえば!のど真ん中女形舞踊ショーで幕を開ける劇団朱雀の公演。
幕が上がった瞬間の流し目の美しさ、妖艶さ。一瞬で劇場の空気を持っていく圧倒的な存在感。指の先の先まで美しい。そして、単に美しいだけではなく、衣装の早替え(髪型まで...!)から仮面の付け替え、小道具を使う手先の滑らかさなど、ひとつ魅せるためにどれだけの工夫を凝らしているのかと目を見張る表現の数々。常に技を磨いていなければできない境地です
(こればかりは配信のよいところで、生だと圧倒されて「きれいだった…」で終わってしまうところ、何度も見られるのでここも変わっていたのかなどと演出面をじっくり見ることもできました)
早乙女太一さんの艶やかさにため息をついた後は、早乙女友貴さんの男前ショーにほれぼれとし、葵陽之助さんの成熟した間合いを堪能し、鈴花奈々さんのカモメで安心し、一座の紹介かつ見どころ続きのショーが続きます。脇を固める出演者のみなさんも朱雀暦の長短関係なく百戦錬磨の手練れ揃いで心強いったら。今回から参加の須賀健太さんも素晴らしかったです(あのキャラはずるい。笑)。
二幕:日替わりお芝居
毎日お話が違うってとんでもないことだと思うのですが…。だって15公演あるんですよ。
「その日の公演が終わったらすぐ次の日のお稽古で眠る時間がない」と出演者の方がおっしゃっていましたが、前日稽古で舞台に上がれるレベルにするためには普段の鍛錬がいかほどかということです。大衆演劇だけでなく、歌舞伎などの世界もそうだと聞きますが、たとえ開演10分前に出番だと言われてもできるようにおおよその演目は体に染み込ませておく、そんな芸事への覚悟を感じます。
とにもかくにもすごい。スピード感と絶妙な間合いで、観客は泣くわ笑うわため息をつくわで大忙しです。中でも八面六臂の活躍の座長早乙女太一さんと、早乙女友貴さん、久保田創さんが特にすごかった。メインでお芝居を進めつつ、アドリブを入れ込み、反応し、機転対決を見ているかのようでした。
千秋楽は果し合いの場面で、敵役の久保田創さんのピンマイクが壊れたのです。が、トラブルもなんのその。あっという間に笑いに変えて、その上更なるアドリブまで放り込んできてもうあっぱれです。全員が骨の髄まで表現者。訓練されつくしているからとっさのひと言まで完璧です。最後に言い残したことは、とマイクを向けられた(ピンマイク壊れてしまったから)久保田創さんの絶叫が実に見事。
「まくびきだああああああああ!!!」
江戸前べらんめえ口調、気持ちいいですね!
三幕:賑やかな舞踊ショーと圧巻の殺陣
打掛を羽織り、裾を引きずりながらしずしずと舞う静の踊りが一幕だとしたら、三幕は動。動き回ります。目が回るというか、目が追いつきません。
華やかで動きやすそう(かつなびく布の軌跡がとても美しい)和の衣装で飛んだり跳ねたり回ったり。ひたすらに楽しい時間が続きます。
「待たせたな」「待ってたよ」の曲での一体感がうれしい!(もちろん客席はマスク着用発声禁止なので、待ってたよも出演者が言ってくださいます) ほんとにほんとに待ってたよ!!!
客席をごっそり巻き込む曲があると思えば、完成された芸術として楽しむ曲もある。座長の女形の時より色気のあるダンスや早乙女兄弟の世界一の殺陣など、話し始めたら止まらないここでしか見られないすべてが圧巻で、3幕の幕が下りても劇場の熱気は冷めやらぬ。こんなに体感時間が短いなんて驚きです。
常にハイライトシーンばかりを見ているかのようなあっという間の3時間。お値段以上どころではない盛りだくさんの楽しさにすぐにもう一度!となります。チケットさえ取れれば全日程観られた方もいらっしゃったのではないですかね。
アンコールがありすぎる。笑
まだまだ観たいし、きっと私が劇場にいたら一緒に拍手してしまうのだけど、アンコール三回全力の三曲は大盤振る舞いすぎませんか? だから劇団朱雀は最高なんだよ~と言いたくなってしまいますね。
肩で息をしているくらい出し尽くしているようなのに、もう一曲行きましょうか!と踊り始めたそのキレたるや。一曲目ですかと言いたくなるほどのエネルギーにプロ魂を見て感服です。
定番ものがうれしい舞台
新しいものも見たいけれど、いつものあれやっておくれよと言いたくなる。劇団朱雀の公演は、定番もの“も”うれしい舞台だなと感じました。完成されたものを完璧に届けてくれるという信頼があります。
いいねいいね、やっぱり早乙女さんの太一さんは色っぽいねとか、友貴さん男前だねとか、葵さんの光るやつとか鈴木姐さんのカモメ聞かないと調子でないよとか、常連さん顔をして言いたくなってしまう親近感と誇らしさがあるのです。帰ってきた~~~というテンションの上がり方をするので、観客によって劇団朱雀はホームなのかもしれません。何度だって帰ります。
最後に、一年前に劇団朱雀 復活公演を観ていましたが、そこから比べても早乙女太一さんの芸達者ぶりが上がっていたように思います。自ら先陣をきって芸事に飛び込むそんな座長の姿を感じました。そして厳しいだけではなく、アンコール中も何度も座組のみんなの名前を呼んでいたことが印象的でした。最後の「またねーーーー」といった挨拶のすがすがしさは彼にしか出せないだろうなと。あの一言が本当に気持ちよいのです。
本当に楽しかった!!!
日テレプラスでは7公演分を放送予定ということで、2幕のお芝居も7作品見られますからぜひお見逃しなくご確認ください。次の公演はいつかな~~~。