
『No.9 ー不滅の旋律ー』【#まどか観劇記録2020 29/60】
この作品はベートーヴェンの音楽の物語であって
そのベートーヴェンの音楽への挑戦の物語でもある。
ベートーヴェンを演じる覚悟
実在の人物を演じるということに対して、ベートーヴェンは最も難しいひとりだと思います。
第一に、彼の壮大で圧倒的な音楽が今なお生きて愛されているから。
第二に、彼の音楽が有するドラマチックな情感は、ベートーヴェンの人生そのものだったから。
劇的に生き、劇的な音楽を残し、今なおその音楽の中に生き続けている神に愛された音楽家。それがベートーヴェンです。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを演じることは、彼の音楽のみならず、そんな偉大な人物とそして彼が愛され続けてきた250年の歳月と真正面から向き合うことになるのだと思います。
これほどの難しさに挑戦された(しかも3度も!)稲垣吾郎さんの役者としての覚悟が垣間見えた作品でした。
偏屈そのもののベートーヴェン像を描き出し、そのうえでさらに、どこか放っておけないその人柄で人々を惹きつける、そんな魅力を稲垣さんの演技から感じました。(そしてビジュアルがドンピシャすぎました)
”主演:ベートーヴェンの音楽”
まずもって音楽は間違いない。だってベートーヴェンなのだから。
舞台上がどんな状況だったとしても、音楽が鳴り響いた瞬間にその場の主役は音楽になる。通常の舞台では、役者が主役で音楽はその演技を引き立たせたり、雰囲気を作るために使われるでしょう。しかし、ベートーヴェンの音楽は決して脇役にはなりません。その場を支配する主役は音楽でした。
圧倒的で完成された音楽。
しかもそれを舞台上の2台のピアノを使った生演奏で聞くことができるのです。コンサートを聞きに来ているかのような贅沢な体験でした。名曲の数々が流れる劇場空間。しかもピアニストの手元が見える席だったので最高すぎる状況に言葉もない…!
天才音楽家の産みの苦しみ
しかし、その完璧な音楽が絶え間ない苦しみと戦いの果てに生み出されたものだということを舞台の上の人物たちは教えてくれます。
そう、『No.9』は、役者がドラマを付け加えることによって、音楽を更に魅力的に描いたという作品でした。
稲垣吾郎さん演じるベートーヴェンが、剛力彩芽さん演じるマリアが、苦しみ悩むほど、その後に演奏される音楽がより素晴らしく、より胸に迫って聞こえてくるのです。
人が、奏でる。
人を、奏でる。
人と、奏でる。
ベートーヴェンの音楽は、そういう音楽なのだとこの舞台が教えてくれました
"喜び"を合唱する
事前のイントロダクションで知識としては知っていたのですが、ラストの合唱が圧巻でした。
音楽家としての命運を左右する聴覚を失い、過去に苦しみ、自分と戦い続けるベートーヴェンの姿。何かを生み出すことは、そんなにも途方もなく、そんなにも辛いものなのかと、観ていて苦しくなるほどの生き様を経て、生み出された音楽のテーマが"喜び"だった。
こんな素晴らしいことがあるでしょうか。
赤坂ACTの高い天井に響く壮大な喜びの歌。
力強く美しく、神々しささえ感じる音楽。
そしてそれを指揮する稲垣吾郎さんの後姿は、あの瞬間、間違いなく音楽の神に愛されたかのルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンでした。
喝采!!!!
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赤坂ACTシアターにて上演は2021年1月7日まで。
会場での当日券はありませんが前日18時からwebでの直前販売がありますのでぜひ。
第九で年越しをという方に舞台の第九もお勧めします。
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観劇直後にこちらのツイートをしたところ稲垣吾郎さんファン、SMAPファンのみなさまからあたたかい反応をいただき、愛がすごいなと尊敬の気持ちです。ありがとうございます…!
第九を聴かないと年を越せない体質なのですが今年は舞台で。ここまで音楽が主役な作品ってあるだろうか。「主演:ベートーヴェンの音楽」。そしてそれを体現する稲垣吾郎さんの熱演。音楽が鳴り響くたびに涙しました。ピアノ2台も生演奏だった…!!
— まどぅーか✨観劇好き働きマン (@ca_madu) December 15, 2020
来年1/7まで赤坂ACTシアター。#No9不滅の旋律
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