DAZZLE『夜想百物語』【#まどか観劇記録2020 51/60】
不自由な状況から人々が新しいものを生み出す力には毎回驚かされます。
先日観たDAZZLE『夜想百物語』でのVR体験が素晴らしかったので記録。ネタバレNGなのであまり詳しくは書けませんが、自宅に居ながらこれほど夢中になれる作品が生み出されたとは、、、。
ちなみに本日(2021/3/13)20時より第2回配信がありますので、下記サイトより詳細ご確認ください。
※配信は2回目ですが、1回目を見ていなくても全く問題がないのでご安心ください。
そして、百聞は一見にしかずということで下記YouTubeで公開されているPVをどうぞ。
投票により観客が物語に少しだけ参加できる
システムの説明を兼ねて、投票のことから書きます。
タイトルからもわかるように今回の作品テーマは百物語です。そう、あの怪談話の。観客はチケットを買うときに14話の物語から自分の見たい物語をひとつ選ぶことができます。
(投票なしでもチケットは買えますし、投票には期限があるので2021/3/13時点で投票できるのはすでに第4回の配信分のみとなっています。)
配信は全4回。一回の上映時間は1時間。
視聴期間は、配信開始から丸3日間。何度でも視聴可能です。
毎回の作品は、投票によって選ばれた百物語のお話を組み合わせて配信されるそうなので、おそらく1回目から4回目まですべて違う組み合わせになるのではないでしょうか。投票なので全く同じ組み合わせの可能性もなくはありませんが、それはそれですごい確率ですね。
投票することによって観客には二つの楽しみが増えます。
ひとつめは、自分の投票がどう影響したかの結果を見る楽しみ。
1回目の配信時、私の投票したお話も配信されたのでより興味を持って見ることができましたし、次の投票はどうしようかなとさらに積極的に考えるようになりました。
ふたつめは、選択肢があらかじめ開示されていることで、全部を見たいという欲が産まれること。すべてを集める楽しみ。
14話あるよと言われたら、全部見たくなりませんか。個人的には自分の投票が反映されるかどうかよりも全部見られるのかということの方が重要だったりします。コレクター気質のせいでしょうか。。。
そして、さらに、この『夜想百物語』には秘密があって、実は選ばれるお話の組み合わせで結末が変わるらしいのです。観客は1話だけ選ぶということしかできませんが、それによってストーリーが変わってくる。これはまた何とも残酷なシステムというか、魅惑的なシステムというか(笑)。先ほども書いたように、人ってあると言われたら全部を見たいものですが、 そこに投票次第でラストも複数あることをほのめかされ、しかし全てを見るために直接できることはないというジレンマ。複雑すぎる。。。
そして、配信後のDAZZLEメンバーさんのツイートからすると”真のラスト”というものが存在するらしいです。そして1回目は真のラストではなかったらしい。突如として与えられたこの情報に対して、観客がすぐさま配信を見返してどこかにヒントがないか探し回った様子が見て取れますよね(笑)。
そんな様々な思惑がめぐりめぐらせられた作品ですが、観客のやることはごくシンプルでチケットを買う、視聴する、その二つです。そしてそれだけで自宅にいながらかなりの没入体験ができるのです。
VR体験と没入感
virtual reality。いまでは100均のゴーグルとスマホ1台で体験できるようになりました。(夜想百物語はゴーグルなしでスマホのみでも楽しめます)
普段、舞台だとステージを客席の一方向からしか見えないわけですが、『夜想百物語』は360度VRのシステムを使っているので横も後ろも上も下も見ることができます。
観客が自らの意志で見るものを決める。劇場に行って舞台を見る場合はある程度自由がありますが、家で配信を見る場合、カメラアングルが決まってしまっているとやはりそこには自由が少なくなりますが、そんな制限を360度VRは取り払いました。まるでその世界の中にいるような感覚の中、自由に見ることができるのです。これほどの没入感があるでしょうか。
あらゆる角度で自由に見ることができる。
観客からしたらこんなに楽しいことはありませんが、おそらく作る側からしたら大変なことでしょう。あらゆる角度からの視線に耐えうるものを作らなければいけない。自宅にいても楽しめるというのはテクノロジーの発展の恩恵であると同時に、それを活かすためにどういったテーマやコンセプトがいいのかというところは製作者の腕の見せ所なのだと思います。
その点、国内イマーシブシアターの先駆者としてあらゆるシチュエーションを考慮して作品を作った経験のあるDAZZLEさんの作品はさすがでした。
怪談というテーマとの親和性
まず、怪談というテーマを選んだことについて。
この作品は360度VRの特徴である「後ろが見える」ということを最大に活かして作られたと思いました。劇場で後ろを向いても他の観客に迷惑なだけですが、VR『夜想百物語』の世界では、後ろでも物語が進んでいます。
その、後ろを振り向くという行為。後ろに誰かがいるという可能性。
ホラー映画で一番危ないシーンはどこでしょう。主人公が後ろを振り向くシーンですね。お化け屋敷にいて一番怖い時は、後ろを振り向く時ですね。
後ろが見える⇒後ろを振り向く瞬間に一番感情が動くもの⇒怪談
なのかな、と。
一回体験してみていただきたいのですが、部屋を暗くして他の音が聞こえないようにして(VRゴーグルとヘッドホンがあれば万全です)、『夜想百物語』を再生すると、それはそれは後ろを振り向くのが怖いです。
(とりあえず私は振り向いた時に片づけていなかった冷たいMacが足に当たって悲鳴をあげました。)
VRの没入感に、怪談の恐怖心を加わった更なる没入感。脱帽です。
視線誘導の巧みさ
360度自由に見える!と喜んで最初は色々と見回すのですが、やがて、物語を伝えるための視線誘導の巧みさに気づきました。
好き勝手に見ているとどちらを向いていたのかVRの中で迷子になっていきなり真っ暗な壁を見つめるはめになったりするのですが、落ち着いて見ていると必ず物語の進行に伴って見るべき場所に緩やかに誘導してくれているのです。それによって物語を見失わずに済みます。ぐるぐるしていて何もわからないままにシーンが進んでしまうことがないのがとても素晴らしいのです。
例えば、直前に見ていたところから場面が変わった場合に、視界の端に光が見えるようになっている、登場人物の動きや目線の示す方向がある、など、物語の一環として視線の誘導があります。一度は真っ暗だなと思った瞬間に「後ろを振り返るとそこには~」といったセリフが聞こえてきました。台詞なので誘導ではなかったのかもしれませんが振り返る?と思って振り返ったら場面が続いていたのでその時はもしやと感動したものです。
ただの怪談話ではありません
1時間の配信を見て一番感動したのがラストです。
最初に書いたように、百物語の語られるお話によってラストも様々なようですが、1回目の配信を観た時、そのラストでの衝撃が忘れられません。それまで怪談話として見てきたシーンがラストを見ることで意味が全く変わりました。最後の感情のふり幅が大きすぎて混乱しました。すごかった。すぐさま最初に戻って見直したほどです。(配信期間中何度も見られる設定でよかった…)
これについてはネタバレできないので詳しく言えませんが、ただの怪談話ではない素晴らしい作品なのでぜひ見ていただきたいなと思います。
最初にも書きましたが、全4回でラストは毎回違うとはいえ、1話完結というか、1回ごとの配信でお話としては完結するので1話だけでも楽しめます。
が、いろんなもの見たさで、選ばれるお話が違うとか、ラストが違うとかということを聞くと、、、1話では、満足できなさそうです。笑
部屋を暗くしてセッティングしたら雰囲気までばっちり。特に本日(2021/3/13)は、新月の夜ですから、百物語をするには最高のシチュエーションだそうですよ。
本日(3/13)20時から第2回配信が始まりますのでよろしければ。
公式サイト(チケットもこちらから)↓
PVはこちら↓
総合演出のDAZZLE荒井信二さんのインタビューが公開されましたのでこちらもぜひ。
DAZZLE主宰の長谷川達也さんのインタビューも公開されていました。