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『てにあまる』【#まどか観劇記録2020 31/60】
この1年で見た作品の中で一番感想が難しいかもしれないと思います。
まさに私にとって言語化するという点で「てにあまる」作品。
個人的な話なのですが、私はおそらく観劇するときは登場人物のひとりもしくは架空の誰かとしてその作品の中に感情移入して観ているのかもしれないと、この作品を観て気づきました。
というのも、今回の作品では、物語の中に入り込むことなく、私は終始観客として劇場の空間に存在していたからです。
これは、観客が感情移入しにくいという意味ではなく、我々観客の日常の延長としての感情とは別の世界で、完結された物語としての作品が存在していた、そんな印象を受けました。
舞台の申し子:藤原竜也と柄本明
そもそも観たいと思ったきっかけは藤原竜也さんでした。
観劇が好きだと言いながら、舞台の申し子(だと私が勝手に思っている)藤原竜也さんの舞台人としての姿を生で拝見したことがなかったのでチャンスをうかがっていたところ、共演者かつ演出が柄本明さんというスペシャルすぎる組み合わせ。これは行かねばなりますまい。
結果。大正解でした。
舞台の申し子・藤原竜也は藤原竜也でした。
ものすごいエネルギーの塊で
彼が発するエネルギーには質量があるかのような気がするほどでした。
喚き散らしのたうち回る藤原竜也さん。
身体に納まりきらないエネルギーが爆発しているかのようでした。
そして、それを受ける柄本明さんの巧妙なこと。
一度もまともに受けない。笑
いなし、かわし、揺り戻し、作品上はのらりくらりとしているように見えるので、なんて役なんだとこちらまで歯噛みしそうになるのですが。
その役の向こうに、藤原竜也さんと柄本明さんという二人の役者同士がっつり組み合っているさまが見えるような、観客はだまって鑑賞するしかない勝負が行われているかのようでした。
技をかける天才が藤原竜也なら、技を受ける天才が柄本明。
こんなことを言ってはいけないのですが、物語そっちのけで二人のやりとりを見ているだけでも十分満足だと思うくらいのぶつかり合いを見ました。
たった4人とは思えない熱量の舞台
と、そんなことを言っておきながら、
藤原竜也さんと柄本明さんだけでなく、若手のおふたり、高杉真宙さんと佐久間由衣さんも素晴らしかった。
柄本さんとは違い、お二人は真正面から藤原さんのお芝居を受け止め、物おじせずにそれに返していく、そんなやりとりが、物語が進むほどに空気に熱を持たせていきました。
最初を除き、ずっと転換などのないシンプルなステージで目まぐるしく人の心が変わっていく、狂っていく、その様子がまるで空気に色がついているかのように体感できた、そんな作品でした。
あまりの熱量に観劇後はしばしぼうっとしてしまったほどでしたが、よく考えてみると舞台上にはたった4人しかいらっしゃらなかったのです。たった4人で何百人もの観客を圧倒する熱量を放つ。なかなかできない経験でした。
煙に巻かれたような不思議な後味
物語はハッピーエンドではないし、途中の過程も決して気持ちの良い楽しいお話ではありません。ラストも壮大な復讐劇といいますか、おそらく通常ならモヤモヤと煮え切らない想いなどを引きずってしまいそうなのですが、なぜか、不思議とさっぱりした気分で劇場を出たのが、驚きでした。
ひょうひょうとした柄本明さんに煙に巻かれたのかな。
それとも藤原竜也さんのエネルギーにすべてを燃やされたかな。
どうしてだったんだろうと考えて出てきた答えが冒頭のものだったのですが、何だったのでしょうか。物語の登場人物ではなく、お芝居をされている役者を観てしまったのか。そういえば役名を覚えていません。関係性だけ。
それだけ役者としてのパワーがすごかったのです。藤原竜也さんは藤原竜也さんだったし、柄本明さんは柄本明さんだったし、高杉真宙さんも佐久間由衣さんも素晴らしかった。生で役者がそこにいるということがどういうことかを教えていただいた気がします。
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東京公演は1/9まで東京芸術劇場プレイハウス(池袋)にて上演中です。
その後、地方公演もあります。
ここまでがっつりの役者の真剣勝負、なかなか見られるもんじゃありませんぞ。
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