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ピウス企画『プレイルーム』【#まどか観劇記録2020 25/60】

とても今更なのですが、2020年3月、緊急事態宣言前最後に見たピウス企画『プレイルーム』という作品について。書くタイミングを逃してしまっていたものの、これを書いておかなければ2020年後悔しそうだなと思い書き残しておきます。


リアルな感情を引き出す舞台

突然ですが、みなさんはなぜ舞台を観に行くのでしょうか。舞台は、役者はそこで何をしているのでしょうか。どういったものに感動をするのでしょうか。

私なりのひとつの答えは「観客を別世界に連れていくこと。そこでリアルを感じさせること」です。
そんなことを思ったのはこの作品を観たからです。ものすごく、ものすごくリアルだった。物語だしフィクションだし作りものだとわかっているのに、感情がダイレクトに反応して、リアルで怖くて怖くて仕方がなかった夜のことです。


緻密に張り巡らされた構成によってリアルとフィクションが交じり合う

プレイヤーと呼ばれる殺人鬼が活躍する小説を書くために、池袋のある会議室に作家と編集者、そして作品のファンが集められます。そこで彼らは作品の登場人物になりきり、目の前の池袋の地図を使って”想像上で”プレイヤーとの鬼ごっこを始めます。プレイヤー以外の目的はプレイヤーを捕まえること、ただし、プレイヤーに見つかったら殺されてしまう。そんな緊張感の中、物語と小説は進んでいきます。

小説の中で最初の犠牲者が出た時(死因はビルの爆破)、もちろん会議室でのその人は生きていました。“想像上の”鬼ごっこに負けただけですから。しかし、参加者がインターネットで情報を調べた時、”想像上の””現実には起こりえないはずの”ビルの爆破が実際に起きていたのです。
その後も小説の中で起こっているはずの出来事と現実がリンクしていきます。


物語の中の池袋と実際の池袋

我々観客は何を見ていたのでしょうか。

劇場は密室でした(当たり前)。ステージ上に登場する会議室も密室でした。
作品の登場人物も役者も観客も誰一人その密室から出ていません。

しかし頭と心は池袋の街中にいました。
池袋と聞いて思いうかぶ大体の場所がこの作品の舞台。

小説の舞台であり、演じられている作品の舞台であり、そして現実にいる場所である池袋。あらゆる状況が重なり混沌とし、観客としての私は、自分の立ち位置がわからなくなりました。普段ならば、観劇しに来ているという観客としての一種の客観性のようなものを観劇中も持ち続けていることが多いのですが、この『プレイルーム』という作品に関しては観客としてのアイデンティティがどこかつかめなかった。

自分の立ち位置がわからないくらいその場で感じるものがリアルだったのです。感情、特に恐怖がとてもリアルでした。

この作品のすばらしさを書き残しておきたいと思ったものの、結局のところは実際に体験してみてもらわないと、と言わざるを得ない状況が悔しくもあり、うれしくもあり。

わずか1時間半のあいだにすっかり『プレイルーム』の魔力に取り込まれてしまった私はその夜、会場であったシアターKASSAIから池袋駅までの十数分、プレイヤーの存在におびえながら歩きました。事件の場所を通るときは誰かにつけられてないか思わず後ろを振り返り…、人生で最も恐怖を感じながら池袋の街を歩いたのです。


2020年に観た作品の中で衝撃的な作品をあげるとしたら、間違いなくこの『プレイルーム』はそのひとつになることでしょう。
この作品に関わられたすべての方に最大の賛辞を贈りたいと思います。


ピウス企画の最新作が近日上演

幸運なことに、近々ピウス企画の新作が観られるようです。

ピウス企画「オールドメイド」
公演期間:2020年11月26日~12月6日(配信あり)

詳細はこちらから

脚本・演出は『プレイルーム』と同じ広瀬格さん。

またあの複雑怪奇な緻密なストーリー構成なのか。楽しみです。


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よこやままどか
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