マッドスキッパーを飼うー②初心者編
はじめに
前回の記事では、マッドスキッパーの飼育に関する基本情報をまとめました。今回は、初心者が比較的簡単にはじめられる飼育環境のつくりかたについてご紹介します。いい感じにセットできれば、こんな愛らしい姿が見れますよ。
ちなみに「こんなの知ってるよ」という中級者の方は、もっと理想的な次回の記事をご覧ください。
満たすべき前提条件
マッドスキッパーはちょっと変わった魚なので、飼育にあたっていくつか満たすべきポイントがあります。
水深を浅め(数cm〜20cm)にしないといけない。
水面にあがるための陸が必要。
陸はできるだけなめらかな石や皿などが良い。
ハネるので、飛び出しを防ぐフタや返しが必要。
こうした条件を満たすレイアウトとしては、大きく2つの方向があるのでご紹介していきます。
ベースとなる2つの飼育レイアウト
1.浅型
水深をマッドスキッパーの体高前後くらいにするやり方です。砂などを下にひきつつ、石などで陸地も簡単に作りやすいメリットがあります。一方で水深が浅いため、フィルターやヒーターを設置できず、水の循環や加温ができません。さらに水の量もかなり少ないので、水がすぐ汚れてしまうというデメリットを抱えています。ですので、よほど几帳面に頻繁な水換えができる人でない限り、選びづらい方法だと思います。
2.深型
これは水深を10−20cm程度にすることである程度の水量を確保し、フィルターによる水の循環やヒーターによる加温を可能にするやり方です。ただし、水深が深い中で陸地を作らねばならないので、それをどう作るかが問題になります。
初心者はまず深型がおすすめ
まずは手軽に飼ってみたいという方には、深型がおすすめです。ネット上の数少ない飼い方紹介記事を見ても、そのほとんどで深型のやり方がおすすめされています。このほうが安価で、水換え頻度も低くて済みますし、温度や水質管理がしやすいからです。私もかなりの面倒くさがりなので、飼い始めた当初はこの方法を実践していました。
用意するもの
最低限の飼育に必要なものをまとめました。参考となる商品も掲載しています。
1.高さ25cm以上の水槽
水面高さ10cm程度の前提で、飛び跳ねも考慮し、高さ25cm以上の水槽を用意しましょう。横幅は1匹なら20-30cm程度、2匹なら45cmが目安です。
2.飛び出し防止用のフタ/返し
水深が深いほど飛び出しやすく、ガラスを登られる可能性もあるので、フタや返しが必要です。ただし皮膚呼吸なので、密閉はされないように。水槽を買うと最低限のフタは大体ついてきます。
3.かさ上げする土台と陸地(素焼き鉢+皿)
方法は色々考えられますが、最も手軽なのは水面に合わせて高さ10cmくらいの素焼き鉢。上に乗せる皿も、水を透過する素焼きがおすすめです。
4.水中フィルター or 外部フィルター
ろ過能力の高い外部フィルターのほうが楽ですが、価格が高いです。ですので初心者はカメの飼育などに使う水中フィルターがおすすめ。その場合は、後述の応用ポイントを考慮してシャワーパイプなどをつなげられるタイプを選びましょう。
5.ヒーター(カバー付き)
マッドスキッパーが上に乗ることも考えられるので、火傷しないようにカバー付きの水中ヒーターを選びましょう。
6.サンゴ/カキ殻(水をアルカリ性に傾けるもの)
アルカリ性の水質を好むので、サンゴやカキ殻を入れてPHを保っておくのが簡単です。酸性に傾くと、お肌をやられてヒレが赤くなるのでかわいそうです。
7.平たい石(皿の上に置く餌場)
素焼きの皿だけでも陸地としてはOKですが、餌が水の中に落ちると水がどんどん汚れていくので、輝岩石や黒甲石など、平たい石を置いて餌場にするのがおすすめ。餌を食べるために石に飛び移る姿もかわいいです。
8.サンゴ砂などの底砂(なくてもOK)
皿の上に細かい砂を敷いたほうが、見た目的には気持ちいいですが、お好みで。結局は水流や飛び跳ねなどで少しずつ砂が皿から下に落ちてしまうので、薄めにひくのをおすすめします。
9.汽水/海水の素
汽水をつくる必要があるので、そのための素(塩)を買います。汽水はだいたい海水の4分の1程度の濃度なので、海水の素を買って入れる量を調整するか、心配な人は汽水の素があるのでそちらを買ってつくりましょう。
10.餌
一般的な熱帯魚用の粒上の餌や、乾燥アカムシなどを用意します。たまに人工飼料を食べてくれない子もいて、その場合は冷凍アカムシなどがいいと思います。
11.その他(ライト・バケツ・水汲みポンプ)
ライトはなくてもいいですが、あったほうが朝夜の区別がつくので、生き物として過ごしやすいと思います。あとは水換えのためにバケツと、水を汲む手動ポンプを買っておきましょう。
セッティング方法
安定した台の上に水槽をセットする
水中フィルターやヒーターをセットする(※電源はまだいれない)
陸地となる植木鉢と皿、水質調整のためのカキ殻やサンゴ石を置く
皿の上に餌場用の平たい石を置く(敷きたい人は底砂も)
カルキ抜きした水道水に海水の素を入れ、海水の1/4濃度の汽水をつくる
陸地の皿の縁からはみ出ないくらいまで、調整した汽水を入れる
購入したマッドスキッパーを水合わせ※してから投入する!
フィルターとヒーターの電源を入れる
※「水合わせ」とは、購入時に入っている水から水槽の水に移すときに、水質の変化でショックを起こさないように、徐々に水に慣らすことです。知らない人はググってみましょう。
深型での基本的な飼育方法
餌は1日1回、食べ切れる程度で。入れすぎると水がすぐ汚れるので注意。
縄張り意識が強いので、2匹いる場合は、それぞれに陸地を作ってあげて、別々に餌をあげるようにしましょう。(でないと喧嘩します)
夏場は水温/室温が28℃を超えないよう注意。冬場はヒーターで水温を24℃くらいにしつつ、できれば室温も20℃以上にしたいところです。室温が低いと寒いので陸に上がりづらくなります。(自分が魚だったら、水から上がって風邪ひきそうだし…)
水が皿の下まで減ってくると皿の水が乾いてしまうので、水を足します。このときの足し水は、カルキ抜きした水道水でOK。※塩分添加は濃度がかわるのでNG
皿の上のゴミや汚れが気になってきたら、皿だけ出して掃除しましょう。
水槽内に茶色いコケが増えてきたら3分の1程度水換え。このときは、普通の水ではなく汽水を入れてください。
慣れてきた人向けの応用ポイント
皿の上が主な陸地になるので、必然的に皿の上にいる時間も長くなります。そこで糞もするので、皿の上はゴミが溜まりやすいです。そこで応用として、フィルターの排水口からシャワーパイプやホースを伸ばし、皿の上にも軽く水がいくようにすると、常に皿をきれいに保てます。また、こうすることで蒸発で水面が下がってしまったとしても、皿の上の水位は保つことができ、水換え・水足し頻度を下げることができます。さらにサボりたい人は、汽水でも大丈夫な植物を入れるとベターです。我が家ではマングローブの種を鉢に立てて入れ、種から育てています。
さいごに(半年ほど試してみた感想)
実際に半年ほどやってみると、汽水で植物が入れづらいこともあり、ろ過能力の限界や運用のしづらさを各所に感じてきました。そして何より、人工物だらけになって景観がイマイチ。水槽の中がいろんなパイプや素焼き鉢などの人工物だらけになって、あまりきれいな水槽ではない。そして、マッドスキッパーが陸地に向かって斜面を登るような姿が見たい人には物足りない…
ということで、今回は安価に作れる初心者向けの飼育環境づくりについて解説しましたが、次回はこうした経験を踏まえてたどりついた、中級者向けの理想的な飼育環境を紹介したいと思います。