静けさの音を聴く
古いレコードの音源などにある,”サーッ”というような音がとても好きだ.
悪く言えば”ノイズ”な訳だが,演奏しているミュージシャンと音を通じて同じ空間にいるような,雰囲気の近さを感じるのだ.
僕はこれを”静けさの音”と呼ぶことにした.
そして,音響工学には”暗騒音”と呼ばれる,”静けさの音量”を示す考え方がある.
果たして,音源から聞こえてくるのはこの音なのだろうか?
はたまた違う原理で起こっているものなのか?
今回はそれについて綴っていこうと思う.
1.静かさの指標 ”暗騒音”
まず,暗騒音とは何かについて述べる.
これは主に音響工学に関わる単語で,
”音を調べたいもの以外から発生している,環境由来の音”
を指す.
例えば,洗濯機から出ている音について分析する時に,
近くで冷蔵庫やエアコンの作動している音が発生しているとする.
この場合,調べたいのは洗濯機の音であるので,冷蔵庫やエアコンの音は”暗騒音”ということになる.
では,あの静けさの音は楽器以外から発せられている”暗騒音”なのか?
それを調べるべく,ぼくはネットの海へ飛んだ.便利!
2.レコーディング今昔
楽曲の録音について詳しく書いてあるページがwikiしか見つからなかったので,ここにアドレスを示しておく.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8C%B2%E9%9F%B3
1889年人類最初のレコーディングが行われてから27年後,ジャズで最初にレコーディングを行うバンドが現れる.
この時のレコーディング手法は,一つのマイクに対して演奏者の配置を調整して,バランスを成り立たせながら”生”の演奏を収録する
というものだった.
その後,ポピュラー音楽のレコーディングは
一つの部屋で全員で行うものから,各パートを別録りして重ね合わせるという
マルチトラックレコーディング(MTR)が主流になってゆく.
現在は収録した音に対してデジタルフィルタをかけることでノイズを減らすことができるので,”サーッ”という静けさの音は聞こえなくなっているのである.
ちなみに,オーケストラのレコーディングでは
全体を録るマイク+個々のパートを録るマイク
という合わせ技で録った音を最後にまとめ上げるという手法が取られているようだ.
一つのパートが間違ったり,演奏を邪魔する要素が入ればすぐ頭からやり直し.
恐ろしい現場である.
3.”静けさ”の音とは
また,”サーッ”という音の発生原因はマイクによるものとも考えたが,マイクにかかる電圧の調整をプロがミスするわけもなし.調べてみても部屋の反響を抑えるという対策が出てくるくらいであり,この線は薄いと考えている.
詳しくて優しい方がいらっしゃったら教えてくださると幸いです.
結論づけるにはまだ確信しきれないが,
古い音源の”サーッ”という音は,録音した部屋の”静けさの音”である可能性は高そうである.
ふと感じる身近さは,空間を感じる音が録音されているからかもしれない.
4.さいごに
ふわっとした締めくくりとなってしまったが,なにはともあれ僕は音楽が大好きである.
偉大な先達たちには敵わないが,それでもいっぱしのオタクであることを自負している.
今回調べてみて,音楽を記録するということの歴史をたどることができた.
音楽の”増幅の歴史”は調べたことはあったが,この歴史は調べたことがなかった.
好きなことに対してもこれだけわからないことがあるのだ.
まだまだ興味は尽きない.
ここまで読んでいただきありがとうございました. よろしければフォロー/投げ銭お願いいたします.