⑨レアルマドリードvsマンチェスターシティ CL2ndleg レビュー
世界一長い120分でした。
マドリーは4-4-2、シティは4-1-4-1。
ついにやってきた決戦だが、マドリーはチュアメニがいないという非常事態。代わりにナチョが抜擢された。それ以外は1stlegと変わらず。
一方のシティは、デブライネとウォーカーが帰ってきた。完全体となってマドリーに襲い掛かる。
この試合を一言で言うなら「我慢」が適切。ではマドリーはどんな我慢策を採用したのか。
まずはシティのビルドアップ対策。
上図はマドリー非保持の局面。
シティの保持は1stleg同様、片方のCBを一列上げて、3-2-5の形。
シティのビルドアップのカギは、何と言ってもロドリ。ロドリが前向きでボールを持てば、縦パス、ロングパス、ドリブルと様々な攻撃パターンを繰り出すことができる。マドリーは何としてもロドリを抑えなければいけない。
その対策として、前線4枚で堤防をつくることにした。これにより、ロドリとアカンジを絡ませないようにした。この辺は1stlegでもやっていた定番戦術。ポイントは前で堤防をつくることで、ひっかければカウンターを繰り出せる。堤防それぞれにも役割があって、ヴィニシウスとベリンガムは中央閉鎖、ロドリゴとバルベルデはデブライネとベルナルドを背中で消すように配置していた。それでも通すのがシティ。通された時用の策も用意しておいたマドリー。ロドリやアカンジに通るのが一番まずいので、すぐ近くにカマヴィンガを置いておく。デブライネにはクロースがべったり対応。ベルナルドにはカルバハルを押し出したり、バルベルデが戻ってきたりしてカバー。つまり右サイドはアドリブ守備。
これがマドリーのビルドアップ対策。この非保持はボールを奪うためではなくて、サイド攻撃に誘導するため。そういった意味では思惑通りいったマドリーだった。
次に押し込まれた展開。
上図はグリーリッシュがボールを持っている局面。マドリーはグリーリッシュがボールを持つと、カルバハルとバルベルデの2枚で守るようにしていた。
シティに押し込まれた時の要チェックエリアは二箇所。ニアゾーンとバイタルエリア。
ニアゾーンは、カマヴィンガがそのまま対応、バイタルに関しては逆サイドのロドリゴを絞らせて対応していた。逆サイドも同様である。
ニアゾーンランは1stleg同様の守り方。バイタルに関しては、1stlegでは逆サイドのIH、上図でいうとクロースが守ることが多かったが、2失点目のフォーデンのミドルはそこのスライドミスが原因だったので対策をしたアンチェロッティ。ミドルシュートという少ない可能性もしっかりと潰すその緻密さはさすがである。しかし、ロドリゴも低い位置にいるので、ボールを奪っても威力の高いカウンターは繰り出せなくなった。その結果、押し込まれた守備の連続という、マドリディスタにとっては地獄の時間が長く続くこととなった。
バイタルエリアの守備はほぼ百点の出来だった。ロドリゴが絞り切れていない瞬間もあったが、ナチョが飛び出して対応したり、ヴィニシウスが戻ってきてくれたりしたので、ミドルを打たれることはなかった。
ニアゾーンランに関しては50点くらい。特に右サイド。カマヴィンガはもっとタイトについていかないといけない。後半は特に集中力を切らして、失点シーン以外でも何度かやられかけた。
カマヴィンガの話をすると、ブロック内に侵入してくるアカンジのマークをはっきりさせるべきである。カマヴィンガがつくのか、ヴィニシウスにそのままつかせるのか。前半にデブライネに裏を取られたシーンが二度あったが、どちらもアカンジのところが起点になっている。そういった守備のタイトや判断の部分でカマヴィンガの課題がでた試合になった。
マドリーの保持も少しだけ触れると、割り切ってつながないようにしていたがこの判断は非常に良いと思う。しかし、つながないなら前でひっかけられるシステムにしないと攻める機会は少なくなってしまう。後半のような戦い方は仕方ない部分があるとはいえ、見ている方はきつい。シティ相手でももう少し攻撃面に目を向けられた戦いをできるようになってほしい。
試合の方はというと、120分を戦い抜いた末、PKでまさかのマドリー勝利。支配され続けた試合だが、我慢し続けたマドリーがベスト4へ進むこととなった。
個人的にMOMはベリンガム。ベリンガムって守備苦手なイメージあったけど、今日の試合は全然そんなことなかった。背後を消す守備なんて、普段の試合ではやらないのに。普段の試合でいかに手を抜いているかが分かった。もう少し頑張ってください。
この試合をベストバウトとしてしまうのは少し違う。やはりマドリーには圧倒的最強集団であってほしい。シティに対しても、完全勝利してほしい。そう思う。次はバイエルンだが、保持・非保持両局面で圧倒して勝利してほしい。
次節はクラシコ。燃え尽きてしまいたくもなるが、ここは踏ん張りどころ。しっかりと勝って優勝を確実なものにしたい。