24-25 レアルマドリードvsアタランタ レビュー
まずは一冠目。おめでとう。
マドリーは4-4-2、アタランタは5-2-3。
マドリーは一応4-4-2表記だが、4-3-3っぽくもなるし4-2-3-1っぽくもなる。要するにシステムにこだわりはない。ここは昨シーズンと同じ。ただ違うのはクロースが抜けて代わりがエンバペであるということ。タイプどころか役割も全く違う選手になったことで何が変わるだろうか。相手はEL王者のアタランタ。試金石にするには十分すぎる相手だ。
まず注目すべきはアタランタの非保持。
アタランタは、上図のように3-4-3でマドリーの配置にぴったり合うように選手を配置し、担当の選手をどこまでもマンマーク。いわゆる、オールコートマンツーマンというやつである。
オールコートマンツーマンのメリットはマークの受け渡しによるずれが起きない。特にマドリーは頻繁に選手が入れ替わるので、その都度対応していたらいずれマークがずれるだろうから、そもそもマークを受け渡さないという考え方。逆にデメリットは、マークは全て人基準なので、スペースは空けてしまうこと。これを取っ掛かりにマドリーの攻撃は始まる。
アタランタの嚙み合わせは、相手SBにWBを当てるものなので、ルジェーリとザッパコスタは高い位置までプレスをかけに行く。そうなるとその背後のスペースはがら空きになる。そこへ中盤のバルベルデやベリンガムが上がったり、ヴィニシウスやロドリゴが流れたり。そうして何とか攻撃を繰り出していたマドリーだった。
しかし、上図のような攻撃で崩すシーンはそう多くはなかった。理由は2つ。1つ目はそもそもアタランタのファーストラインを突破できないこと。どこへ誰が下りてきても相手がついてくるから、フリーで前を向くことすらできずにクルトワへ戻す。これをずっと繰り返していた。
2つ目は昨シーズンから持ち越した課題である「非連動」。特に、エンバペ・ロドリゴ・ヴィニシウスの使いたいスペースが被って停滞するシーンが多かった。ここに関してはまだ1試合目だから仕方ない部分もある。徐々に調整していけばいい。
とにかく攻撃で停滞感を見せるマドリー。そのくらいアタランタのオールコートマンツーマンは徹底的で、見事であるということである。
ただ、そんなアタランタの攻撃はどうだったかというと、意外と停滞感はあった。理由は去年のマドリーと似ていて、最前線に人がいないから。2トップのルックマンとデケテラーレはどちらもサイドに流れたりライン間で受けたりして、前線で留まらない。故に、マドリー目線、サイドで崩されても中央に人がいなくて対応しやすい状態になっていた。また、攻め残りしているエンバペとヴィニシウスをどうしても気にしないといけないからDFが不用意に上がれないのも一つ原因として考えられそう。
こんな感じで、攻撃で停滞感のある両チームといった印象の前半だった。
結果から言うと、後半、攻撃を流動的にできたマドリーと、あと一歩足りなかったアタランタという両チームだった。
まずアタランタは、2トップの片方が逆サイドにあるとき中央に入ってくるようになって、中央に人いない問題は解決され、単純なクロスが脅威となった。
一方のマドリーは特に変更なし。では、何故マドリーの攻撃は流動的になったのか。そこにオールコートマンツーマンの弱点が見えてくる。
オールコートマンツーマンの弱点、それは対面不利を覆せないことである。この試合でいいたいのはベリンガムとデローンの対面。前半は上手く対応できていたデローンだが、後半はライン間のベリンガムを捕まえきれず、フリーにしてしまうシーンが目立った。ゾーンディフェンスなら周りのカバーが効きやすいのだが、マンツーマンではカバーすることはすなわち自分のマークを捨てることになる。マークを捨てればフリーの選手を一人生まれてしまう。こうして崩れていく。オールコートであるが故、後ろも人数が余っていない。一度噛み合わなくなればそのまま後手後手になってしまう。覆せないというのはそういうことである。
アタランタの攻撃が停滞感をぬぐいきれなかったのは、2トップがCBに抑えられたこと、中盤の疲労でこぼれ球を拾えなかったことなど、単純な個人能力の問題が大きいと思う。そこをどうカバーしていくか。アタランタが強豪に勝てるようになるために乗り越えるべき壁となりそう。
一方のマドリーだが、またもや力技で勝ってしまった感はある。下手にいじるより選手に任せたほうが上手くいくというのはマドリーのDNAであり、アンチェロッティの遺産である。そこは去年と変わらない。ただ、クロースが抜けたことで、後ろ重心の重たい感覚は大分なくなった。そこは良くなった点。しかし、ビルドアップはほぼできなくなって、昨シーズン以上に選手の能力頼みになりそう。どちらにせよ昨シーズンとは違うマドリーが見れそうで非常に楽しみである。