⑪レアルマドリードvsバイエルン CL1stleg レビュー
ソシエダ戦はカット。
マドリーは4-4-2、バイエルンは4-2-3-1。
今回、CBにチュアメニでなくナチョを起用。個人的には結構サプライズな人選。他は出場停止のカルバハルがバスケスなところ以外はいつも通りのマドリー。
一方のバイエルンは最近よくやっていると噂のキミッヒSB起用。そして一番気になるのはミュラー。マドリー目線でもバイエルン目線でも試合のカギとなるのは間違いなくミュラー。どうやって抑えようか。どうやって生かそうか。非常にわくわくする戦いである。
まず、バイエルンの保持。
バイエルンの武器はサイド攻撃。個人の質と連携でサイドをえぐる。この試合もそれが遺憾なく発揮された。
バイエルンの特徴は両サイドの三角形がグループで攻撃を仕掛けてくるところ。メンバーは上図のとおり。特に右サイドの破壊力はやばかった。オンザボール最強のムシアラとオフザボール最強のミュラー、両方高水準のキミッヒのトリオ。要となるのはミュラー。ムシアラにスペースを与えるようにナチョやメンディを引き付ける。かと思えば、絶妙なタイミングでムシアラとポジションチェンジをしてボールを受けることもできる。右サイドの三角形は全員が万能で、入れ代わり立ち代わり役割を変えながら三角形を構築できるから、非常に守りづらい。
逆に左サイドはどうかというと、ケインは真ん中固定、ザネとマズラウィがたまに入れ替わるくらいで基本は上図通りの配置。それぞれの良さを最大限生かせる立ち位置。開始1分のシーンは正にその狙い通りの形でつくった決定機だった。
そんなバイエルンの攻撃に対して、マドリーはどうやって守ったのか。
マドリーは人基準のゾーンディフェンス、いわばいつもの守り方を採用。
ゾーンディフェンスはスペースを管理する守り方だが、マドリーの場合管理するのは人。イメージとしては、相手→スペース→味方という優先順位。そのため、スペースを空けてでも人の自由は奪う。後ろからライマーやゴレツカが飛び込んでくるとそのスペースを使われてしまうのだが、そういったシーンはなかった。カウンター対策で後ろに人を残すのが優先だったから。
人の捕まえ方だが、基本的には配置にそのまま当てはめた形。ただ、大外はどちらもSHが捕まえるように意識していた。SBがでていくと、ケインやミュラーにスペースを与えてしまうから。ちなみに、立ち上がりの決定機ではマズラウィのマークがあいまいで、バスケスがつり出される且つバルベルデも行けていないという最悪の対応。そこからバルベルデが行くように修正した。
この守り方でマドリーは前半をしのぐことができた。その要因として主に2つあると思っている。ポケットを上手く守れたことと、バイエルンの後ろの4枚のビルドアップ組があまり効果的に動けなかったこと。
ポケットに関しては、SBが余っていることで走りこまれてもそのままついていけばいいだけだから、上手く守ることができた。
ただ、SBを後ろで余らせている分、バイエルンのビルドアップには制限をかけられない状態になる。バイエルンはそれを上手く生かせなかった。
そんな感じで、マドリーは非保持で優位性を出すことができた。
次に、バイエルンの非保持。
バイエルンは、基本的には4-4-2の構えだが、マドリーの後ろが3枚になって出どころを抑えづらくなると、ライマーがチュアメニまででてくる形になっている。ベリンガムが逆サイドにいるときはゴレツカがでていく。
バイエルンの非保持の感想だが、チームとして非常にまとまりがある。特に、ムシアラとザネの守備意識に驚いた。プレスバックも欠かさずするし、逆サイドにあってもしっかり中央まで絞ってくれる。攻撃でも躍動した2人だが、守備も欠かさず行ってくれるからこそチーム一体となって戦えるのだろう。脱帽。
マドリーの保持に関しては、ベリンガムの不調とロドリゴ・ヴィニシウスが左サイドで優位性を出せなかったことなどが原因で、上手く前進できなかった。また、バイエルンのハイプレスは驚異的で、かわせないからロングボールで逃げるしかなかった。
以上が前半の総括。お互いに保持で停滞感が見られるシーンが多かったが、その中でチャンスをものにできたマドリーが優勢であるのは確か。シティ戦以降、非保持で優位性を生み出すサッカーができるようになって、見ていてストレスがたまらないのはうれしい。ライプツィヒ戦とかやばかったから。
後半は両者ともに動いたのだが、顕著だったのはバイエルンの保持。
バイエルンはゴレツカに代えてゲレイロを投入。そして、左右の三角形の構成を変えた。ムシアラとサネを入れ替えて、左にゲレイロを加えてケインは真ん中固定。狙いとしては2つ。ライン間に顔を出せるゲレイロでさらに押し込むこと、ケインでリュディガーをピン止めすること。
実際にこの修正はドハマりして、特にムシアラサイドは手が付けられなくなった。リュディガーをピン止めしたこととかゲレイロを使ったこととか以上に、単純にムシアラvsバスケスの有利対面をつくれたところが大きい。
ただ、バイエルンが優勢になったのはマドリーの改悪も関係している。
マドリーは後半の立ち上がりからハイプレスをかけるようになった。ハイプレス時は4-3-3で、ロドリゴがキムミンジェまで出ていく形。ただ、そうなるとキミッヒは誰が見るのか。ロドリゴはキムミンジェまで行きたいのにキミッヒが気になって中途半端なポジションを取らざるを得ない。1失点目はそんなロドリゴが戻れなかった。2失点目はクロースがミュラーを捕まえられなかった。どちらもハイプレスに切り変えたことで起きてしまった失点。前々から思っているが、マドリーにハイプレスは無理。ハイプレスはしっかりと準備したうえで行うもの。そのくらいはがされた時のリスクは大きい。撤退守備で優位性を出せるようになってきたマドリーだったが、大事な局面でハイプレスを仕掛けたことで崩れてしまった。
2失点後、マドリーは修正。ナチョに代えてカマヴィンガを投入し、上図のような4-5-1を形成。まず、リュディガーを右に置くことで、チュアメニがバスケスのカバーに入れるようにした。そしてハーフスペースに人を配置することで、ゲレイロとミュラーをしっかり捕まえようとした。実際捕まえられたかは置いといて。
この辺の修正力はアンチェロッティ流石と言わざるを得ない。
ただ、ヴィニシウスは結構不満そうにしていた。追いつかなきゃいけない状況で何故下がるのか。そんな思いが態度にめっちゃ出てた。それもあってヴィニシウスは戻ってこない時もある。プロとしてどうなのって思ったりもするが、そのあとの同点弾はそんなヴィニシウスの姿勢が生み出したもの。我々はヴィニシウスに助けられた。
試合は2-2のドロー。マドリーとしては同点でホームを迎えられるわけだから十分といっていいだろう。
それにしてもこの試合、めちゃくちゃ面白かった。保持・非保持のどの局面においても非常にハイレベルで、興奮冷めやらぬ最高なゲームだった。CLとはかくあるべきだと見せつけられた気分だ。
次はホームでカディス戦。優勝をさっさと決めて、我々を楽にしてくれ。