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【備忘録】『アイ・ライク・ムービーズ』
いつかのPOPEYEの映画特集号で表紙を飾っていたこの作品。『アイ・ライク・ムービーズ』という作品名もフックとなり気になっていた。
タランティーノを彷彿させる「映画オタクがレンタルビデオ屋さんで働く」という設定。映画オタクなら誰もが観たくなるのでは?(この映画を見ていかに自分が映画オタク”ではない”ことを思い知った)
ハイライトはメインビジュアルにも採用されているシーン。綺麗に裏切られた。というか、ポスターを見れば分かることなのに。ビジュアルは“映画を観ているシーン”ではない。主人公の目線の先に広がっているレンタルビデオ屋さんでのワンシーンをぜひ観てほしい。
ふと、ポスターを見つめられていなかったことが恥ずかしく感じた。でも、「なぜ、このビジュアルにしたんだろう?」とか考えずとも、温かさは伝わってきていた。きっと、クリエイティブの制作はそれで良いんだと思った。
主人公のナルティシズムのどこかに、共感性羞恥を覚える方も少なくないはず。「自分にとって大切なものを映画にすべきだ」「もうすぐ卒業だ。気が滅入るよ。僕は僕のままでこの先も生きてい可なければならないんだから」なんてセリフはその象徴。でも、みんなどこかで気持ちを理解できるはず。
物語がクライマックスを迎えるとき、『アイ・ライク・ムービーズ』の“ムービーズ”の意味が変わった気がした。「事実は小説より奇なり」という言葉がある。この言葉を借りれば、映画を観る行為と、他者の物語を知る行為は、同じ意味を持つのだと。人間関係が上手くいかない主人公が、真摯な眼差しで「どうしたら大学で好かれるかな?」と言った。相談相手は「相手の話を聞くのよ。自分の話を我慢するんじゃなくてね。相手の好きなことを真剣に聞くの」と言った。
映画好きの主人公なら、相手の好きに耳を傾けて、他者の物語を楽しめるだろうと思いましたとさ。