オババの処方箋
こりゃあ、正しい病(タダシイビョウ)だねえ
正義症候群ってやつをこじらせると
そうなっていくもんさ
でも、大丈夫
病ってもんは、シコリでつっかえてた所を
通して流すために 起きてくる自然現象だから
うん?
わかりにくいってかい?
いいんだよ
わからなくっても 大丈夫
世の中は 間違いだらけだって、何かの拍子に気付いたんだろ
誰かに教えてもらったのかもしれないねえ
どっかの情報ってやつに 触れたんだろうよ
その結果
間違いを責める気持ちが 出てきたんだな
悪いことをしているやつを責めるんだ
あいつが悪い、世間が悪い、悪い集団がいる
みんな騙されている、目を覚ませ!・・・とかね
そういうのを ひとしきりやってるうちにさ
気付くんだよ
自分の中に、
「誰かや何かを責める気持ち」
が潜んでたってね
自分の攻撃性ってやつだよ
誰かを攻撃するときの酔いしれるような快感が見えただろ?
それまで正義面してすましてたもんがさ
自分の中に、他人を責める気持ちが、こんなにもあったのかって
次に自分を責めだすんだよ
ハハハハ
可笑しいかい?
そりゃあ、可笑しいさ
どこにも出口がない
勢いよく突き進んでいるようで、糸を絡めているだけさ
命の通り道そのものが、絡まってシコリになって
命が通らなくなっていくって話だからね
でもさ、どんなになったって
命は流れるものなのさ
絡まったシコリが、どんどん膨らんで圧を増して
その状態が「病」に見えるんだね
ここまでくれば、もうすぐだよ
大丈夫だよ
今は痛いだろうけど、苦しいだろうけど
きっとよくなる
よくなるために「病」として現れたんだから
他人を責めるのも、境遇を責めるのも
自分を責めるのも、もう止めちまえ
止めてもいいんだって、それを聞きたくて
ここに来たんだろ?
な、初めから、わかってたんだよ
どうすればいいのかなんて
あんたの代わりに、このオババが言葉にしてやってるだけさ
たった今から、病は快方に向かうよ
いや、病になった時点で
快方に向かうことが決定してたんだよ
オババの診断は 以上だ
処方箋は、そうだな
こんなマジナイが 効くんじゃないかね
「南無可 詩亜和瀬 南無可 発飛伊 南無可 死知蘭毛戸 宇麗詩伊奈」
ちょっと長いけど、覚えられるかい?
必ず声に出して読むんだよ
「ナンカ シアワセ、ナンカ ハッピー、ナンカシランケド、ウレシイナ」
そう言って、オババは、ひひひと笑った。