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泥泥泥日記 10日目

10月4日

あみだ湯営業日は朝9時から風呂掃除だ。掃除バイトの地域の方と一緒になって、浴槽内の鏡やカランを洗う。浴槽は複雑な形をしている半地下、中二階。向かう目線の先には、少し波が立つ能登の海。薪ボイラーや
はごちゃごちゃの配管も含めてこの銭湯が一つ大きな船に思えた。
どんな風を受けて、どこへ舵を取るのか。時に遠くで、時に中に入って見届けたいと思う。中二階のデッキから外に出れば、左手の方には着々と進む防波堤建設。必要か不要かの住民を交えた議論もなしに、上の方で決まっているようだ。住民を置き去りにして勝手に進めていった復興計画の失敗はもう東北でこりごりだ。新築の限界集落にさせないために、どんな風景を作っていきたいか、官民連携して対話を重ねていかねば、同じ轍を踏みかねない。
大きな問題がのしかかる被災地と、そのビジョンを持った人が総じて忙しすぎる現状がもどかしい。答えは出ない、だからしつこくやり続けるしかない。今日の雨でまた大谷峠の方が崩れたと聞いた。週明け七日にはまた大雨が降るという。またすぐくるよと挨拶をしてまた雨足の強まる奥能登を、後ろ髪を引かれる思いで後にする。あのかいた泥も努力虚しく崩れてしまっているのだろうか。それでもそれでも、10日間の泥に塗れた記録。
泥泥泥日記、ひとまず完。


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