布団の中(短編小説)
『布団の中』
寒いね
「寒いね」
あの日々を思い出す
こん寒い夜は、いつも君と同じ布団に くるまり
肩並べよく話をした
「もう!ひっつきすぎだよw」と彼女はいつも戯れる僕を離そうとしながらも嬉しそう。
僕はわかっているからいっぱい抱きつき首元に口をあてるんだ
「あーだ」「こーだ」とお互いの今日の出来事やTikTokで見た話題を自分勝手に喋っている。
新しい発見に驚いたり、知ってるけど初めて聞いたふうに聞いて話を広げたり
でも君は、いつの間にか先に寝てしまうから僕は一人ぼっちになる
そして天井を見上げて
「幸せだね」と呟いた
つらいね
こんな事もあった
「辛いね」
悲しみだらけの夜こそ君と同じ布団に
ガサガサと入り込んで抱きしめる
「いいだろ?」横で少しくらい涙ながしても
何も言わずにそっと抱きしめて欲しいんだ
何も言わず…
でもほんとうは聞いて欲しくて欲しくてたまらない。愚痴を言って同意してほしい
「あのさ…」と君を見る
でも君は体温が高いからいつの間にか夢の中。
そして僕は君の胸に顔を押し付けて
「幸せだね」と呟いた
もう戻ることのないあの日々を
笑って話せるようになるにはあとどれくらいの夜を越えなければならないのだろうか?
後どれくらい布団の中を出入りすれば
良い思い出になるのだろうか?
空を見上げた
まんまるの月が僕に呟く
「寒いね」
あとがき
恋に溺れる20代の頃 『はちみつサイダー』という2人組のデュオ[リョウケン(G,Vo)、僕(B,Co)]で音楽活動をしていた時、たくさんの曲を書いた。そのひとつが『布団の中』である。
今回その曲の世界観を短編小説にしてみた。
あえて短編にし、その行間の出来事を皆さんの経験してきた恋愛経験や妄想で広げていただきたい。
常に心にキュン🫰を!
P.S. 僕はいまだ恋に溺れるタイプである。