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「日本の伝統文化は地球を救う!」歌舞伎義太夫三味線奏者・野澤松也さん

松竹歌舞伎で三味線方として舞台を務める傍らで、「日本の伝統文化は地球を救う!」をキャッチフレーズに、全国各地で創作浄瑠璃の弾き語りライブを行っている歌舞伎義太夫三味線奏者の野澤松也さんにお話しを伺いました。

■プロフィール
野澤松也(1955年 広島県生れ)
歌舞伎義太夫三味線奏者
重要無形文化財総合指定保持者
1974年 国立劇場第1期文楽研修終了。野澤松之輔の内弟子となる。同年4月、国立劇場文楽公演で初舞台。1979年より歌舞伎の三味線方として現在に至る。「児雷也豪傑譚話」「NINAGAWA十二夜」他を作曲。 2004年「創作浄瑠璃の会」設立。2016年「三味似粋人JAPAN」設立。
松竹歌舞伎で舞台を務める傍ら、ライフワークとして、昔話や民話、土地に伝わる話等を浄瑠璃風にアレンジした作品に作曲し、弾き語りで伝えている。

<創作浄瑠璃作品>
『広島咲希望花カンナ』『友情泣赤鬼物語』『送り拍子木』『降積雪六傘地蔵』『役者演閻魔大王、『送提灯』『天晴桃乃鬼退治』『灯無蕎麦屋』『暴猿子蟹仇討譚』『おいてけ掘』『白狗心繋花咲翁』『暴猿子蟹仇討譚』『落葉なき椎』『片葉の葦』『人間椅子』『人情一文笛』『権狐情栗譚』『足洗ひ屋敷』『七夕巡逢瀬星祭』他

1.「人生は楽しくないとね!

取材当日、開口一番に「人生は楽しくないとね」と語る松也さん。その真意について聞かせていただきました。

松也:最近思うのですが、自分の人生は台本に書かれているんですね。それも面白いことに、自分の前世の人が後の人の人生を書いて、託しているんです。毎日1ページずつ。

それに気付くまで僕は先のことばかりを心配していました。何をしても全て台本通りなわけですから、それが分かると、先のことを心配しなくなりました。

記者:それまでは先のことばかり心配していたんですか?

松也:そうですね。それまでは毎日生きていくのが辛くて、朝、目を開けるたびに「今日も1日頑張って生きなければ」と思っていました。

でもそれが、「人生は台本通り」ということに気付いたので、力が抜けてとても楽になりました。それが人生の転機ですね。

記者:そこから生き方が変わったんですね。

松也:そうです。それも「台本通りだった」ということですね。

2.歌舞伎義太夫三味線奏者になろうと思ったきっかけとは

記者:松也さんが今の仕事を始められたきっかけはなんですか?

松也:僕は、14歳の時に母親に連れられて三味線の稽古に通い始めました。16歳の時にテレビで文楽を見て、義太夫三味線の音に心を奪われて「この奥深い音を出す三味線を弾きたい!」と思いました。

その翌日の朝刊に、東京の国立劇場で「文楽の研修第1期生募集」という記事を見つけました。昨夜見たものが翌朝現実となって現れたのです。その年から広島を離れ東京に出て、国立劇場研修所に通い、研修終了後、野澤松之輔の内弟子となりました。師の亡き後、松竹歌舞伎に入り現在に至ります。

記者:現在「創作浄瑠璃」のライブを精力的に活動されておりますが、どのような想いで始められたのですか?

松也:もともと浄瑠璃(義太夫)は、“文章が難しくわかりにくいもの” “敷居が高いもの”と思われておりました。しかし、これではいけない。日本の伝統文化を身近に触れてもらいたい、という想いで、次世代を担う子ども達にもわかるように、昔話や土地に伝わる民話などに「浄瑠璃の節」をつけて「創作浄瑠璃」を作り、松竹歌舞伎の仕事の傍、ライブ活動を行なっています。

記者:今後も歌舞伎のお仕事とライブ活動を両方されていくのですか?

松也: はい。もちろんです。日本の伝統文化である「歌舞伎(義太夫狂言)」の素晴らしさをもっと多くの人に知って欲しいので、今まで通り歌舞伎の仕事はしっかりと努めさせていただきます。そして、浄瑠璃の魅力を一人でも多くの人にわかりやすく伝えるために、これからもライブ活動は地道に続けていきます。


ちなみに、ヨーロッパにある聖堂でも演奏されたことがあるそうです。
これはその時のお写真。教会内に三味線の音が響いたそうです。


記者:何がそこまで松也さんを突き動かすんですか?

松也:やっぱり三味線の音が好きだから。音が好きなんですよ。だから皆さんに聞いて頂きたいのです。おいしいものを食べたら「あーあの人にも食べさせたい」と思いますよね。それと同じです。

あともう一つは、三味線の音は “1/f フラクタルゆらぎ(エフぶんのいち フラクタルゆらぎ)” と言って、とても細胞に良いのです。それを皆さんに伝えたいです。特に幼稚園や小学校、ケアセンターや老人ホームには行くようにしています。

ケアセンターでは、皆さん車椅子の方も多いですよね。最初はうつむいている方も、だんだん背筋が伸びてきて、顔を上げて、終わる頃には手で拍子を打つようになるんです。そのくらい元気になられます。これはライブだから効果があるのです。

3.「日本の伝統文化は地球を救う」と謳う理由

記者:なぜ「日本の伝統文化は地球を救う」のでしょうか?

松也:日本には古来より、「道」の文化(茶道、華道、香道、歌道、武士道…等)と、「古典芸能」の文化(能、狂言、歌舞伎、舞踊…等)があります。それは「人を敬う心」「人を傷つけない心」「足るを知る」等の「仁・義・礼・智・信」という日本人の伝統的精神(儒教)がベースになっています。その精神を世界に広げて、心の波動で地球を覆うことが「日本の伝統文化は地球を救う」になると考えています。

記者:なるほど。その人間本来の心、日本人の心を本当に伝えられるのが「日本の伝統文化」なんですね。

松也:そうです。だから「日本の伝統文化が地球を救う」のです。

記者:そこに全部が集約されているわけですね。日本の伝統文化が世界、地球を救う意味の深さが今日よく分かりました。本日は貴重なお話しありがとうございました!

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■野澤松也さんに関する情報はこちら

●HP:https://www.matsuyanozawa.com/
●Facebook:https://www.facebook.com/nozawamatsuya/
●Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCC5X6gS6YkvEZZbFwM_6gsQ

■編集後記

今回記者を担当した美談と田中です。
幼少期のお話しからお母様のお話し、ご出身の広島を題材にした創作浄瑠璃『広島咲希望花カンナ』のお話しなど、ここに書ききれないほどの様々なお話しをしてくださいました。お話しを伺いながら、松也さんは三味線奏者であり、職人であり、哲学者でもある、そんないろんな顔を持っている方だと感じました。

この記事を通して、少しでも多くの方に三味線の魅力が伝わり、そして地球上に思いやりの心が溢れる、その一助になれば幸いです。

この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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