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飛車角おにごっこの教え方について

前回の続き。

飛車角鬼ごっこをはじめる前に必要な説明。
1・王の名前/動き 
2・王は特別な駒で、取ったら勝ちになること。
3・飛の名前/動き
4・角の名前/動き
5・自陣と敵陣の範囲
6・敵陣にいったら成ること
7・龍の名前/動き
8・馬の名前/動き
9・相手の駒がいるマスに駒を進めると取れること
10・一手ずつ交互に駒を動かすこと

こうして書いてみるとかなりの量…。
名前と動きの書かれた駒を使うことで、1.3.4.7.8を省略することも可能。
(ただし、情報量の多い駒を使い続けるのはあまりオススメしない。この話はまたべつの機会に)

まずは盤上で玉飛角の動きを教える。おはじきをおいてみるなどもよし。
そして動かす練習。玉と飛車はわかりやすいけれど、角のナナメは難しいので、指で確認をして、行き先を決めてから動かすのがベター。

次に駒の利きに王を置いて、その駒で王を取ってみる。そうすれば勝ちということを体感してもらう。飛車角のどっちで取れるかクイズなども良い。ここで「王手」という言葉を説明する。

さぁ、駒を配置してスタート。「お願いします」の挨拶はしっかり。

まだこの時点では、駒落ちでは上手から、という情報はいらないと思う。じゃんけんで順番決めをしても構わない。はやくやってみたい人はどんどん動かしたくなるもので、やらせたらいいと思う。

最初は21飛成、61玉、同飛の3手で終了くらいが良い。「成る」「相手の駒を取れる」こと「王を取ったら勝ち」が理解できているかの確認。
仮に58飛!と王手してきた場合、ちゃんと王を狙うことを理解しているというわけで、とても素晴らしい。「逃げなきゃ!」と怖がりながら61玉(52玉、同飛で終了もあり)。理解力のある相手ならちょっとだけ逃げてもいい。ただし前回書いた通り、決着を早くつけて次にいくのがコツ。どこかで利きに飛び込むか、王手から逃れていない位置に動きましょう。
いずれの場合も「負けました」をしっかり言う。お手本が大切。

※向かい合って盤を挟むとつい自分の中でも勝負心が芽生えたり、王手に飛び込むのは反則手なので心理的に抵抗があったりしますが、これはルール説明と割り切ってください。

駒の動きと王手を理解できていることを確認してから、もう一度。
上手の心がけとしては、玉は1.2段目から出ずに横移動。ひたすら91のほうに向かって逃げる。


途中で飛車や角の利きを指でなぞったり、鉛筆などの棒状のものを盤の上にかかげたり、おはじきを使って視覚的に見やすくするなどの工夫を入れる。

なお、この時点では玉が動けなくなったら負け(≒詰み)で良いし、詰みという言葉を教えつつも玉が取られるところまで指したほうが理解が早い。
どうぶつしょうぎをやったことがない、他のゲームも慣れていない場合、勝負の概念がよくわかっていないこともある。駒が王から離れていく(適当に動かしたり、自陣にもどってしまったりする)場合は、説明しなおす必要があります。王手になるマスに玉自らすすんで取られましょう。
繰り返しますが、長引くのはよくない。早く終わらせて繰り返すこと。

勝ち方がわかったら、玉の可動範囲を3段目くらいまで広げる。どんどんヒントを言いながら詰みまで持ち込んでもらう。アドバイスは動かした後ではなくて、前に言う。指した手については一手ずつ正しいと認めてあげる。
駒の動き間違い以外はやりなおさせてはいけない。否定されると嫌になってしまう。「良い手」を知るのはもっと後のこと。ルール通りできることが素晴らしい。

理想的な詰み形はこんな感じ。
二段目中央の玉の動ける場所は8。壁にくっついてると5、隅っこだと3。
「鬼ごっこで部屋のすみに追い詰められちゃうと捕まるよね」と説明する。「詰み」のことばの説明として「玉を追い詰めること」と言うと覚えやすい。関連のある言い回しが大切。


龍と馬で協力すると、取られても取り返せる、というのがわかるのが重要。
勝ち方を教えるのが目的なので、できる限り最速で負けてください。

何度か勝たせて慣れてきたら「玉が相手の陣地に入ったら玉側の逃げ切り勝ち」と「飛車か角のどちらか取られてしまって、そのときすぐに玉を取り返すことができなかったら(タダ取り)負け」いうルールを追加する。

記憶力やゲーム感の良さによって理解のスピードはかわるけれど、よっぽど興味がない場合を除いて、4.5局やれば玉飛角+龍馬の動きは覚えるだろう。親子に教える場合は、最初は親が玉、こどもが飛角で行い、決着がついたら交代する。初心者同士ペアの場合も順番に体験するのがよい。玉の逃げ方も覚える必要があるし、どうされたら困るのかが体感的にわかってくる。
よっぽどカンのいい人でないと、玉の可動範囲を狭める「まちぶせ」の手を最初から指すことはできない。というわけで、最初は玉を持った側が逃げ切ることが圧倒的に多い。「うまくなってくると、かならず鬼(飛車角)が捕まえられるんだよ」と伝えてあげる。参加者同士で対局しているときは、基本的に口を出さない。もちろん動きまちがいのときは言うけれど、たった3枚のゲームで2人とも間違いに気づかないことはあまりない。成りを忘れることはよくあるので、1回は教えてあげたほうがいいかな。王手放置や、詰んでないに負けだと思ってしまう(タダ取りがわからない)ケースは、お互いで決着の合意が取れてから、「実はさっき、取る方法があったんですよ」コメントすることにしている。本人が気がつくようになるのが大事だから。

グループレッスンの場合は、対局前に大盤で説明する。私が玉、参加者が1手ずつ交代で飛角を動かす。このときも参加者に考えてもらうようにするので、直接的に答えは言わない。ヒントを出して考えやすくする。
教室でホワイトボードに貼った大盤を使って教えるときは符号の説明がいるのだけれど、(こどもが大盤の上のほうまで手が届かないから)、この前シドニーの学校で床においたら符号の説明なしで教えることができてとても便利だった。

長くなったのでいったんここまで。

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