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9枚落ちの教え方

昨年、「はじめての将棋レッスン」という本を書いた。これはねこまどで行っている「キッズはじめての将棋レッスン」という、まったく0からスタートして本将棋のルールが一通りできるようになるまでのレッスン内容がもとになっている。それに9枚落ちと詰将棋の項目を追加している。

(いきなり宣伝からですみません。良かったら読んでください!)

先日、この本を見た方が「9枚落ちなんてあるんですか?」と。
そして、ハタと気が付いた。私にとっては当たり前の9枚落ちだけれど、10枚落ちの次は8枚落ちにすすむのが(たぶん)一般的…

…と書いたところで気になって検索したら、wikipediaの「将棋の手合割」の頁には九枚落ちも掲載されていた。昔は細かく決まっていたけれど、現代は偶数枚落ちが基本になってしまったということのようだ(しらなかった)。「家元改良」と書いてあるけれど、いつごろ誰が改良したんだろう?
そしてそこに載っている手合のうち、七枚落ちも五枚落ちも良く指すけど、三枚落ちはあまり指した記憶がない。

将棋アイオーに模範的な9枚落ちの実戦譜とコメントを掲載したこともある。こちら2017年2月とあるので、二年以上も前。

9枚落ちは
1、角が成る。
2、飛車が成る。
3、龍と馬を協力させて上手の金をとる。
4、玉を隅に寄せる。
5、詰ます。
という順番で、狙いを実現させていくのが良いです。
早く玉を攻めようとして途中の段階を飛ばしてしまうと、かえって手数がかかってしまったり、なかなか玉を捕まえられなくなります。
着実にポイントをあげていきましょう。

これはとても大事なこと。
初心者が躓きやすいのは「なにをしたら良いのかわからない」こと。
きちんと狙いを持って、ひとつずつそのポイントをクリアしていくのが大切である。これは強くなってからも大切。構想を組み立てて、狙いをもって指し手を進めることに、初心者の頃から慣れておく。考えられないのに形だけ教えるのは良くないと私は思っている。(8枚落ちをクリアするまで平手はあまり教えないことにしている。)

まずは王側の左金がいるバージョン。
最近は下手も飛車角と歩だけの形にしている。9枚落ちで勝つのに他の駒はいらないから。

62玉、76歩、32金
そこで66角と出ると角成が受からない。

実はこの66角という手を指させるのには賛否両論ある。6枚落ちの定跡として有名な手だが「平手で使えないから」ということで教えない人もいる。
これを覚えたせいで平手でも66角としてしまう子は確かによくいる。
でもそんなことを言ったら、6枚落ちで端攻めを覚えた子が平手でも端攻めをするのはどうなのか。2枚落ちの45歩だって平手では使えないけれど、絶対に学ぶべき好手だ。
やってみて失敗して、自力で形の違いに気がつくべきだ、と私は思う。
指し手を教えるときに、狙いを教える。その目的を達成するための最善手は何かと一手ごとに考える癖をつける。(とくに大人は)
一手一手を軽く指しているなかなか伸びない。

もうひとつの9枚落ち。玉側の右金をつけたバージョン。

42玉、76歩、72金、26歩、54歩、25歩、32玉、24歩、同歩、同飛、23歩。
ここで54飛と歩が取れることを教える。
もしくは26飛から36飛で33の地点を狙う。

ここで42玉と守ると飛車がなれない。
そこで66角、82金として、75角と出られれば凄い…けれど、ひとまずは大駒を捨ててこないようにだけ気をつけて、成を狙ってもらう。

この9枚落ちは「スキを見つけて大駒を成る」ことを覚えてもらうのがポイントなのだ。

さて、上手の指し方として、どのようにするのが良いか。
飛角を成った後にうしろから追いかける形にしてしまって、入玉できそうになる場合。
なるべく下に逃げてつかまりやすくするのも手だが、飛車角鬼ごっこをしっかりやってきて、王が上部に進んでくるのを止めるのを知っていれば阻止できるはずである。これから強くしたい相手であれば、甘く端に逃げて勝たせるよりも、しっかりクリアしてもらうほうがその後の上達は早い。
入玉したときに捕まえられなかったら終わり。と金が出来たときに取れなかったら終わり。最初からやり直し。
下手玉がないので、玉を詰まされて「負ける」ことはない。「やり直し」と説明すればさほど辛くない。
なかなか捕まえられない場合はタイムオーバーにして10枚落ちに戻す。

毎日連続でやれば進みは早いけれども、習い事で時間があく場合は忘れているのが当たり前。その都度、前回クリアしたところより前にもどって反復するのが良い。動かしているうちに感覚を思い出す。
「指し手を思い出す」のではなく、「狙いを考える」ようにさせる。

この9枚落ちが両方ともしっかり勝てるようになったら8枚落ちへ。

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