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ムスメのお叱り

娘の高校留学を機に2023年4月、メルボルンに移住しました。高校卒業までの期間限定の海外暮らし、残り442日のあれこれをnoteに綴ります。


カフェのオーダーなんて、余裕ですから

先日のことです。

春休みだった娘と一緒にアパートから離れたカフェに少し遅いランチに行きました。時間は2時を過ぎていたと思います。メルボルンのカフェのほとんどはだいたい3時には閉まるので、のんびりお茶とは行きませんが、私たちは店に入りました。

その店は私のお気に入りで、大きな公園の中にポツンとあります。その日は気温も高く、20度を超えていて、テラス席にはお客さんが8割ほどいました。

店内に入り、私はアーモンドミルクのラテを、娘は左手にあった冷蔵庫の中からソーダ缶をひとつ手にとりレジの前に置きました。右手にサンドイッチやマフィンなどが入ったショーケースがあり、その中にハム&チーズがあったので私はそれをオーダーました。

「Can I get a Ham & Cheese and Amond Latte?」

さすがに1年半メルボルンに暮らしているので、注文は慣れています。店員さんもにっこり笑顔で答えてくれて、ハム&チーズが焼き上がるまでの引き換え番号を渡してくれました。

私の『ハム&チーズ』の発音、どうやら違うらしい

私たちは店の奥にあるテラス席に座りました。

ほどなくして別の店員さんがオーダーしたものを持ってきてくれました。アーモンドミルクのラテ、ソーダ缶、そして、なぜかハム&チーズではないサンドイッチがトレーにのっています。

店員さんに「私がオーダーしたのはハム&チーズですよ」というと、彼はそのまま店内に戻り確認しに行きました。そしてすぐに戻ってきて、「いや違う。あなたがオーダーしたのは、こちらですよ」ときっぱり。ナンのようなパンにチーズとトマト、たくさんのハーブが入ったサンドイッチでした。違う、違う、違うってば……。

うーむ……。私のハム&チーズの発音が聞き取れなかったことでしょうか。納得できず、私はオーダーした店員さん本人に確認をしに行きました。

「あの、私はハム&チーズをオーダーしたんですけど」

「違うわ。あなたがオーダーしたのはこのサンドイッチよ」

私は右手にあるハム&チーズを指さして、「コレを頼みましたよ」と私にしてはやや強い口調で言ってみましたが、店員さんはまったく聞き入れてくれませんでした。

私のテンションは完全にダダ下がりで、もう食欲も失せてしまいました。

30年前にとった英検2級はだいふサビついている

そんな私を見て、娘がポツリと言いました……。

「もっと英語をがんばったほうがいいよ」

店員さんが聞き入れてくれませんし、さらに娘からもダメ出しされてしまい、私のメンタルは完全にやられてしまいました。移住して1年半、ハム&チーズをオーダーできなかった自分が情けないです。

「もっとリスニングをしたほうがいいし、文法もちゃんと頭に入れたほうがいいよ。たぶん、基礎ができていないから、ややこしいことになっちゃうんだと思う」

うーむ……。娘の言うことが的確すきて何も言えません。私が英検2級をとったのは今から30年前の話です。英会話クラスに週2通っているとは言え、基礎が完璧にできているかといえば相当怪しいところがあるのは事実です。

国際色豊かな街は適当な英語で何とか暮らせてしまう

家に帰るバスの中、娘がボソボソと話してくれました。

「私だってさ、英語でつまづくことだってたくさんあるし、先生の言ってることが意味わかんないときだってあるよ。だから、そこまで落ち込むことはないよ。ただ、さっきも言ったけど文法の基礎をちゃんと頭に入れて、文章を組み足られるようになればもっと会話がスムーズになるから。だから、もっとがんばりな」

娘だからこそ言える、愛のあるやや辛口のアドバイス(説教とは言いたくないです)。1年半海外で暮らして、“なんとなく”通じてしまう自分にあぐらをかいていたのが完全にバレた1日でした。

メルボルンはいろんな国の人たちが暮らしていますから、文法が散らかっていても、アクセントがイマイチでも会話が何となく成立してしまうのです。国際色が豊かな街だから、いい意味でも悪い意味でも何とかなってしまいます。

しかし、現地の公立高校に通っている娘は私のような“何とかなる”は通用しません。英語が第一言語の生徒たちと一緒に英語の授業を受け、英語の教科書を読み、エッセイを書き、課題を提出し、テストを受けているのですから。

愛のある娘の辛口アドバイスに耳を傾けようじゃないか

先週、春休みを利用してフィジーに旅をしたときも、私が聞き取れない英語も娘はすんなりわかっていました。空港で英語がまったく話せない中国人の女性が隣に来て、スマホの翻訳機能を使って「スマホの充電がなくなりました。充電器を持っていますか?」と聞かれたとき、娘は、近くの店に行って充電できる場所を聞き、彼女をそのエリアまで案内していました。何気なく話す娘の英語がかなり滑らかで、素直に驚きました。

このままでは私と娘の英語力は差が広がるばかりです。
メルボルンでの暮らしはまだ1年3ヶ月ある、あと1年3ヶ月しかありません……。

今、私には勉強する時間が十分にあります。

ハム&チーズがオーダーできなかったことを認め、娘のアドバイスを素直に受け止めます。

「やれば、できるよ」。

娘は私にそう言ってくれましたから。

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