令和5年3月10日(金)新宿PIT IN『荒武裕一朗トリオ』を聴きに行ってきました
2023年3月10日(金)、新宿PIT IN 昼の部の「荒武裕一朗TRIO」を聴きに行ってきました。
【出演】荒武裕一朗さん(P)、山本裕之さん(B)、今泉総之輔さん(Ds)
【開場】13:30 【開演】 14:00
【music charge】1,430円(税込・1Drink付)
ここ数年、夫の家族・親族の病院付き添いなどで有休を取ることが殆どだったので、この日は久しぶりに自分のために戴いたお休み日。仕事の資料を探しに新宿・紀伊国屋書店の書棚を眺めるべく都内まで足を運びました。
大宮にもデパートの中に入っている三省堂書店やジュンク堂、さいたま新都心まで出ればショッピングモールの中にある紀伊国屋書店もあるのですが、圧倒的に本で埋めつくされた空間で本の気みたいなものを定期的に浴びたくなるんですよね。そんなわけでちょっと遠出を。
…という理由をつけつつ、新澤健一郎さんの『月の光』レコ発シークレットライブの折に思いがけず聴くことの出来た荒武裕一朗さんのピアノを聴きたくて、この日に合わせてお休みを貰った、というのが本当のところです(^-^;)
学生の頃、通っていた大学は小田急線沿線にあったので紀伊国屋書店にはほぼ毎日のように立ち寄っていましたが、当時は学費を稼ぐためにバイトを複数かけもちしていたのでピットインにはなかなか足を運べていなかったんですよね。
当時の住まいは都内の私鉄沿線沿いにあり、駅前の書店でアルバイトをしていたのですが、お店のスタッフの中に以前、新宿紀伊国屋書店に勤めていらした方(30代後半?のいとうせいこうさん似の男性。以下Sさんと表記)がいて、バックヤードで顔を合わせると好きな音楽や本の話をするのがとても楽しみでした。
お店の専務さん(店長弟・高田馬場にある大学卒。新宿によく出没していた模様)とSさんは年齢が近かったこともあり、よく音楽の話をしていました。私がレジ打ち休憩でバックヤードに戻ったある日もジャズの話に花が咲いていたのですが「そう言えば、山下洋輔のアレと、あとタモリのアルバム聴いた?」「いやまだ入手出来てない」みたいな会話が聞こえてきて思わずカットイン。
「タモさんのなら、私、持ってますよー」
「え?!1? 2?」
「両方」
「貸して!」(←ユニゾンで(笑))
その日を境に、山下洋輔さん、坂田明さんのレコード(まだCDじゃありませんでした)あたりから始まり、様々なジャズのレコードがお互いのロッカーの中を行き交うことになりました。
レコードが戻ってくると必ずちいさなメモがついていて、感想や次のオススメはコレ、なんていうのが書いてあったり。運良くバックヤードで話す時間があると、おふたりからピットインで聴いた演奏のお話を聴いたりして楽しかったな。あの頃からココはずっと憧れの場所でした。
で、家族のこととか仕事のこととか、まあいろんな荒波がほんの少し落ち着いてこうして立ち寄ることが出来たのがうれしくて。お店の前であちこち眺めてしまいました。
店舗前の椅子には明らかに先輩世代の男性がおふたり。
『未来少年コナン』のおじい(残され島でコナンを育てていた科学者のひとりのおじいさん)によく似た方の方(以下、尊敬を込めておじい)が眼光鋭く私に視線を投げかけてきます。
(お。ひよっこが来たな。)
そんな心の声が聞こえます。
ですよねぇ…うれしくてあちこちキョロキョロ眺めてれば初心者マークつけてるようなもんです(^-^;)
「イス、そこにあるから。出せば?」
やさしい声で話しかけてくれました。
「あ。大丈夫です。ありがとうございます」と言った矢先、私と同年代&そして明らかに大先輩の年代の女性が階段を降りてきて。
お二人を立たせておくわけにもいかず「イス、出しましょうかねぇ」と並べると、おじいはニコっと笑顔を向けてくれました。
フュージョンもジャズも中途半端にしか聴いてこなかった私は、聴き手のベテランさんたちが集うであろう昼ピという状況に、実は少し緊張していました。でもおじいが話しかけてくださったおかげですっかりリラックス。
客席でも感じたのですが、常連のお客さまみなさんとてもあたたかくて。居心地よかったです(^-^)
ほどなくして開場となり店内へ。
1ドリンク付で1430円(税込)のミュージックチャージを払って席へ。席は学校式の並びになっていますが、長いテーブルが固定されている状態ではなく、2人がけの小ぶりなテーブルが横に2つずつ並べてひとつの塊になっているので圧迫感はありません。ステージ向かって右にはひとりがけの席もありました。
演奏なさる皆さんの手元も拝見したかったのですが、そちらはライブ配信のアーカイブがあれば後で確認しようと思っていたので、中央の川の真ん中あたりに着席。
(※ピットインの配信サービスについては後述)
先ほど話しかけてくれたおじいたちはピアノ側の前から二列目に。荒武さんのファンでいらっしゃるのかな?おふたりでずっと楽しそうにお話されていました。
ドリンクはライブの時定番のジンジャーエールを↓
昼の部でももちろんアルコールもいただけるのですが、帰りの電車で寝てしまいそうだったのでソフトドリンクに。
この日はとてもあたたかな日だったので喉が渇いていました。ジンジャーエールを飲んで渇きが癒えた頃、メンバーのみなさんが左手から登場。ドラムの今泉総之輔さん、ウッドベースの山本裕之さん、ピアノの荒武裕一朗さんの順に入場。
1部は、コールポーター、キースジャレットなどのスタンダードナンバー中心の演奏でした。
今泉さんのドラムは刻みがとても心地よくて。昼間、地下でジャズを聴くというのはなかなかに非日常なわけですが、ヨレたりブレたりしない抑制のきいた刻みに安心して身をまかせることが出来ました。
心地よいリズムに呼吸を合わせていると、いつのまにかすーっとスムースに異空間へと移行できジャズの世界へ没入。
色や濃淡をあまりつけ過ぎない抑えめな刻みの中にも煌めきやアクセントが散りばめられていて、きっと他ジャンルの演奏の時にはもっと色つきの演奏もなさるんだろうなぁ、と感じ、帰宅後今泉さんのサイトを確認。YouTubeを拝見するとcosmicだったりエレクトリックだったりなサウンドも。ポップスの方のサポートも多数。
2013年には本田珠也さんとのDuoライブも行っていらっしゃいます。
山本裕之さんのウッドベースの音はあたたかみのある穏やかな深い音でした。
このところ、エレキベースを聴くことの方が圧倒的に多かったので、久しぶりのウッドベースの生音がとてもうれしい。
弦が響き終わった後に残る余韻も心地よく、豊かな響きの帯に、脳裏に浮かんでくる過去の気持ちや情景をそっと乗せて音の世界を揺蕩う感じがとても心地よかったです。
サイトで山本さんのプロフィールを拝見したところ、お父さまが調律師だったこともあり、ベースか調律かと悩まれた時にご自身にしっくりきたベースを選択されたとのこと。
山中千尋さんのトリオでは『あさイチ』などのテレビ番組にもご出演になられています。
そして荒武裕一朗さん!
荒武さんは、ピアニストとしてだけではなく経営者としてもご活躍中。
ブログの内容を中心に綴られているこの本は、通勤バックの中にいつも入れて何度も読み返しています↓
たくさんの「大切」を載せた大きな背中を少し丸めて、指先から生まれ来る音を慈しむかのようにピアノを弾いてらっしゃるお姿がとても印象的でした。
荒武さんの指が鍵盤におりるたび、精緻で美しい音が豊かに溢れてきます。
特に、休憩を挟んだ2部で演奏してくださった本田竹広さんの曲が美しくて、配信アーカイブでも何度もおかわりして拝見しています。
ピットインの配信システムは、コンテンツ配信(都度課金)のほか、月額見放題コースがあります。
定額の月額 ¥1,100(税込)で、昼の部・夜の部のセカンドステージの生配信が会員月間(月初めの1日から月末日まで)視聴できるんですよ!
ミュージックチャージのリーズナブルさにも驚きましたが、この配信サービスの太っ腹さにはさらにビックリ。もちろん月額会員になったのはいうまでもありません。
セカンドステージのみではありますが、行きたくても行けないライブの音が聴けるのは本当にありがたいことです。
☆PIT INNライブ配信サービス
https://streaming.pit-inn.com/
時間や場所に縛られずジャズが楽しめる配信サービス、お店ならではの生音&セットリスト。この両方をうまく組み合わせたら、これまで諦めていたライブも楽しめそうでワクワク。
荒武さんのトリオ演奏を何度もおかわりしたり、聴きに行けなかった珠也さんがドラムで参加なさった松井宏樹さんのトリオを聴いたり、と早速ヘビーに利用中。
演奏が終わり、地下から地上に出ると外はまだ明るく、大勢の人の波・また波。
日常へと戻らなきゃならない寂しさを感じつつ、心の中に抱えた美しい音の記憶と演奏を聴いていただいた日々動くためのエネルギーをたくさん感じていました。
メンバーみなさんそれぞれのスケジュールを眺めながら、次にどんな音に出会えるのかワクワクしています。
あー、楽しかった!
素晴らしい演奏をありがとうございました。
☆荒武裕一朗さん
http://aratake.oops.jp/
☆山本裕之さん
http://hiroyukiyamamoto.com/
☆今泉総之輔さん
http://www.imaizumisohnosuke.com/
☆新宿ピットイン
http://pit-inn.com/
☆OWL WING RECORD
(荒武さん設立の会社のサイト)https://owlwingrecord.net/
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