ずっと好きだったけど、もうそんなんじゃない

雨が降ったり止んだりの3連休になりそうだけど、ここ数日、昔の男を思い出したりする。

圭吾とは考えてみたら16年以上の付き合いがある。
出会った時はお互い20代だったけど、今やすっかり子持ちのジジババになってしまった(笑)。

彼とは因縁浅からぬ関係で、本当にこれが「因縁浅からぬ」ってことなんだなと思うほど、そう。
切っても切れない関係ってあるのかな?と思っていたけれど、私と圭吾がそうかもしれない。
例えるならトムとジェリーみたいなものかしらね。
あんなに可愛くないか。

別れては復縁してを繰り返した私達の若い恋は7年ほど続いた。
別れを切り出したのは私だけど、圭吾の気持ちは既に他の人へ移っていた。
別れをうまく切り出せないのは彼の性格なのか男の性なのか。

別れても、年に一度は必ず圭吾から他愛ない連絡が来ていた。
先に結婚したのは彼で、入籍前日に「俺、明日結婚するんだ」とわざわざ電話があった。
それは、長年付き合った姉のような私に対する礼儀というより、純粋に結婚が嬉しかったんだと思う(笑)。その数年後、私も結婚したけれど、圭吾との関係はいまだに続いてる。
2人が独身であれ恋人持ちであれ既婚者であれ子持ちであれ、私達は離れることがない。
離れられない、というか。
もちろん、その関係に艶めいた大人の関係はまったくない。


ただ、純粋に友達というわけでもない。


私と圭吾には、それぞれのパートナーより長い歴史がある。
しかもわりと深い関係性だ。
圭吾の妻が知らない彼を私はよく知っているし、夫が知り得ない私の過去を圭吾は知っている。
ある意味、共犯めいた関係かもしれない。

私と圭吾の関係が切れないのは、昔の恋人という肩書だけではない。
お互いに(特に圭吾が)何度かの転職を繰り返した結果、まさかの仕事関係者になったというわけ…!
そういうこともあり、別れてからしばらくは年1の近況報告が、最近は月1.2になっている。

たまに考える。
お互いに80代になり、身体がいうことを聞かなくなった年になっても私達は繋がっているだろうか?と。
その時になっても、2人きりの時は「圭吾」「美聡」と呼び合うのかしら?
私達は過去の関係を公にしなくて良いよね、という暗黙の了解のもと、2人きりの時以外は苗字で呼び合っています。
またそれがね、軽く背徳めいた気持ちにさせるよね(笑)。
たぶんそれは圭吾も同じでしょう。

これだけ切れない関係も私の中では珍しく、そして、ここまで秘密にする人は彼だけ。
私はたぶん、わりとオープンな性格な方だけど、圭吾とのことはなぜか誰にも話せない。
それだけ奥深いのか、それとも罪深いのか。

切っても切れない関係の私と圭吾なのに、結局、人生の伴侶としては結ばれなかった。
それは、あまりにも2人が似ているからだろうと推測する。
感情の波、人の好き嫌い、親から受けた癒えない心の傷、空洞のような寂しさ。
私達は生きる癖や抱えた傷がとても似ていて、だからこそお互いのことがわかりすぎるぐらいわかってしまう。まるで自分のことのように言葉にしない、できない心の機微がわかってしまう。


それが苦しかった。
一緒にいると、いつまでもその深淵の闇から逃れられないというか。


結果、私は圭吾とは真逆のタイプと結婚した。
それで良いのか悪いのかまだわからないけど、少なくとも圭吾と結婚しても幸せに笑う毎日は想像できなかったからね。
一方で、圭吾は自分とよく似た(つまり私に似た)女性を妻にした。
外見がね、私に似てるのよ。
私のほうが美人だけどな(笑)。
そして、そんな圭吾夫婦は結婚10年目を目前にして破綻しつつある。

圭吾の悪い癖が出たんだろうな、と思いつつ深入りはしない。
私には夫と息子たちがいるし、それを守ることが最重要だから。
でも、幼子を抱えて離婚することになったら圭吾はどうするんだろうなあ、とは思ったりする。
いざという時は助けてあげないとな、とも考えてる。
彼が私に助けを求めるなんてめったにないけれど。

薄情なようだけど私は圭吾の人生の面倒を見ることはできない。
彼から結婚の報告を受けた時、「この人の世話をしてくれる人が現れたのね!」と心底喜んだほどなので。
だけど、心配になったりはするんだよね。
まあ、彼と10年近くを共にした奥さんができなかったことを、私ができるとは思わないけどさ。

実は、今度、圭吾がうちの近くに引っ越すらしいのよ…!
もう戦々恐々よ!
うちを知られたくないわ(笑)。
知ったところで来るような人じゃないけど、圭吾とは家族ぐるみの関係というのは避けたい、絶対に。
だってお互いのパートナーに私達の昔がバレそうだから…。
バレるもんなのよ、こういうものって。

だからお願い!
こっちに来ないで(笑)。

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